第18話 アリシア、親方にお金儲けの相談をする
「お前さんの実力はよ~くわかったよ。俺が教えることは何もなさそうだな!」
親方が豪快に笑う。
そう言われてもなー。まだ親方と対決してないし、わたしのほうはぜんぜん親方の実力がわかってないんですけど。
「そんなこと言わずにいろいろ教えてくださいよー。特許の取り方や商売の仕方も知りたいんですよー」
オリジナル商品の販売経路や販売方法はしっかりと確立させたい。危ない橋はわたりたくないから、もし可能なら親方の伝手を使って、商売の後ろ盾を手にしたいところ。
「安心しろい。そっちはちゃんと世話してやるよ。ミィシェリア様から頼まれてっからな」
親方が親指を立てて良い笑顔で頷いた。
頼もしいね! ミィちゃん根回ししてくれてありがと♡
「ちなみにどんなものを売りてぇんだ?」
「そうですねー。いろいろ考えてるんですけど、あんまり目立ちたくはないのでちょっとずつ様子見をしたいかなとは思ってます」
そう言いながら、ローラーシューズを脱いで親方に手渡す。
「これなんかは需要あるかなとは思ってるんですけどー」
「こいつはなんだ? 靴底に柔らかい車輪……? なめらかな良い仕上がりだが」
「これで地面を滑って移動するんですよ」
親方からローラーシューズを受け取って履き直すと、ちょっとだけ工房の中を滑ってみせた。
「こいつはたまげた!」
「どうですかー? イメージ伝わりました?」
工房を一周してから、親方の目と鼻の先でピタリと止まる。
「すげぇ発想だ。こいつはやられたな」
「魔力駆動なんですけど、需要あると思います?」
「ある。間違いなく需要はある。だが、価格と売り方次第だな」
ですよねー。
そこがいまいちイメージついていないのよねー。
さすが親方。核心をついてくるなあ。
「最終的には商業ギルドに相談することにはなるんだが、俺だったら貴族向けに高額で売り出してぇな」
親方が唸る。
「やりようによっては安く普及させることもできますけど、やっぱり貴族向けが良いんですか?」
もう少し理由を深堀したい。
「こいつぁアイディアが目新しすぎる。最初は単純な移動手段として売り出すより、娯楽品として売り出すほうが良いと思うぜ」
「それはなぜです?」
「こいつの有用性を理解できるヤツだけに販売して、そいつらに宣伝させるほうが価値が高まるってぇ寸法だ」
「なるほど。貴族の方たちの間での宣伝効果。口コミ狙いですか」
斬新な商品過ぎて、パッと見ただけでは価値がわかりにくい。
だから価値をわかってくれる人をパトロン的に捕まえて、その人に宣伝してもらう。なんなら今後の資金援助も込みでお願いするほうが良い、と。親方って見た目とは違って頭いいのねー。
「親方は貴族の方に伝手があったりしますか?」
「さすがにねぇな……。商業ギルドに相談すれば紹介はしてもらえるとは思うが……」
「思うが?」
「高額な紹介料をとられるだろうよ」
まぁ、ギルド運営には必要なことだし、そういうもんですよね……。
比較的お金がかからず、貴族や有力者の注目を集める方法はないかなー?
人の注目を浴びる。
宣伝、CM、訪問販売、対面販売、店頭販売、試食販売、デモンストレーション……デモンストレーション!
これだわ!
「食堂……できれば高級めな料理店の伝手はありませんか?」
「それならなくはないが……」
なぜ? って顔をしているね。
ふっふっふ。我に秘策あり、なのですよ!
「貴族の方が集まるような料理店、できれば人気のお店が良いですけれど、そこの給仕をするスタッフたちにこの靴を履かせるんです」
どう、親方、意味わかる?
「注文を受け、料理を運ぶ。スタッフたちが広い店内をローラーシューズで駆け回るわけです」
「そいつはすげぇ! たしかにそれならいけそうだな!」
でしょー?
貴族の目にも留まる。
この靴は何なんだと尋ねてくる人もいるでしょう。
単純に、目新しいサービスを見たくてくるお客さんも増えるだろうし!
「ちょいと心当たりに声をかけてくらぁ」
「親方! ちょっと待ってください!」
すぐにでも工房を飛び出していこうとする親方を何とか呼び止めた。
「なんだよ! こうしちゃいられねぇぜ。ワクワクすっぞ!」
「いやいや。料理店を回るなら、こちらも現物を見せないと。さすがに言葉だけでは伝わらないと思いますし」
焦りすぎよー。まあ子供みたいでかわいいけどね。
「それならアリシアも一緒にきてくれ!」
「もちろん行きますけどー。親方もローラーシューズ履いてみませんか?」
1人より2人。
デモンストレーションは派手にやったほうが良くなくない?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます