第32話 アリシア、無意識のうちに巨乳をタプタプする

「こちらの水晶球に手をかざして魔力を込めてください」


 きたきたー! これよこれ♪ 冒険者って感じする!


「えーと、一応確認なのですが、これで計測できるのは魔力量だけですか? レベルや他のステータスやスキルなんかはどう管理を?」


 ギルド所属するとは言っても、レア度Sのスキルを持っているってことは知られたくないなー。なんとか隠せるものなら方法を探りたいよね。


「ギルドで把握する必要があるのは魔力量のみになります。その他の情報は各冒険者自身で管理していただきたくことになっています」


 ふーん、なるほど。それならスキルのことは知られないかな?


「ステータスやスキルは、その冒険者にとって切り札にもなりえる重要なものだ。ランクの高い冒険者ほど、その情報は秘匿したがる傾向にある。とくにスキルは重要だな。取得、成長のさせ方やスキルレベルによってもスキルの追加効果などに変化があるからだ。新米の冒険者全員に言っていることだが、冒険者となった後も日々研鑽に励むように」


「わっかりましたー!」


 ギルドマスターのありがたいお言葉いただきました!

 冒険者はわりと秘密主義なのね。パーティーを組むならパーティーメンバーのスキルは把握しておいたほうが生存率は上がりそうなものだけど……その辺りは少しずつ探っていきますかねー。


「質問はよろしいですか? よろしければこちらに手をお願いします」


「はいはーい」


 魔力量だけの計測ならめいっぱいやっても平気そう。ついでにちょっとドーピングしてー♪


 いっけー、わたしの魔力! 唸れー! 水晶玉を破壊するのだ!


 MP8220(6850+1370)≪※MP+20%ポーションのドーピング込み≫のわたしの実力を見よ!


「ふんぬー!」


 どうだ、やったかっ⁉


「はい、計測終了です。お疲れさまでした」


 エブリンさんが水晶玉に表示された数値を羊皮紙にメモる。

 水晶玉は七色に光ることも、ひびが入ることもなく、計測が終わってしまった。


 うーん。割れなかったかー。Lv20じゃこんなものかな。まだまだレベルアップが足りてないなー。


「驚きました……。魔力量6850。暫定Aランク相当になります」


 エブリンさんが告げる。

 うーん、まあ、一応魔力量的には十分な結果なのかな。ドーピング分は計測されない……不正はダメかー。


「なるほど。事前に聞いていた通りの傑物らしい。『王立ギルド・ガーランド伯支部』へようこそ。アリシア=グリーン、歓迎する」


 ギルドマスターが握手を求めてくる。笑顔……ではなくて相変わらず熊顔のままだけど。事前、とは。


「よろしくお願いします」


 正面からがっちりと握手。冒険者同士が握手をしたなら……力比べ、ですかね?

 5割ほどの力で熊の手を握り締めてみる。


 くっ、動じない。


 さすがギルドマスター……。8割ならどう? さすがにちょっとは反応を?


 まったく動かない、だと。


 それならフルパワーだ! 100%中の100%! 壊れても知らんぞー!


「くぉー!」


「いくら素質があるとはいえ、筋力で私に挑むのはまだ早いのではないか?」


 熊が笑った――。


「参考までに教えよう。私のSTR≪筋力≫は890だ」


「お、おみそれしました……」


 わたしは力を抜いて、ギルドマスターから手を離した。

 STR≪筋力≫220のわたしでは到底及ばない……。これがミィちゃんの言っていたステータスを特化させた人の実力ってことか……。


「この体格差に物おじせずに、真っ向から筋力勝負を仕掛けてくる胆力には感心する。やはり聞いていた通りの有望株のようだな」


 ギルドマスターがガハハと大口を開けて笑った。


「聞いていた、とは?」


 すでにわたしのうわさが耳に? そんなわけないよね。こんなにひっそりと暮らしているんだから、わたしのことがギルドに知られるはずないんだけどなー。


「ミィシェリア様から聞いている」


 犯人はミィちゃん!


『いずれこうなる日のために、事前に伝えておきました』


 えー、やめてよー! めっちゃ期待の新人みたいな感じで見られちゃってるじゃんかー。わたし、そういうのじゃなくてー、ちょっとギルド所属してたら、いろんな情報集まるかなーって。あとめずらしい鉱石の発掘依頼とかあるかなーって思っただけなんだよ?


『変に悪目立ちしてしまうより、私からの推薦という形で話を通しておけば、いろいろ詮索されることもありませんから、結果静かに生きることができるというものです』


 そういうものかな……。

 女神様に推薦されている人物なんてそもそも十分にやばくない? 一目置かれちゃうよね……。


『それは否定できませんね』


 やっぱりー!

 水晶玉も割れないのに、「すごい! 暫定Aランク」って言われて複雑な気分だよ……。


『その水晶は割れませんよ。たとえMP20000でも100000でも』


 なにそれー⁉ わたしのラノベの知識によると、転生者が水晶チャレンジすると、割れたり七色に光ったりするはずなんだけど⁉


『少し魔力量が高い人が出現する度に割れていたら正しく魔力計測できませんからね。そうならないようにもともと計測はサンプリング測定にしてあります。サンプリングの精度をあげるために仮想的に16コアの水晶を用意して並列的に計測処理し、平均値を算出する仕組みにしてあります。それでも閾値を超える魔力量を検知したらオートスケールするように組んでありますから問題ありません』


 ちょっと待ってー! ミィちゃんめっちゃ早口! 

 なんで急に考え方がシステマチックなの? 水晶のオートスケールっていったい何よ……水晶なんだからシングルコアで普通に割れてもいいんじゃない?



「ミィシェリア様から推薦もあったが、念のため通常通りに魔力量は計測させてもらった。しかし文句ない結果だった。もちろんこのまま暫定Aランクで登録させてもらおう」


「それではこちらに血液とサインをお願いいたします」


 うーん。

 微妙に納得いかないけれど、エブリンさんの胸揺れでも見て一旦落ち着くか……。

 揺れる。揺れる。ふぅ……。


「……すみません。その……急に揉まれると……あの……困ります……」


 ああっ! 無意識のうちにエブリンさんの胸を下からタプタプして揺らしちゃってたー!


「これはついうっかり! そう、サインですね、サイン! ペンと間違っちゃったなー、うっかりうっかり!」


 あー、エブリさん、長いお耳が真っ赤だ!

 急に触ってごめーんね♡

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