第17話 アリシア、冒険譚を始める?

「エデン、どうしよっか。頂上の雪景色、見てから帰る?」


 翌朝、ピクシーたちにお礼を言ってわたしたちはお店に帰ることにした。

 その前に雪女さんの居住跡地を見ていくかどうかだけど……。


「いえ、大丈夫。みんなも待ってるだろうし、早くお店に帰ろう」


 リンレー様の子守歌で寝落ちしたエデンだったけれど、今朝はどこか顔つきが変わって見えた。これまでのどこか不安そうな、陰にこもるような様子が消えているように感じられた。


「そう? じゃあこのまま下山ってことでいいかな。みなさんもそれで大丈夫ですか?」


 一応、エブリンさんたち≪銀の風≫と、ソフィーさんたち『龍神の館』ご一行それぞれに確認をする。

 

 よし、特に異論はなし、と。


「ロチェリスマイン、ピクシーのみなさん、この度はお騒がせしてごめんなさい」


 ほら、ソフィーさんも改めて謝って。


「友好的に歓迎してくれたのに、大切な祭壇を汚すような真似をしてしまい、大変申し訳ございませんでした」


 ソフィーさんたちも深々と頭を下げた。


「我らも一方的に拘束したり生贄に捧げようとしてしまってすまなかった……。リンレー様が顕現なされたのはアリシアのおかげで……なんとお礼を言ってよいやら……」


「なにその他人行儀な感じー。ロチェリスマインかっこつけててウケるんですけどー。『ふええええん。我ボッチだよぉぉぉ』って泣いてた人とは思えないぉ?」


 一族を代表した時の形式ばったしゃべり方されると正直笑うしかないね。素がかわいいのにギャップありすぎー。


「こら、それは内緒! 下の者に示しがつかないでしょ!」


「えー、どうしよっかなー。内緒にしてほしいの?」


「内緒にしてほしい! お願いお願い!」


 必死過ぎる。1人だけハイピクシーでがんばるって大変なのね。


「まーいいけどさー。じゃあ2個約束して!」


「我にできることなら?」


 ロチェリスマインが不安そうな表情で見てくる。


「1つは正当な理由があったとしても、他の種族にいきなり攻撃を仕掛けないこと。そういうのはちゃんとリンレー様に相談してからにして」


 リンレー様の評判にもかかわるし、キミたちが闇妖精なんて呼ばれている汚名も返上していかないといけないからね。


「わかった。必ず守る」


「よし! もう1つは、落ち着いたらでいいから、みんなで『龍神の館』に遊びに来て。地図を書いて残しておくから」


「えっ、我らはこの地を離れたことがなくて……」


「ちょっとくらいは外の世界を経験しよう? 友だちのわたしがいろいろ案内してあげるからさ」


「友だち?」


「そう、友だち。分かり合えたんだから、わたしたち友だちよね?」


 お互いの正義をぶつけあった。

 でも争う必要のない誤解だってわかった。

 同じリンレー様という女神様の信徒にもなって、一緒に祝福も受けた。


 それってもう、友だちだよね。


「アリシアと友だち……」


「ボクたちも友だちだよ」


 エデンが言う。


「そうですね。私も友だちだと思っています。同じ妖精族ですし」


 エブリンさんが握手を求める。それに合わせて≪銀の風≫のメンバーも同調する。


「私たちのことも許してもらえるなら友だちにしてちょうだい」


 ソフィーさんも手を伸ばしている。


「我らにこんなにたくさんの友だちが……」


『あーしの信徒たちが呼んでいるぉ』


 リンレー様の声がわたしの脳内に響く。と、同時に頭上に空間のゆがみが発生し、リンレー様が姿を現された。


「リンちゃんおはようございまーす」


「うむ。アリシアたんは元気に挨拶ができてえらいぉ。ほかの信徒たちも元気かぉ?」


「リンレー様だ!」


 ピクシーたちが口々に騒ぎ出し、全員がその場にひれ伏した。


「みんなかたいぉ。あーしがハローって言ったら、元気よくハローって返すぉ?」


「ハロー!」


「アリシアたん、まだ早いぉ! あーしが言ってからにするぉ!」


「へへ」


「みんなハローだぉ!」


「「「ハローだぉ!」」」


 ピクシーたちを始め、みんなが元気よく挨拶を返す。なんかとっても気持ちが良い朝だね。


「よくできましたぉ。今日も良い日になりますように。ブレッシングだぉ」


 女神の祝福が降り注ぐ。

 心がポカポカしてくるね♪


「リンちゃん、ブレッシングまでありがとう! わたしたちはそろそろ下山します。お店待ってるからねー。ロチェリスマインも、必ず来てね!」


「アリシア、友だちになってくれてありがとう! 我、絶対遊びに行くよ~!」


 ロチェリスマインとピクシーたちが見送る中、わたしたちはセーフポイントに向かって歩き出した。

 まずはウィンドーさんに経緯報告をしてから、みんなでガーランドに帰りましょう。ギルドにも救援成功の報告をして、≪銀の風≫のみなさんに成功報酬をお支払いして、と、やることがたくさんだね。


 せっかくだから強力な魔物とたくさん戦ってレベル上げもしたかったけど、それはまたの機会にしようかな。ライトサーベルがあれば、戦闘スキルがないわたしでもけっこう戦えることがわかったし♪


 アリシア=グリーンの冒険譚を始めちゃったりする?


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第五章 アリシアと銀の風~ソフィースカウト団救出 編 ~完~



第六章 アリシアと北の大地~北部・孤児院訪問 編 へ続く


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ここまでお読みいただきありがとうございました。


もし良ければ、♡や感想コメントをいただけると大変励みになります。

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それでは引き続き、第六章も読んでいただければうれしいです。


五章でもちょっとだけガーランド領を離れましたが、六章ではまた遠くへ出かけていくことになりそうです。

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