第34話 アリシア、例のモノを改造する
どんなに急いでも6日半はかかる道のりを、どうやって2日に縮めればいい?
「なんかないの? 空を飛んでいけば早いとか?」
1週間かかるのは道が入り組んでいて距離のわりに時間がかかるんでしょ? 空を飛べば一直線だから早いってね♪
「いいえ、街道はほぼ直線ですし、街道から逸れて山脈に向かうルートも比較的整備された道ですから……」
エブリンさんが言いにくそうに否定する。
陸路も空路も到着までの時間がそんなに変わらないって?
どうするのよ、この状況……。
「ローラーシューズで飛ばすのはどうっすか?」
ナイス! セイヤー冴えてるじゃんかー!
「よーし、ローラーシューズを時速100kmまで改造してぶっ放していけば、半日で着く計算!」
「それは体がもたないのでは?」
エリオットが苦虫を嚙み潰したような顔をしていた。
あなたでかい図体してるわりに細かいこと言うのね……。高々400kmくらいの距離、なんとかなるでしょ?
エブリンさんのほうをちらりと見る。あれ? エリオットと似たような表情をしている。え、無理?
「じゃあ体の周りを保護するようなカバーをつけて……って、なんだ、そっか。あれを使いましょう!」
懐かしの『魔力・波乗り式ジェットスキー☆ゴールデンスペシャル』があるじゃない!
これならパーティーメンバー全員乗り込んで時速100kmだしても快適走行できるもんね。でもちょっと問題が……。一部のパーツを分解してお店の機械創るのに使っちゃったから、いろいろ材料集め直ししないとなー。
準備に半日……。でもトラブルさえなければ半日あれば着く計算だから、あさってまでには余裕で間に合う! よね?
「移動の算段はわたしにまかせてください。エブリンさんはパーティーメンバーの招集と冒険の準備をお願いできますか?」
「ええ、移動のほうお任せできるなら……メンバーの準備はしておきますが……」
表情が硬い。
「何かまだ問題が?」
「ええ……1人療養中とお伝えしましたが、それがパーティー唯一のヒーラーなのです」
なるほどね。それで冒険に出られずにいた、と。
ヒーラーがいないといろいろ成立しないもんね。
「わたし、ポーション作れるのでそれで何とかなりますか?」
「ポーションですか?」
渋めの顔。
やっぱり魔法で回復できないとダメなのかな?
「いつも通りとはいかないかもしれませんが、HP、MPの回復ポーションは相当数用意しておきますし、あとは持続回復系のポーションと、さっきエリオットで実験したハイヒール相当の治癒ポーションもありますよ」
「えっ、さっきの実験だったんすか⁉」
セイヤーが腰を抜かすほど驚いて、当のエリオットはきょとんとしている。
なぜ?
「理論上は完成していたけど、人が使うのは初めてだっただけよー。でも期待通りの効果で瀕死の重傷から生き返ったでしょ?」
「暴君ぱないっす……」
そんなに褒めないでよー♡
「そうですね……。ヒーラーを募集している時間はなさそうですし、安全マージンを取りながら戦い、ポーションで回復という作戦で行きましょう」
エブリンさんが了承してくれた。
「では各自準備に入るということで!」
一同解散。
「暴君、我々はどうしたら……?」
まだきょとんとしているエリオット。
はいはい、キミたちにもちゃんと指示しますよ。
「話は聞いていたわよね? しばらくはわたしも店を空けます。その間、ネーブルが指揮をとって。シフトは1カ月後まで決まっているから、その通り動けば基本は大丈夫でしょう。VIPのお客様には個別にご連絡をお願いします。わたしも店を空ける状況でも来ていただける方にはそのままサービスを。キャンセルの方にもなるべく早く次のご予約をお取りいただけるように謝罪と礼を尽くしてください」
「かしこまりました。お任せください」
ネーブルの心強い返事。
助かるねー。まあ、長くても1週間くらい? 何とかなる、よね?
「私たちは……?」
「予定通りショーをがんばってね! ロイスに説明している時間がないから、そっちもお願い」
「了解っす。エデンたちをよろしく頼むっすよ」
「そっちは任せておけー!」
よし、急いで『魔力・波乗り式ジェットスキー☆ゴールデンスペシャル』を修復・改造しないと!
ついでに人工の馬も作っておこうかな。今回は誰にも見られずに走るのは無理だろうし、少しでも普通の馬車に見える努力を……。
いや、もういっそのこと、全体をステルス仕様にして……でも人の目の前を走ったら、魔力噴出してるわけだからさすがに何かいるのはバレるかー。
人助けだから緊急車両扱いで許して!
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