第3話 アリシア、ライトサーベルを振り回す

「さすがに明け方だから、人通りも少なくて助かる!」


 わたしの馬車は安定して時速100kmで走行中ですよー。

 このまままっすぐ300kmくらい街道を進んでいきましょう。たしかサイケ村ってところの手前辺りを支道に入っていけばいいのよね。


「おっと、向こうから馬車が。スピードダウン、と」


 ちょっと速い馬くらいの雰囲気を出しつつ、「おはようございます。良い天気ですね」と。

 ん、向こうの馬車のおじさん、なんか変な顔してたな。ハイスペックな馬車風ソリだってこと、バレてないよね?

 追ってくる気配とかないし、まあいいか。

 よし、再びスピードアップ!


 さてさて、オートクルーズコントロール・自動応答モードに切り替えてーと。

 ちゃんと白線を見て走ってね。対向車が来たら自動的にスピードダウンしてから私にも知らせて。


『かしこまりました』


 良い子ね♪

 じゃ、わたしも客車でちょっと休みましょー。


「いえーい! みなさん楽しんでますかー?」


 御者席から離れて、客車へと移る。


 ちょっとテンションを上げて乱入、と。

 あれ? パーティー感がない……。


「もう食えない……」


 ああ……お腹いっぱいになってみんな寝てるのね。

 ズッキーさんはなんとなくそういう人だって思ってたけど、他の3人まで。緩んでますなぁ。みんな冒険の最中だってこと忘れてないですかね?


 うーん。

 エブリンさんもエミリーさんも寝顔がかわいい♡

 こんなにかわいいと恋愛のいざこざもありそうだよね。このパーティーの恋愛事情ってどうなってるんだろ。

 ズッキーさんは筋肉しか興味なさそうだけど、ハインライトさんはどうだろう。ハインライトさんってけっこうかっこいいから、もしかして2人のどっちかと恋仲とか⁉ この際だからもう少し詳しく『構造把握』しときますか。


 え、マジぃ⁉ ハインライトさん……あなた……ズッキーさんを⁉ え、マジ……そうなの……。


 じゃ、じゃあ一応ズッキーさんのほうも『構造把握』しないと……。


 あー、えー⁉ それはつらい……。ハインライトさんの妹さんと、ああ、お休み中のヒーラーさんね。こんなかなしい三角形……。これは知りたくない関係だったかもしれないわ。わたし、ハインライトさんの顔を見たら涙を堪えられないかも……。なんかもうがんばれ!


 エミリーさんは……気づかなかったけど意外と若いのね。大人っぽい12歳! っていうか、モンスター狩りたすぎでしょ。色気よりも殺戮衝動がすごい! あ、そおうなんだー。ハインライトさんの妹さんと同い年で仲良しさんなんだねー。わたしも仲間に入れてほしいなー♡


 最後は本命のエブリンさん!

 おお、完全にフリーだ。うーん、でも恋愛に興味なさすぎる人なのね。1016歳って人間で言うと何歳くらいなんだろう。とにかくマーちゃんの敬虔なる信徒かー。エルフって恋とかしないのかしらね。三つ編みエルフは何としてでも手に入れたい……。


(マーちゃん、何とかなりませんか⁉)


『エブリンは人に興味がないのじゃよ……むにゃむにゃ』


 そうなんだ。人に興味がないとなるとなかなか厳しいねー。どうにかしてわたしに興味を持ってもらえるようにしたいな。なんか良いアイディアない?


『そやつは強い者には敬意を払う。そういう性格じゃな』


 なるほど。

 エブリンさんに決闘を申し込んでわたしが勝てばわたしのものってことでいいかな!


『そういう意味ではないのじゃ……』


 魔物をバッタバッタとなぎ倒す姿を見せれば惚れてもらえる?


『それは可能性があるかもしれんの』


 おお! じゃあそっち路線で行こうかな。

 サポート役だけじゃなくて、前線にも立たないとダメかー。どうしようかなー。魔力で覆ったこぶしでぶん殴るくらいしか今のところできないけど……。


『アリシアカッターを使えば良いと思うぞよ』


 レーザー攻撃ってこと?

 でもこれって馬車に取り付けて……あ、わかったわ!

 そういうことね!


 わたし、ライトサーベル創ります!

 

 レーザーを魔力の膜で圧縮して照射するだけじゃなくて、魔力の膜の中で滞留させて高電磁化して光の刃に変える! イメージ、イメージ……イメージして創作! よし、こんな感じかな? これでバッタバッタと敵を切り伏せる! すべてはフォースの導きのままに♪ うぅ、MPごっそり持っていかれた。めまいが……。


『ライトサーベルかっこいいの』


 でしょでしょー♪

 攻防一体の武器だし、金属の武器に比べてグッと軽くなってるから、わたしでも扱えるよね。


 ちょっと御者席に戻って試し振り……あれ? おかしいな。ブォンブォンって音が鳴らない……うーん、とりあえず口で言っとこう!


 でも、さっすがマーちゃんだよー。

 レーザーを武器にするなんて全然思いつかなかったもん。


『我は女神じゃからの。なんでもお見通しなのじゃ』


 マーちゃん大好き♡ サーベルの色はマーちゃんにちなんで深緑にしておくね♡


『我もアーちゃんが大好きじゃぞ』


 相思相愛♡


 あ、そろそろ街道を逸れて支道に入らなきゃ。

 マーちゃん、わたしの活躍ちゃんと見ててね!


 MPポーショングビグビ。

 ふっかーつ!

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