第四章 アリシアと料理店~リニューアルオープン 編

第1話 アリシア、オープン直前の演説をする

「今日から朝礼なんてものを始めようと思います。みなさんおはようございます!」


 おはようございます!


 100人の天使ちゃんたちが一斉に挨拶をする。

 おお、壮観だね。これがみんなわたしの言いなりに……。ソフィーさんの気持ちがちょっとわかってしまう自分が怖い……。


「このあと昼12時から当店『龍神の館』はリニューアルオープンします。いよいよ12時開始です。当店初の昼営業を始めることになります。と言っても昼間はテラスだけを開放してテイクアウト料理のみの販売なので、お店の中にお客様が入ってくることはありません」


 まずは平民向けの施策からスタートだ。

 テイクアウトの昼営業については、これまでまったくプロモーションを行っていない。つまり今日からが勝負だ。


「初日から7日間はテイクアウト料理の大規模キャンペーンを展開します。『1個買ったらもう1個おまけでついてくる』キャンペーンです!」


 1個はその場で食べてもらう。そしてもう1個を持ち帰ってもらい、そのおいしさを家族や友人などに宣伝してもらいたい。そういう主旨のキャンペーンだ。


 ホントはもう1つキャンペーンをやりたかったのだけれど、ミィちゃんに固く止められちゃったからなー。

 わたしが考えていたのは『恋人・夫婦限定! 仲良くミィちゃんのフィギュアと写真を撮ってお店の前に貼ったら、好きな料理を1品タダ』キャンペーン。

 良いと思ったんだけどな……。愛の女神のアピールにもなるし、お店の人気も上がっていくし……。でもインスタントカメラは人前に出しちゃダメって……。だけど諦めない! フィギュアはお店のほうが落ち着いたら、量産して絶対販売するからね!


「オホン。今日の販売目標は、ナゲットクン200食、Dチキ200食、フライドポテト200食、イチゴクレープ100食、コーラ100杯、ソーダ100杯、オレンジジュース100杯、すりおろしリンゴジュース50杯(これだけ限定品のためおまけ対象外)です。今月の販売ラインナップはこれでいく予定です」


 それぞれおまけは別カウントで。

 各料理は販売目標の3倍をストック済みだ。

 ガーランド伯爵の出資によって、巨大なアイテム収納ボックスも設置できた。これがあれば熱々、そして冷え冷えの料理が即座に提供できる。アイテム収納ボックス内は時間の概念がないため、収納中の料理は腐敗せず廃棄も出ない。料理店にとってこれほどのアドバンテージはないよね。


「調理の天使ちゃんたちは引き続きストックの製作に取り掛かってください。無理はせず、生産のペース配分を守って。休憩は必ず15分ごとに取るように。休憩中にまかない料理は自由に飲食してかまいませんが、販売用とはきちんと分けてくださいね」


 ファストフード用の料理は、すべての材料をセットしたら全自動で完成するようになっている。眺めているだけではあるんだけど、機械トラブルもあるからしっかり見ていてほしいのよね。味より量と速さで勝負! いや、味もめっちゃ自信ありますけどね!


「ホールの天使ちゃんたちは昼間は外仕事になります。オーダーのタッチパネルは必ずお客様自身で押していただくこと。そうでないとあとで『注文と違うものが出てきた』というクレームにつながります。魔力認証の注文システムを正しく使えば店側でのオーダー取り違えは起きないので安心して、落ち着いて対応してください」


 個人を特定する魔力認証システムの開発はすっごい苦労したよ……。でもこれさえあれば、オーダーのミス、支払い・受け取りのミスはゼロにできるし、3日分のMPを捧げて開発・改良した甲斐があったよ。これはぜひ特許申請したい所存。

 あとはどうにか国の造幣局とパイプをつないで仮想通貨の流通をですね。MayMayシステムを実現できたらなあと。魔力認証に暗号化システムを導入できたらだいたいいけるはずなんだよねー。


「プロモーション担当の天使ちゃんたちは同じく外仕事になりますが、ローラーシューズで派手に走り回るのが仕事です。街を歩く方にチラシを配ったり、試食・試飲のサービスをしたり……でも走行速度には十分注意してくださいね。それと、アイテム収納ボックスから外に出している試食用の料理は、15分ごとに新しいものと交換してください。もったいなくても15分ルールは絶対にルールを守ってくださいね」


 ある意味プロモーションの天使ちゃんたちが一番重要になる。

 龍神の館は高級店。そのイメージが街を歩く平民のみなさんたちにはあるはず。何も宣伝しない状態ではお店に人が寄り付くわけがない。


 安い・速い・美味い。これをこの1週間で一気に刷り込んでいく。

 店の前のテラス、そして広場が、毎日人でにぎわう状況を作り出したいのよー!


「えーと、わたしからは以上ですが、最後にオーナーのソフィーさんから一言いただきます」


 どうぞ、と、わたしは一歩下がる。

 もちろん挨拶のことは事前打ち合わせなんてしてない。てへぺろりんこ♪


「えっ、私⁉ えっと……今日という日を迎えられたのは、みんなが一生懸命準備に励んでくれたおかげよ。とっても感謝しているわ。今日は龍神の館が生まれ変わる日よ。そのすばらしい日をこうしてみんなで迎えられて本当にうれしいわ。まずは今日1日を笑顔で乗り越えて、明日につなげていきましょう。これからもみんな笑顔で楽しく暮らしていけるように!」


 拍手! 拍手! 拍手!

 良い演説ー! ソフィーさん最高ー!


「オーナー、ありがとうございました! それじゃあみんな、今日がラッキーでハッピーな1日になりますように! がんばっていこー♪」


 わたしたちの挑戦が始まる! 

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