第16話 アリシア、治癒ポーションを開発する
「はーい、というわけで、今日から臨時で一緒に働くことになった新人ちゃんたちでーす。みんな仲良くね♪」
さっすが軍人さんたち。
今日頼みに行って、今日そのままお店に連れてこられても文句ひとつ言わないのね。
「まずはみなさん、オリエンテーションをしましょう。20人くらいのグループに分けていきます。お店の中、外、街中など、わたしたちの活動内容を確認してもらったり、料理の試食やローラーシューズの練習をしてもらいます」
それにしても人数多い!
いや、基本的にみんな筋肉ムキムキで体がでかい! 全員お店のホールに人が入りきらない……。
「ソフィーさん、さすがに178人一気に稼働は手に余りますね……。とくに調理場はスペースが限られているからどうにかそこだけでも別の施設を借りられたりしないかな……」
販売のほうは、わたしが、タッチパネル式魔力認証注文システムをちょっとずつ創って増やしていけばいいんだけどね。
「通常の調理だけでいいのであれば、いくつかあてはあるわよ。そっちは任せてちょうだい」
「助かります。とりあえずはざっと全員面接して、何をやってもらうか配属を決めないと……」
って、自分で言ってて178人面接ってマジか……。
でもやっぱり全員の『構造把握』をしないといけないよね……。コピーロボットほしいなあ。あとなんかよくあるやつだと、分割思考とか? あれどうやってるんだろ。そんなことしたら頭割れそうだけど。
* * *
「いやー、さすがに人数多かったですね……。面接だけで3日もかかっちゃいましたね」
わたしとソフィーさんは例によって面接疲れ……。ソファの上でぐったりだ。HP回復ポーションとMP回復ポーションをちゅるちゅる飲む。
さすがにこれだけ派手に使うと『構造把握』のレベルも上がるよねー。とうとうLv3かあ。途中から弱点部位とかいう変なものが見えるようになったけど、これがLv3の効果なのかな?
「お疲れさま。さすがセドリックのところの子たちってところかしら。何人かは本気でうちにスカウトしたい子もいたわね」
ソフィーさんの弱点部位は……アキレス腱かあ。まあ普通みんな弱いところだと思うけど。あとは左肘。古傷か何かかな? それと全体的に腸が弱ってるみたい。お酒は控えたほうが良いんじゃないかなー。
「はいはい、いましたね。それはまあ、少しずつ洗脳……じゃなくて説得していけば良いとして。ソフィーさんって左肘をケガしてたりします?」
「左肘? 昔ちょっとね」
苦い顔をして、左肘をさする。
やっぱり古傷かー。
「ちょっと見せてくださいよ」
「ん、おもしろいものじゃないわよ?」
そう言いながら、袖をまくって左肘を露出してくれた。
「若い頃は盾の扱いが苦手だったのよ。私は人より体が大きいから、支給された盾だと、肘が盾の外に飛び出てしまって。それを調整せずに使っていた時に、ガツンとね……」
痛々しい刀傷。口振りからして訓練中の事故だろうか。
ちょっと失礼して触らせてもらって詳細な構造把握を……。皮ふの傷でも骨でもなくて靭帯を痛めているのね。衝撃によるケガが直接の原因じゃなさそう。刀傷のほうは残っているけれど傷自体は治っているみたいだし。でも靭帯と周りの筋が変な感じになってるね。その時ケガしたのかばって、ずっと肘を変な使い方してたせいかな。
「これは痛そうですね……」
「もう昔のことだし、日常生活では問題ないわよ。重いものを持つ時だけ気をつければね」
ふーむ。
何とかしてあげたいなあ。
こういう場合って痛めた靭帯を取り除いて、正常な腱を移植してつなぐってことよね……。トミー・ジョン手術だったかな。でも今回は靭帯もまるっと取り替えないといけないから肘全体の再生手術になりそう。
あとは手術後に元の組織とつながっていくのに時間がかかりそう。リハビリとかも。
うーん、ちょっと改造ポーションを作ってみようかな? 欠損部位の再生はわりと需要ありそうだもんね。
えっとまずは睡眠ポーションの効能を一部強化して、局部麻酔の効能に組み換え。それと毒消しポーションの効能を一部強化して、異常組織の消去に効能を組み替え。あとはHP回復ポーションの効能を一部強化して、一時的な自己再生能力の極大向上に効能を組み換え。
これにマーちゃんの涙一滴と混ぜ合わせると――なんと治癒ポーションのできあがり? 成分の構造的にはいけてるっぽいなー。
あとは正常な右肘の靭帯と腱の一部を利用して正常な靭帯と腱を創作して、左肘に移植。そこにこの治癒ポーションをかければ……理論上は再生する、はず。
理論上はね……。
いきなり「試させてくれ」とは言いにくいなー。
とりあえず何かもうちょっと軽いケガで治癒ポーションの効能だけでも確認して調整したいところだね。
「アリシア、どうかした?」
「あ、いえ、ちょっと考え事ー。えっと、調理に回ってもらう子たちをピックアップして、残りは販売に回ってもらうって感じでいいですかね?」
「OKよ。調理のほうは指導できる天使ちゃんの人数を考えても、30人が指導できるMAXの人数かしらね」
「そんなものだと思います。まずは調理系のスキルを持っている子を優先的に選ぶと……10人か。意外と少ないですね」
「そうね~。この規模になってきたら、仕入れ周りに人を専任でつけても良いんじゃないかしら」
「ああ、たしかに。今は調理の天使ちゃんたちにそれもお願いしてますけど、在庫管理や買い付けなんかも分業化していっても良いかもしれませんね」
うまいことノウハウを分散して、各セクションの責任者を増やしていく必要がありそう。本格的に組織構造を考えていかないといけないかー。そっちの知識はあんまり深くないから試行錯誤するしか……。
「その辺りを加味して、調理のほうにこの子たちをプラスして20人。あと10人くらい調理のほうに連れていきたいけどどうしようかな」
「普通に清掃要員も必要よね」
あ、それだ!
すっかり忘れてた! ソフィーさんナイス!
「清掃系のスキルを持っている子は……5人ですか。あとは販売系のほうを確認してから微調整しましょう」
だいたい決まってきたねー。
あとは実践的な研修で何とかしていきましょ。
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