第5話 アリシア、鳥人族の性の事情を知る
「ウィンドー様。こちらにお願いします。みんなおまたせ~」
エブリンさんとエミリーさんが戻ってきた。
後ろに誰か連れているみたい。守り人さんかな?
「ミレンテ山脈で守り人をされている、ショー=ウィンドーさんです」
エブリンさんが紹介してくれる。
「どうも、ウィンドーです。ミレンテ山脈に派遣されて2カ月の新人ですがよろしくお願いします」
ウィンドーさんがぺこりと頭を下げた。
お、おお。鳥……。鳥人族だ。お尻に羽生えてる……。
鳥人族は顔の中心部こそ人間に似ているけれど、ほっぺたから頭までは鳥の羽根で覆われている。だけど手は人と同じ5本指で武器も握れる。足は3本指でものすごく鳥っぽい足だけど二足歩行……ダチョウ? あとは鮮やかなオレンジ色の大きな翼が腰のあたりから生えているのが特徴的。めっちゃきれい!
「ウィンドーさん! よろしくお願いします! わたし、アリシア=グリーンです! 行方不明になった仲間を探しに来ました!」
「アリシアさん、この度は大変なことで……。はい、私のところにも依頼の内容は届いています。しかし、この山は……その、まだ未開の場所も多く……」
ウィンドーさんが翼を擦り合わせながら、申し訳なさそうに言う。
「ええ、そう聞いています。でも、強い冒険者の方たちに同行してもらっているので、自力で捜索したいと思っています」
「それはすばらしいことです。私はこのセーフポイントの機器管理しかできず、戦闘力も大してないため、申し訳ないのですが力になれないので……」
うん。見たから知ってる。
まあ、新人さんって自分でも言ってたし、冒険者のレベルも42だし、ここで活躍するのは無理よね。だけど、そんなレベルでもこんな高レベルの魔物がうようよいるセーフポイントの機器管理、というのはできるのね。
「ここのセーフポイントは魔道具か何かで維持してるんですか?」
「はい。レベル80程度までの魔物であれば、特定のリズムで魔力波を流すと、怖がって近づかないという習性があるのです」
「へぇー! そんなことが! ちょっと興味があります。魔道具を見せてほしいです!」
「国の管理物なので……」
「わたし、Aランクの冒険者なんですけど!」
左手の中指を突き立てて金の指輪――Aランク冒険者の証を見せつける。
どう? Aランク様ですわよ⁉ さっさと魔力波の魔道具とやらを見せなさいな!
「すみません、国の管理物なので……」
「Aランクでもダメなの⁉……この指輪つかえねー!」
誰でもなんでも言うことを聞く万能の指輪じゃなかったのか!
だまされたわー!
いいもん。勝手にその辺を流れてる魔力波を解析しちゃうもん。
ほー、ヘイト管理の逆応用って感じかー。なるほど、こういう仕組みなんだー。ん、でもこの魔力って誰のだろ。
「ウィンドーさんは、魔道具技師なんですか?」
お、ズッキーさんが年長者っぽく会話をリードし始めたぞ?
わたし、ちょっと魔力波の解析に忙しいから、あとよろしくね。
「ええ、そうなんです。冒険者としてのスキルには恵まれていないもので……」
鳥人族で飛べるなら諜報活動とか、物資運搬とかいろいろ活躍の場はありそうなのに。
「でも飛べるってうらやましいですわ。わたくし、鳥人族の方とは初めてお会いしましたの。少し翼を触ってもよろしいかしら?」
エミリーさん興味津々。
「どうぞどうぞ。羽根は鋭くて切れるので気をつけてくださいね」
ほほー。羽根を飛ばして攻撃したりするのかな。頭上から鋭い羽根がたくさん飛んできたらけっこう有効な攻撃になりそう。
「きれいですわ~」
ウィンドーさんの翼に顔を近づけ、うっとりとした目で眺めている。もしかして鳥フェチなのかな……。
「あっ♡」
エミリーさんが背中のあたりの羽根を触った時のこと。ありえないくらいの大声で……ウィンドーさんが、その色っぽい声を出した?
「ごめんなさい! 痛かったですか⁉」
「い、いえ。ちょっと、その、そこを触られると弱くって……」
ウィンドーさんは顔を赤くしてモジモジしていた。
弱い、とは? ああ、弱点部位ね。しかも性的な……。うーん、鳥人族の性の事情は知りたくなかった……。
「あー、えっと、立ち話もなんですから、作戦会議がてら夕食にしません? ウィンドーさんが持っている情報も教えてほしいです」
気まずい話題を変えたい……。
「そうね、私ったらうっかりしておりました。ウィンドーさんもご一緒にどうぞ」
エブリンさんが客車へとウィンドーさんを案内する。
夕食の準備はばっちりですよー。
だからー。ハインライトさん、そんな目で見てこないで! お酒が許可されるかはウィンドーさんの情報次第! すぐに捜索に出ないといけないかまだわからないでしょ!
「こ、こんな豪華なお食事が!」
ウィンドーさんが驚きの声を上げた。
まあねー♪『龍神の館』のお料理は、今やガーランドで大人気ですからね! 見た目だけじゃなくて味も最高よ? って、鳥肉! TOMOGUI!
「ご、ごめんなさい。そのわたしのお店って鳥料理を売りにしてまして……」
もしかして、めっちゃ怒るかな? 同族を殺された恨みーとかで、暴れられたら……最悪、殺るしかない……。
「え、あ~! 私、鳥肉大好きですよ!」
うっそ。TOMOGUI大好きっこ!
「そ、それなら良かったです……。当店自慢の鳥料理フルコースをぜひご賞味ください。あ、みなさんもね!」
「肉! 肉!」と合唱しながら、宴が始まった。エブリンさんも意外と積極的にそのノリについていく人なんですね。「あらあら」とか言って遠巻きに見ていそうなイメージなのに……ギャップで萌え死にそうです☆
「ところで、さっそく本題に入っちゃうのですけど……お酒飲めるかめっちゃ気にしている人もいるので!」
と、ずっとわたしのことを見つめ続けているハインライトさんににらみを利かせる。いいからとりあえずコーラでも飲んでて!
「わたしのお店の仲間たちが、生贄の儀式とやらに捧げられそうになっているらしいんですけど、何か心当たりはありませんか?」
この山にそんなことをする恐ろし気な種族が住んでいる情報とか!
「それはおそらく……妖精族でしょうね」
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