第14話 アリシア、VIPルームを完成させて……悩む

「料理……料理……どうしようかな……」


 やっぱり課題はメイン料理よね。


「アリシア、どうしたの?」


「ちょーっとだけ困ってるんですよねー」


 料理どうするかなー。

 何を出しても今よりはクオリティ上げられる自信はあるんだけど、VIPルームはなんでも定食屋ってわけにいかないから、コンセプトを定めないとねー。お店の方向性に合っていて、インパクトがあって、人に語りたくなるような……それでいて超おいしい!


「ショー? 設備の建設? うまくいってそうに見えていたけれど何か問題があったのかしら」


 ソフィーさんが3階のフロアを眺めてつぶやく。こんなにちゃんとできあがっているのに、って表情だ。


「順調ですよー。というか、3階のフロアはこれで完成です」


 全方向完全防音で、盗聴・盗撮ができないように魔力遮断対策もバッチリ。最高級のミノタウロス本革張りのソファに、透明度が高いクリアガラスのローテーブルを設置。そしてサイドテーブルには熱々のお鍋も置けるように合金を使いました。あとは床にフローリング材を敷いて、樹液を加工したワックスも塗ってピカピカです☆

 ソファもテーブルもボタン一つで下にキャスターが飛び出してきて、移動も楽々ー♡


「あれはどう? つけてくれたのかしら?」


 ソフィーさんが周りをキョロキョロ。そわそわしだす。


「はいはいもちろんですー。ソフィーさんの要望通り、ムーディーな間接照明もつけましたよー。ほらっ」


 指をパチンと鳴らせば部屋の照明が落ちて、ゆっくりとミラーボールが回るようにしたのと、怪しげな紫の間接照明が――。


「素晴らしいじゃないの~。良い仕事してるわね。これなら自信をもってお客様をお迎えできるわ♡」


 ソフィーさんから贈られる惜しみない拍手。

 わたし、インテリアコーディネーターとしても食べていけますかね? 実は自分の部屋のコーディネートもけっこうな自信作なんですよねー。


「まあ、ここは大丈夫だし、2階のカジノももう少しで完成なので、いよいよ新装開店で営業できそうなところまで来ていると思うですけどー」


「ほかに何が必要なのかしら?」


「何を言ってるんですか! 料理ですよ、料理! ここは料理店ですからね! ここは料理店ですからね⁉」


 一番大事なことなので2回言いました!

 ちゃんと味で勝負しましょうよ。貴族様が悪いことをするための場所を提供する店に成り下がるつもりはないですからね!


「料理なら普段お出ししているものも自信作よ? 皆様にご満足いただいているわ」


「それはそうなんでしょうけど、わたしが目指しているのはトップオブトップなんですよー。王都までうわさが届くくらいの超絶五つ星の名店にしたいんですー」


「王都ってずいぶんな目標ね……」


 ソフィーさんがあきれ顔でこちらを見てくる。

 わたしは本気なんですよ?


「とにかく料理です。設備は注目を集めるためのきっかけに過ぎないのです。何をおいても料理で度肝を抜きたい。VIPの人たちが料理おいしすぎて会合とかどうでも良くなっちゃうくらいの。なんなら料理を食べにくる口実に会合開いちゃうくらいの高みを目指しているんですよ!」


 そうすれば、ついでにローラーシューズもバカ売れするだけじゃない? わたしのハーレム&玉の輿計画に大きな影響を与えることでしょう!


 イメージ的にはこう!


≪おお、うまい。舌が蕩けるようじゃ。このお店をプロデュースしているのは誰なのじゃ≫

「はい、わたし、アリシアです!」

≪なんと、可憐なお嬢さんじゃ。うちの孫と結婚してくれないか≫

「えーお孫さんですかー? ちなみに爵位は?」

≪わしは大公爵じゃ。孫に家督を継がせるように遺言も残しておこう≫

「えー困りますぅ。わたし、大公爵夫人の器じゃありませんしー」

≪何を言うか。この店を切り盛りする才覚。今手に入れなければ王宮に取られてしまうのじゃ≫

「王宮ですかー。じゃあわたしお姫様候補になっちゃいますねー」

≪そこをなんとか、アリシアの作る商品はすべてこの大公爵家がバックアップするのじゃ≫

「えー、ホントですかー。おうちに天使ちゃんたちを連れて行っても大丈夫ですかー? あとミィちゃんも連れていきたいんですけどー」

≪もちろんじゃ、すべてアリシア様の言う通りにするのじゃ≫


 っていう感じに、このお店がうまくいくと、大公爵と王宮がわたしを取り合うはずなんだよね!

 そのためにもちゃんとした看板料理を作り上げないと!


「ところで今この店の看板料理ってなんですか?」


 まずはそれを聞いておかないことには始まらないのでした。失敗失敗♪


「鳥の丸焼きよ。香草で香り付けしたものを目の前で大胆に切り分けるのよ」


 ふむ? インパクトはなかなかよろしいですね。VIP向き。盛り上がりそう。


「肝心なのは味なのですが、それはどうなんですか?」


「もちろんおじいさまから受け継いだ秘伝のたれを継ぎ足しつかっているわ♡」


 自信満々のソフィーさん。

 なるほど、おじいさまから。ここは由緒正しい伝統あるお店だったのね。


「わかりました。このお店のプロデュースを任されている身。一度その丸焼きの料理を確かめさせてください。その上で改良すべき点、もしくは他の料理の提案などさせていただきたいと思います」


 さあ、料理の審査を始めるぞ!

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