暴君幼女は愛されたい! テキトーにLUK≪幸運≫に全振りしたら、ステータス壊れちゃいました~女神様からもらったチートスキル『構造把握』『創作』を使って、玉の輿でハーレムな無双ライフ……スローライフを♪
第17話 アリシア、新人のホワイトラビット族を呼び止める
第17話 アリシア、新人のホワイトラビット族を呼び止める
「というわけで、新しい見習いさんたちが入ってきましたから、編成を細かくしていきたいと思います。今から呼ぶ人は各セクションの責任者です。その下にチームを作って、各チームにリーダーを置いていきます」
このお店も本格的な組織構造になっていくね。
でも、営業しながら新人を教育していくには少人数のチームを複数作って、それを束ねていくしかないかなーって。
「見習いさんたちの配置はそれぞれお伝えした通りです。リーダーにくっついて回って、しっかりと仕事内容を学んでください。といっても、最初の3日間は合同研修です。ローラーシューズの練習を兼ねて、お店の中や周辺のお掃除をしてもらいます。それとお店のメニューもしっかり把握してもらう必要があるので、たくさん食べて、飲んで、このお店のすばらしさを真に理解する時間に充ててくださいね。あ、お酒は就業時間中はダメですよ。退勤した後に試飲できるように計らいますからね」
小首傾げてウィンク☆
軍人の新人さんたちめっちゃ盛り上がってるー! えー、なーに? そんなにわたしかわいい? 好きになっちゃった⁉ ああ、お酒……そうですよね……知ってましたー! くそー、惚れ薬でも混ぜてやろうかしら⁉
* * *
そして研修3日目。
「さすが軍の訓練を受けてるだけあって、みんな体力はありますねー」
重い物を運ばせても疲れた素振り1つ見せないし、みんな姿勢正しくキビキビ働いているね。
「『足が止まったら死ぬ』最初に教えられるのはそれよ」
苦虫を嚙み潰したような顔でソフィーさんが言う。
「戦争っておそろしい……」
「でもそれは自分たちの身を守るためでもあるの。心が折れずに逃げることができれば、次の機会は必ず訪れる。無駄に死んではいけない。それがこの国の考え方よ」
特攻隊、みたいな国のために滅私を強要することがないっていうのはとっても健全よねー。それでも戦争はなくならないというのは悲しい話ではあるけれど、国という概念がある以上、それぞれの正義があるからどうしても争いが避けられない時もある、か……。島国だけど、やっぱり船が攻めてくるのかな? それともワイバーンに乗って、とか?
「あなたたち! ここは軍ではないんだから、すれ違う時に敬礼はやめなさい。お客様が見たらギョッとするでしょ」
ソフィーさんが軍人さんたちを捕まえて指摘する。
まあ、いきなり違う組織に連れてこられてまだ数日だからね。彼らだっていきなり習慣が変わっても対応するまでには時間がかかるでしょうよ。
規律正しいのは良いことなんだけど、やり過ぎは良くないっていう、微妙な線引き……。
あ、あの子!
「ちょっとキミ、こっちきてー」
面接の時から密かに気になっていた白い子だ!
「私、ですか?」
小柄な軍人さん。ベレー帽を押さえながら、周りを見回してキョロキョロしている。
「そうだよ、キミ。確か名前は……ステファン?」
「はい! ステファンです!」
ステファンが駆け足でわたしのもとに走ってくる。
速い速い! ぜんたーい、止まれ、1、2!
「特別任務でありましょうか⁉ 暴君幼女!」
「おい。新人でも殴るぞ」
「すみませんすみません。失礼いたしました。主君に無礼を働いてしまいました……。かくなる上は切腹してお詫び申し上げます」
ステファンが腰に携帯していた小型ナイフを勢いよく取り出すと、そのままお腹に突き立てようとする。
「待て待てーい! おまえは武士か! ステファンストップ! ストップ・ザ・ステファン!」
「なん……でしょうか。暴君幼女。今から見事腹を掻っ捌き、死んでお詫びを」
切腹を止められてきょとんとするな。切ったら何もかも終わりでしょうが!
「『いのちだいじに』の軍命令はどうした⁉ お店で勝手に切腹するんじゃありません! 危ないからナイフは没収します!」
軍人っていうのはみんなこんな危ない人たちなの⁉
「ああ、おばあさまの形見が……」
「形見……はさすがに没収できないね。じゃあ返すけど、もう何があっても切腹は禁止にします。いいね?」
「イエスマム!」
「な~に、これはまた、おもしろい子を見つけたわね♪」
わたしたちのやり取りを見て、ソフィーさんがお腹を抱えて笑っている。
はあ。もう他人事だと思って……。もしかして、切腹禁止も朝礼で言わないといけないことなの?
先が思いやられるわ……。
「まあ、それはいいや。以後気をつけて。呼んだのはそういうことじゃなくてね。ステファンはたしかホワイトラビット族だよね?」
ホワイトラビット族。
小柄なうさぎの獣人さん。白くて長い耳が特徴的だね。それ以外は見た目、人族とほぼ変わりない。肌はめっちゃ白いけど、尻尾はないし。あ、でも瞳の色は赤いね。
だけどうさぎっぽい特長があって、足がものすごく速い! 尋常じゃなく速い! パワーはないので、索敵などに向いているらしい、とは聞いているよ。
「はい、そうです。あの……耳、触りますか?」
ステファンがベレー帽の脇から垂れ下がる白くて長い耳を持ち上げる。
え、いいのー? 遠慮なく触っちゃうよ⁉ モフるよ⁉
「えっと、じゃあちょっとだけ……」
もふもふ……あふん、あふぁふぁふぁぁ癒されるぅぅぅ! かわいいかわいいかわいいっ♡
「ふ~ん。ホワイトラビット族が軍所属になるのは珍しいわね。何か事情があるのかしら?」
ちゃっかりと一緒に耳を触りながら、ソフィーさんが尋ねる。
「えっと、そんなにたいした事情はないんですけど。ちょっと軍人さんに憧れて、です……」
微妙にステファンの歯切れが悪い。
耳がピクピクしているし、顔もうっすら赤い?
「おばあさんの形見のナイフを持ってるみたいだけど、もしかして戦うのが好きなの?」
見た目にそぐわないけれど、意外と好戦的なのかもしれない。
「いいえ、私、血が苦手で……赤いものを見るたびに気絶してしまって……。いつも上官に怒られておりますです……」
ぜんぜん違った。
むしろ軍人さんに向いていないタイプなのでは?
「でもあれかー。持ってるスキルが『鼓舞』だったよね。部隊にいるとそれだけでみんなの役に立つ系だから、重宝されるのかな」
ちなみに『鼓舞』というスキルは、パッシブスキルで周囲にいる味方の能力を上昇させることができる。レベルが10を超えてくると、一時的にアクティブスキルとしても使用できて、任意の相手の任意のステータスを大幅に上昇させられるとか。
「そうですね。とりあえずそこに立っておけ~みたいに言われてて。私としてはもうちょっとみんなと一緒に訓練したいというか……密集地帯にいきたいというか……」
ん? 密集地帯って?
「暴君幼女! 良いところにいた! 新しいポーズを思いついたのでぜひ見ていただきたい!」
エリオットが意気揚々と近づいてくる。
「おー、エリオット。新しい可能性を考えるのは良いことだねー。ソフィーさんもいるし、せっかくだから一緒に見せてもらおっかな。ね?」
「いいわね。『龍神の館』の希望の星。チームドラゴンには期待してるわよん♪」
「は、は、はじめまして! 新人のステファンです! エリオット様におかれましてはご機嫌麗しく、いつも応援しています!」
なんぞ?
ステファンが恐ろしいほどに挙動不審だ。滝のような汗……って、汗はその耳で拭くんかーい!
「お、おう。ステファンか。今後ともよろしくな!」
エリオットがにこやかに笑い、ステファンに握手を求める。
と、ステファンが「きゅぅ」という声とともに気を失って倒れた。
「えっ⁉ ステファン⁉」
おおおおい! 急にどうしたのっ⁉
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