第15話 アリシア、パパ活を始める
「なかなか料理が出てきませんねー」
待つこと3時間。
さすがにテトリスも飽きてきたんだけど……。
「次、私にもやらせてちょうだい!」
ソフィーさん……下ボタン押すとすぐ積みあがっちゃうでしょ。下手だなー。
「コース料理とはいっても、さすがに3時間は長すぎです。調理法に問題があるんだろうな……」
「今は一晩に1組しかVIPのお客様を受けて入れていないのよ。厨房は一般用とVIP用に分けていて、VIP専用の調理スタッフを配置しているわ」
おー、非効率! 付きっきりでこの調理時間はぜんぜんダメですね……。この先3階1組、2階2組、さらにカジノスペースとかなりの量の料理を捌かないといけないわけで。厨房の配置や調理法も見直していきましょうかね。
「VIPルームはそこまで気にしなくてもいいですが、1階やテイクアウト料理は回転が命です。ここは設備投資をしっかりしたほうが良さそうです」
「設備投資というと、具体的には何をするつもり、なの?」
ちょっと大事な話してるのでゲームやめてもらっていいですか? ソフィーさんじゃわたしのスコアは抜けないからあきらめて?
「アイテム収納ボックスの購入です」
「それはまたとんでもないことを言うわね……。いくらかかるかわかっているのかしら?」
ソフィーさんもさすがに手を止めて、わたしの本気度を確認してくる。
「値段はわかっていないです。でも、アイテム収納ボックスの有用性は理解しているつもりです」
肩にかけた革製のバックをポンと叩いて見せる。
こんなに小さなカバンでさえ、ソファやテーブル、その他巨大な木材などなど、相当なアイテムを収納してもまだ空きスペースがある。
「まず食材の保管スペースの問題。そして、賞味期限の問題。ここまではわかりますね?」
「ええ、まあ。確かに便利よね……でも価格が……」
「アイテム収納ボックスは食べ物を扱う料理店にこそ必要な設備だと思うんですよね」
収納中の時間は止められるという最大のメリットは料理にこそ生かすべきものだと思う。実際わたし、作り置きした料理をいっぱい収納してるし。
でもソフィーさんの反応があんまり良くないな……。
「んーと、ほかの料理店でもあまり使用されていないものなんですか?」
「聞いたことがないわね……。アイテム収納ボックスなんてレアなものはランカー冒険者の一部か、王族、貴族……少なくとも私たちが手を出すようなものではないわ」
思ったよりもレアなアイテムなんだ……。聞いた感じ、絶対手に入らないってことはなさそうなんだけど。
「それは希少価値があって出回っていないからですか? それとも価格が高すぎて手が出ないという意味ですか?」
前者ならちょっときついけれど、後者ならなんとでもなる、かな?
「もちろん価格よ。お金さえあれば手に入れることはできるわ。でもこの店のプール金を全部つぎ込んでも到底買えやしない……」
お金、ね。
お金がないとやりたいことができない。
それはどこの世界でも一緒かあ。でも、そんなことで諦めたくないよね。
「借りましょう」
「え?」
「だからお金。借りましょうよ」
「アイテム収納ボックスの購入資金、ということかしら? どこから?」
「お店の顧客リストを持ってきてください。わたしたちにお金を貸してくれそうな人を見つけましょう!」
すでにこの店にはVIPのお客さんがいる。
つまり、お金を持っている貴族様を顧客に抱えているという大きなアドバンテージがあるわけ。
「なるほど……それも1つの手、かしらね」
「はい! いずれローラーシューズの販売の時にはやらなければいけないことだったので、それが早まっただけです!」
「わかったわ。台帳持ってくるわね」
「よろしくお願いします! わたしたちの事業計画に賛同して、資金援助をしてくれる貴族様を見つけるのです!」
本当はお店が新装開店してから、実際の運営状態を見てもらって出資者を募りたいなって思っていたけれど、どうやらそうもいかなそう。なんとか計画書の時点で1人は協力者を捕まえておかないとダメね……。
「持ってきたわ……。これでいいかしら?」
ソフィーさんが持ってきたのは、お店の売上管理台帳だった。
おー、意外としっかりしてる。誰がいつ来店して何を注文したかがちゃんと書いてあるね。
「読み書きができる天使ちゃんを何人か連れてきてもらって、これを人別に集計してみましょう。とりあえず過去3年分くらいを年単位でまとめて傾向を確認したいです」
「わかったわ」
どれくらいの人が候補に挙がってくるかなー。
わたしの『交渉Lv5』の真価が問われる時だなあ。
わたし、パパ活始めます!
どうしてもダメなら、開店日を見直して、しばらく天使ちゃんたちと一緒に街道の大掃除をするしかないかなー。金を集める大掃除ー。でもまあ、それは奥の手ってことで残しておきたいよね。
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