第11話 アリシア、ソフィーさんの昔話に興奮する

「私が冒険者になりたての頃の話をしましょうか。近衛騎士団をやめて、すぐのことよ。まだ固定のパーティーを組んでいなかった頃のことなんだけど」


 ソフィーさんが記憶をたどるようにポツポツと昔話を始めた。


「近衛騎士団時代に磨いていた『剣技』のスキルが認められて、魔力量は少ないけれどBランク冒険者に認定されたのよね」


「おお、エブリンさんパターンだ」


「エブリン? ああ、あのエルフのお方ね。 私なんてあの方とは比べ物にならないわよ。私のは『剣技』であの方のは『剣聖』だもの」


「やっぱり『剣聖』スキルってすごいんですか?」


 なんならわたしのレーザー攻撃よりも速く反応していることもあったし、近距離も遠距離も関係なく、複数の魔物を一瞬で細切れにしてたね。かなーり強いスキルっぽく思えるけれど、レア度はBだから、実際そこまででもないのかな?

 普通のほうって言ったら失礼かもしれないけれど、『剣技』スキルのほうがどんな風に使用されるのか、まだまともに見たことがないから、比較しようがないのよね。


「私が知る限り、初代国王のカイランド=パストルラン以来のスキル発現だと聞いているわよ」


「えー、実はめっちゃレアスキルっぽい! それなのにレア度B⁉」


 ミィちゃんによると、カイランド=パストルランも転生者だって話だけど、『剣聖』スキルを持っていたのね。ほかにもレア度Sのスキル持ちだったって話よね。チート過ぎない?


「『剣聖』は剣術のスキルの最高位とされているけれど、強い以上のことはなくて、特殊な事象を引き起こすようなスキルではないのでレア度Bと分類されているらしいのよね」


 純粋な発現の確率的に言えばレア度S並み。だけど、「剣の扱いがすっごくうまい!」以上のスキルではないからB、か。『剣技』がレア度Cなのに比べると、ちょっと評価が辛い気もするけれど……。


「まあ、分類したのも人ですからね……」

 

「そうね。レア度は目安に過ぎないし、レア度が高いスキルを持っているから優遇されるという話は聞いたことがないわね」


 でもレア度AやSとなると、人には言えないいろいろなことがあるんですよ……。特殊過ぎるスキルだったりすると余計にね……。わたし、『創作』や『構造把握』のことがバレたら命を狙われちゃうらしいですから。


 って、脱線してスキルのことばっかりになっちゃってる。


「それで、Bランク冒険者として認められてどんな冒険をしたんですか?」


 と、強引に流れを戻してみよう。


「そうだったわ。冒険者になりたての頃は、みんな依頼ごとに野良のパーティーを組んで、だんだんとメンバーが固定化していくのが通常の流れなの」


「最初から仲良しパーティー、みたいなのはあまりないんですね」


「なくはないけれど、依頼を受ける関係で、どうしてもランクが近い冒険者で固まりだすし、パーティー内のスキル構成も大切になってくるから、実力主義になっていくのが一般的ね」


「へぇー。ソフィーさんは前衛ですよね。そうなると、魔法使いや後方支援系の人を集める感じだったんですか?」


 酒場で声をかけられるのを待つか、自分から声をかけて回るか。

 いよいよ冒険者っぽくなってきましたよ!


「自分たちで集めるというより、その辺りはギルド側で斡旋してくれるのを待つイメージかしらね。『Bランク・剣技持ちの前衛』として登録しておくと、ほかのメンバーの情報も含めていくつかの仕事をピックアップしてくれるのよ」


 ええ……。

 ギルド有能すぎる。

 酒場でひと悶着あって、飲んで暴れてケンカして、次の日の朝「昨日は悪かったな……虫の居所が悪くてつい」「おう、気にすんな。今日から仲間だ。よろしくな」って感じの展開は?

 なんでギルドは、マッチングサービスみたいにスマートな感じで人材とお仕事紹介しちゃってるのよ……。


「アリシアはなんでそんなに不満そうな顔をしているのかしら?」


「ギルドががんばりすぎてて、わたしの知っている冒険の始まりと違ったんで困惑してただけです!」


 新人はもっと苦労して育つべき! まずは見て覚える! 先輩の所作を盗むんだよー!

 そんなぬくぬくと冒険者になったヤツは、冒険を舐めてかかって、ゴブリンに襲われて大変なことになるんでしょう? そして先輩冒険者がさっそうと現れて「ゴブリンか?」「ゴブリンどもは皆殺しだ」ってね。


「蛮族の討伐依頼を受けた時の話をしましょうか」


「蛮族! やったー! ゴブリンスレイヤーさんのお出ましだー!」


「ゴブリンスレイヤーさん?」


「いえ、こっちの話で……でも蛮族って言うと、やっぱりゴブリンですよね?」


「そうね。その時の討伐の依頼は、『ゴブリン集団による村への被害を食い止める』というものだったわ」


 おお。きましたよ、きましたよ。

 これは高難易度クエストになりそうな予感!


「いいですねー。ゴブリンだからって舐めてかかって、実は上位種がいたりしてパーティー壊滅、みたいな流れなんでしょ⁉」


「興奮しないの。ちゃんと順を追って話すから」


 ソフィーさんが苦笑する。

 でもでも、ゴブリンが群れを成している時の統率力といったら、それはもう人族と同等かそれ以上の力を発揮することもありますからね!


 って、ラノベに書いてあった!

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