第9話 アリシア、お店の宣伝を始める
「親方ー。そういうわけだから、わたししばらく『龍神の館』に通うことになりそうです」
まだ工房に住まわせてもらったばかりなのに、いきなりお店の手伝いとかできなくなるけど大丈夫かな……。わたしの代わりにミィちゃんに店番頼んでみよっか?
「気にするな! ソフィーを助けてやってくれぃ」
親方が笑いながらわたしの背中をポンと叩いた。
うん、でも、ちゃんとスーズさんは休ませてあげてね。ヤンスをもっと働かせて。不安になってきた……なんとかコピーロボットでも創っとく?
「リーンちゃんありがとね。私、アリシアに可能性をビンビン感じてるわ!」
ソフィーさんもわたしの背中を叩いてくる。
え、わたしの背中で手をつなぐのやめて? 親方とソフィーさん、マジどんな関係なの⁉ 見たくないし知りたくないんで、わたしの見えるところでやめてくださいます⁉
「夜遅くなるようなら、ステンソンを迎えに寄こすが」
「けっこうです。わたし、1人で帰れますから」
「お、おう……そ、それならいいんだが……余計な気を回しちまったみたいだな」
親方がタオルを出して汗を拭いだす。
やべ。親方にきつく当たっちゃったかも。だって、ヤンスと2人で並んで歩くとか、ちょっとじんましん出そう……。たとえ盗賊に襲われたとしても、たぶんわたしのほうが強いし、ヤンスを守ってこれ以上好きにでもなられたりしたら、次の日辺り行方不明になっちゃうかも。ヤンスが。
「さーてと! さっそくお店改造の設計とローラーシューズショーの特訓を開始しないと!」
やることがいっぱいだー。100人の天使ちゃんたちにもたくさん働いてもらうよー。
* * *
「まずは何をやるにもお店の宣伝からですねー」
何をやるにも知名度が一番大事。
「とにかく注目を集めていきたいですよね」
「つまり具体的には何をどうするつもりなのかしら?」
ソフィーさんが不安そうに尋ねてくる。
ノーヒントだとわかりませんかねー? 簡単だと思いますけどね?
「揃いの制服です」
「ああ制服ね。でも制服が最初なの? 意外だわ~」
「えーとですね。これから、料理の試作、店内の改装など大掛かりな仕掛けをしていこうと思ってます。そのためには何が必要かというと――」
「食材や資材よね」
「そう、正解です。それをだれが買いに行くでしょーか?」
「……なるほど。そういうことなの」
ソフィーさんが深くうなずく。
早くも理解してくれたみたい。頭の回転が速い人で良かったよ♪
「一応この後の計画ですけど、天使ちゃんたちには揃いの制服を着てもらって、ローラーシューズを履いて街中に出てもらいます。背中にでっかくお店の看板イラスト背負ってね♪」
「うん、やっぱりアリシアは天才ね!」
またもや絶賛のお言葉いただきましたー♪ 気持ちいい♡
しかしねー、100人分の制服と足りない分のローラーシューズの創作かあ。予備もそこそこ必要だろうし。わたしのMP不足が懸念されます……。
「わたし、制服の設計をするので、服の材料を買ってきてもらいたいです。適当にその辺の人たちに頼んでもいいですか? あ、やっぱりソフィーさんから頼んでください。ついでにローラーシューズの使い方も教えてあげてください」
「私が⁉ できるかしら?」
「大丈夫ですよー。魔力さえあれば歩くのと同じですし。ソフィーさんもすぐに滑れたでしょ? 習うより慣れろの精神で! あ、でも外の道で速度出し過ぎないように注意だけは忘れないでくださいね。えーと、買ってきてほしい材料はこれです」
制服作成、ローラーシューズ作成に使う材料と分量を書いたメモ用紙を手渡す。
「ずいぶん多いわね……」
「お金、あとで精算でいいですか? 今日現金持ってきてないので明日必ず持ってきます」
純金で良いならすぐに渡せるんだけど……。親方に頼んで換金してもらったりしないとさすがにね……。
「もちろんよ。アリシアは制服の設計に注力してちょうだい。ちょっと、あなたたち、手の空いてる人、10人ほど来てちょうだい!」
ソフィーさんがさっそく天使ちゃんたちを集めてローラーシューズの使い方を説明しだす。
よしよし、わたしも設計がんばろう。
やっぱりお店のカラーに合わせて、真っ赤なパンツスタイルよね。ローラーシューズで移動する時にかっこよく見えるのは、細身のスラックスっぽいデザインかな。ローラーシューズは黒で決まりとして、シャツは襟付きで白かな。
うーんと、あとはベスト……も赤で! ベストの背中に『龍神の館』の看板ロゴを入れましょ。純金の龍♪
バンダナも赤かなあ。うーん、なんだか全体的にカラーギャングみたい?
でもこれでいいや。
制服の設計できたーっと♪
まあまあいい感じ? とにかくインパクトだけはある!
じゃあわたしもショーに出演するエリート天使ちゃん3人衆に稽古をつけないとね。あ、まだ名前も知らないや。
「ショーに出るお三方ー。ちょっとお話しませんかー?」
3人には特別なローラーシューズを作るから、足のサイズもしっかり測ってオーダーメイドしちゃうぞー♪
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