第13話 アリシア、ゴブリン巣穴コロリを創る?
「近くの『チェンク山』の麓に新しい洞窟が発見されたのよ」
新しい洞窟。
ゴブリンたちが新たに掘ったのか、たまたまこれまで発見されていなかったのかはわからないけれど、村の近くの山の洞窟に住み着かれてしまった、と。
「数は50ほど。ホブゴブリンも複数確認されたわ」
「けっこう多いですね。ちなみにソフィーさんたちは何人のパーティーで対応をしたんですか?」
「6人のパーティーが3つね。『デロン村』の防衛が1パーティー。残りの2パーティーで討伐を行う手筈で進んだわ」
「なるほどー。ソフィーさんはどっち側に?」
「私たちのパーティーは討伐側ね。物理攻撃系スキル持ちが私を含めて6人。魔法攻撃系スキル持ちが4人。支援系スキル持ちが2人、それを2パーティーに分けた形ね。それぞれのパーティーは、物理3人、魔法2人、支援1人の構成よ」
そこそこオーソドックスな構成ですね。
盾の人がいなさそうなのが気にはなるけれど、ゴブリン相手ならさっさと攻撃したほうが良いってことなのかな。
「ゴブリンたちの住処になっている洞窟は単純な構造だと聞いていたから、私たちの取った作戦は、明け方ゴブリンたちが巣穴に帰った後、麻痺毒の煙を洞窟内に充満させる、というものだったわ」
戦わずして勝てるならそのほうが良い。
気づかれずに作戦が実行できるなら、効果は大きそう。
「予定通り決行して、最初は順調に進んだのよ。何体かのゴブリンが煙にも苦しみながら洞窟を飛び出してきてそれを討伐したり」
「何体か飛び出してきて? んん? そいつらには麻痺が効かなかったんですか?」
「用意していた麻痺毒は即効性がなくて、じわじわ効くものだったから、入り口近くにいたゴブリンにはあまり効いていなかったみたいなのよね」
うーん?
なぜ即効性がないものを選んでしまったのかな……。
わたしだったら、嗅いだ瞬間に即死する煙を調合するけど。細胞膜が破壊される煙もいいかな。
「即効性のある麻痺毒は値段が、ね……」
よし、『ゴブリン巣穴コロリ』を創作して安価で販売しましょう。
入口に撒いておけば3秒で一網打尽ってね♪ なお、誤って人が煙を嗅いでしまった場合、3秒以内に「アリシアちゃん大好き」と唱えれば細胞膜の破壊が止まりますので、ただちに人体への影響はございません、と。
『もちろんダメですよ』
ソウデスヨネ。モチロンハンブンダケジョウダンダヨ。
……護身用に試作だけね♪
「翌朝、十分に煙が抜けたことを確認してから、私たちは洞窟内に突入したの」
うーん、果たして全滅しているかな。
「私たちは、自分たちの作戦が失敗したをすぐに思い知らされたわ」
「そ、それは……」
「先頭の2人が一瞬でやられたのよ」
おう……。
「そこからは一斉退却で……」
やってしまいましたね……。
「洞窟から脱出した時には、12人いたメンバーも4人になっていたわ」
「それはかなり厳しい……」
完全に作戦失敗だ!
そんな状況で……ソフィーさん、よく生きてましたね……。
「『デロン村』で防衛待機中のパーティーに応援要請をしに、1人を走らせて」
「残りメンバーの構成は?」
「私ともう1人がバスターソードを持ったアタッカー。もう1人が回復魔法を得意とするプリーストだったわ」
「応援要請に走ったのはー?」
「それも近接職の人よ。一番足が速そうだったから」
攻撃系の魔法職は全滅ってことかー。
退却の時には敏捷性がものをいうだろうし、ギリギリの状況で生き延びるには、そういう訓練も必要なんだろうね……。
パーティー崩壊の危機の時、守るべきは体力の低めな支援職、そして魔法職、か。
「幸いにもプリーストの子が結界魔法を使えたから、洞窟を入り口を結界でふさいでゴブリンの攻撃を防ぎつつ、自分たちの身を守ったわ」
「苦しい防衛戦ですね……」
「ええ、そうね。時間とともに疲弊していくプリーストの子。MPが尽きかけても、『デロン村』からの応援が来ることはなかったわ」
「何かあったんでしょうか……」
まさか村のほうにゴブリンの別動隊がいっていて、すでに全滅していたとか……。それとも途中で別動隊のゴブリンと遭遇したとか?
「真相は彼に聞かないとわからないわ。ただおそらく……逃げたんでしょうね」
ああ。
ソフィーさんたちを見捨てて自分だけ、か。なんてことだ……。
「このままではいよいよプリーストの子のMPが尽きてしまう。もうそれが間近に迫っていた私たちは決断を迫られた」
決断。
残されているのは、なりふり構わず逃げる、くらいか。
「もう1人のアタッカーの彼が予備として残していた麻痺毒の煙玉をありったけ洞窟に投げ入れて、私たちは死に物狂いで逃げたわ」
予備の準備は大切ですね。
効果はあまりなくても、撤退する時間稼ぎくらいにはなってほしい……。
「『デロン村』までたどり着ければ仲間がいる。そう信じてね」
なんという立派なフラグを立てて!
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