第12話 アリシア、男たちの体を調べる

「スキル:構造把握」


 わたしはエデンの体に対してスキルを使った。


 そこで読み取れたいくつかの情報――。


 エデン=サクリスフィア。15歳。父:マシェリ=サクリスフィア(人族)。母:ミレネ(雪女族)。現在の身長162cm・体重43kg(その他の身体情報省略)。所持スキル:剣術Lv8。コールドアローLv0。コールドブリザードLv0。コールドバリアLv0。以下参照不可。


「だってさ。……良かったのかな?」


 迷ったけれどすべて伝えた。

 もしかしたら雪女族のお母さんがいることだけを伝えれば良かったのかもしれない。でも、お父さんのことも、名前も、年齢も、まだ活性化していないスキルのことも全部伝えた。わたしの精一杯の誠意。


「ありがとう……ございます。そうか。ボクにも父がいて、母がいたんだ……」


「わかって良かったっすね! アリシアさんのスキルぱないっす!」


 セイヤーが大げさにリアクションを取る。

 セイヤー、ありがと。場を柔らかくしてくれて。そういうの、ホント助かるよ。でもスキルのことは声小さめに!


「本当に雪女族の血を引いていたんですね。自分と同じ混血だ。エデン、混血仲間がいてくれてうれしいよ」


 エリオットが立ち上がり、エデンの肩をがっちりと組む。エリオットの胸板につぶされながらもエデンはどことなく嬉しそうに照れ笑いを浮かべていた。


 妬けちゃうね。男同士の友情ってやつ? ちょっとうらやましいかもね。でもちょっとだけだよ?


「しかし、エデン。あなたのスキルはとことん戦闘向きですね。鍛えている剣術以外にも氷系のかなり強力な部類の魔法が眠っているのですね」


「ボクは剣術しか習ってきていないから、魔法はぜんぜん……どうすればいいのかもわからないです」


 どうやって魔法を行使するか。


 わたしたちは全員顔を見合わせてしまう。どうやら誰もここに攻撃系の魔法スキルを持つ人はいないみたい。


「わっかんないわね。活性化していないスキルの呼び起こし方? それこそギルドに行くとかかな……いや、それはちょっとやめて。なんで活性化していないスキルがあるってわかったんだって話になっちゃう」


 わたしが構造把握できることは誰にも知られたくないもの。


「大丈夫です。今の仕事には不要ですし、もしかしたら何かのきっかけで使えるようになるかもしれませんし」


 エデンが微笑む。

 なんだ、心までイケメンか。……惚れてなんていないんだからねっ!


 オッホン!


「ほら、から揚げ冷めちゃったよ。あ、もしかしてエデンって熱いの苦手?」


 雪女族の血を引いてるから、なんて。


「ええ、そうなんです。猫舌で……雪女舌なんですかね」


「雪女舌? そんなのあるんっすか?」


 セイヤーが鼻で笑う。

 ありそうだけど、雪女が熱いの苦手なのは舌だけじゃなさそう。


「エデンに出す料理は、今度からは少し冷ましてから出すわ」


「配慮いただきありがとうございます」


「あのさー。ちょっと固いよ。エデン15歳ー。わたしより年上でしょ? 14じゃなくて15なら、もう成人年齢だよ? まあ、わたしが超絶美少女でプロデューサーさんで偉い立場だから恐縮しちゃうのはわかるけどー、このメンバー内では敬語禁止ね!」


「はい……うん、わかったよ。あらためてよろしく、アリシア」


 エデンが右手を差し出してくる。

 わたしは極めてナチュラルな動作でその手を取り、握手に応じた。


「よろしくね! 雪男さん」


 内心はバクバク。心臓が破裂しそうだった。男の子と握手しちゃった……。ちょっと! わたしのこと見ないで! 誰もわたしの構造を把握しないでよねっ!


「あ、セイヤーもエリオットも敬語禁止だからね」


 べ、別にエデンだけが特別ってわけじゃないんだからねっ!


「了解っす」


 セイヤー軽いな。変わってなくない? まあいいか。


「おう、アリシア。よろしくな」


 おっと、ワイルド系イケメンのため口……大変良い。べ、別にいいじゃない! みんなかっこいいしやさしいんだからさ! ソフィーさんの選んだ天使ちゃんたちはやばいね。みんな違っててみんないい!



「よ、よーし! チームドラゴン、打ち解けたところで仕事の話だー!」


 わたしは立ち上がり、そう宣言する。

 このままだとわたしの身が持たない! 仕事しよう、仕事!


「エデンの体の構造はわかったからいいけど、セイヤーとエリオットも構造把握させてくれる? 靴や服はオーダーメイドで作成するから、ちゃんと把握しておく必要があるの」


 仕事だよ? やましい気持ちはこれっぽっちもありませんからね! ホントだよ? 勝手にフィギュアとか作らないから!


「もちろんっす」


「よろしくな」


 2人が快く応じてくれたので、順番に手を握ってスキルを使用する。



「なるほどね。OK。把握したわ」


 すごい……。魔族……。なるほど、こんなふうになって……。あ、構造把握のレベル上がった!


「じゃ、じゃあ、わたしはちょっと材料の買い出し部隊の帰りを待ってから服と靴は作っておくね。今日は一旦解散ね。また明日の朝8時にここに集合ってことで! 残った料理は3人で分けて持って帰ってね♪」


 第1回、チームドラゴンの会合はこれにて終了だー!


「明日からもよろしくね!」


 チームドラゴン――ゴーファイッ!

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