第2話 アリシア、魔力・波乗り式ジェットスキー改☆馬車客車一体型verをお披露目する

「さあみんな、わたしの用意した『魔力・波乗り式ジェットスキー改☆馬車客車一体型ver』に乗り込んでください!」


 内装もかなーり凝ったからね! アリシアさん自慢の客車に仕上がりましたよ♪


「こ、これはいったい……」


 最初に客車に乗り込んだエブリンさんが驚きの声を上げる。

 ふっふっふ、狙い通り!


「どうですかー? このソファ。良いでしょう? ミノタウロス本革なんですよー。でもね、金属鎧を身に着けたままでも乗り込めるように、保護用のラグを敷いて。背もたれにも充て布をしてありますから、装備を身に着けたままでも気にせず座っちゃって平気ですよ」


 とくにズッキーさんの鎧は堅そうですからね。その辺りもちゃんと考慮しておきましたよ。これで長時間の馬車移動も快適になりますね。


「座り心地がとても良いですわ~」


 エミリーさんは、なぜかソファではなく床に座り込んで、敷いてあるラグを指で撫でていた。

 うんうん、そのふかふかなラグもいいでしょう。けっこうデザインも凝ったんですよー。時間を見つけて親方のところで刺繍の勉強をしたのがこんなところで活きるなんてね!


「これはなんだ?」


 あ、ズッキーさん、気をつけて。そこのレバーを引っ張るとソファが飛び出てきますから。でも誰かがソファに座ってる時には引っ張らないでね。一応天井を高くしてあるので、下のソファと上のソファで簡易の2段ベッドになるようにしてあるんですよ。床にマットを敷いて1人、ソファに4人で最大5人宿泊できちゃいます♪


「こっちは?」


 おーっと、ハインライトさん、それを見つけてしまいましたか。鼻が利くのかな。

 そう、それはね――。


「お店とつながっている連動型のアイテム収納ボックスです。今回の救援依頼はわたしたちが出しているものですから、道中の食事はすべてご用意する。そういう契約ですからね」


 ひとまずみなさんお席に着いていただいて、簡易テーブルを出しますね。じゃあ、これを、ガーランド伯領名物のガーランドレモンスカッシュをどうぞ。それと小腹がすいた時のために、ナゲットクンもたくさんご用意してありますよ。


「おいしい……」


「シュワシュワですわ」


「肉!」


「レモン。肉。肉。肉」


 みなさんお気に召されたようで何よりです♪

 状況にもよりますが、野営の時にはアルコールもご用意がありますからね。


「いやっふぉ~!」


 ハインライトさん⁉

 あら、フードを脱いだらわりと若い男の人。ちょっと好みのタイプと違うけど、キツネ顔のイケメンって感じですね。


「あ、いや、その……」


「ハインはお酒が好きでして……」


「昼間はダメだぞ」


「アル中ですのよ」


「気をつける……」


 みんなから一斉にツッコまれたハインライトさんは、ばつが悪そうにソファに座り直した。

 

「見た目からしてズッキーさんのほうがガバガバ飲みそうなのに意外ですね」


「オレは酒は好かん。アルコールは筋肉に悪い!」


 あ、そういうこと。そっち系の人ね。はいはい。なんか似たようなこと言ってる人、近くにいましたわ。


「じゃあズッキーさんにはこっちのプロテインドリンクをどうぞー」


「プロテイン……?」


「簡単に言えば筋肉を作るのに必要な栄養素をぎゅっと詰め込んだ飲み物ですかねー」


「筋肉!」


 ズッキーさんが「筋肉」の言葉に反応して、プロテインドリンクをうれしそうに飲み始める。

 マッチョにはプロテイン飲ませておけばおとなしくなるから楽だわー。


「女性陣にはこっちですね♡」


 とろとろの蒸しプリンですよー。

 カラメルソースはビターにしてあります♡


「とろける~♡」


「ん~至福ですわ~♡」


 カシャッ。

 2人の恍惚の表情いただきました! お宝写真をありがとう♡


「じゃあ馬車の紹介も終わったところで、さっそく出発しますね。わたしは御者席へ。みなさんはしばらくくつろいでいてください。自由に飲食していただいて大丈夫ですが、魔物が出た時動けなくなるほど食べないでね♪」


 よし、じゃあ出発の準備をしましょう。

 新しい相棒『魔力・波乗り式ジェットスキー改☆馬車客車一体型ver』に魔力を充填開始!


 メインエンジン始動!

 メインエンジンは2基から4基に増やしたよ。最大時速400kmを記録! でも最大出力を出すと、すぐにわたしのMP枯渇しちゃうからね……。通常走行は時速50~100kmにしておくよ。


 細い山道を走行する可能性も考慮して、新たに取り付けたのが『アリシアカッター』。

 客車の左右と背面、馬車の正面からは半径5mに対してレーザーが照射できますよよ。これで生い茂る木々や襲い来る魔物を焼き払いながら進めるから安心ね♪


 あとはわたしが御者席に座って、この手綱風の制御アイテムを手に取れば……わたしと『魔力・波乗り式ジェットスキー改☆馬車客車一体型ver』は連携されて一心同体に!

 これで1mm単位の軌道変化も可能になったよ。レーザー照射はもちろんだけど、ジャンプやスピンもできるからね。壁を直角に登ることだってできちゃうよ。


 客車の中が心配? 大丈夫大丈夫ー♪

 姿勢制御のためにサブ噴射器は左右各10基ずつに増やしたからね。これで最大出力時にも客車の中の乗り心地を担保!

 それと実は、客車の中は独立した球体になっていて重力自動感知を積んでいるのです! 地面を感知して勝手に360度回転しながら姿勢制御してくれるよ。だから90度の壁を登っても、天井を走っても、客車の中にいれば赤ちゃんだってすやすや♪


「システム安定! オールグリーン! ミレンテ山脈に向けてレッツゴー♪」

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