第13話 アリシア、神殿を出る
他に何か話題ー、話題ー。メガネメガネー。あ、レンズ、カメラ!
「このカメラって持ち歩くの邪魔だなー。なんか異世界ファンタジーの定番のアイテム収納ボックスってないかなー。ミィちゃーん、ギフトスキルの壺っていかにも『別空間につながってて無限に収納できます』って構造表記だよね」
ミィシェリア様の追い出し攻撃が一時的に止まる。
やったかっ⁉
「そうですね。アリシアの想像しているものに近いと思います。構造把握のレベルが上がって、正しく構造を理解することができれば創作することも可能でしょう」
いつかはわたしでも創作できるってこと?
だけど今すぐにこのカメラをしまいたいんだよねー。どう見てもこのカメラって、この世界ではオーパーツ的な何かじゃない? 持ち歩いて目立ちたくないなー。チラチラ。
「つーん」
あ、露骨に無視してくるんだー。
ミィシェリア様ってば、冷たいんだー。
ほーほー、それならこちらにも考えがありますよーだ?
「わかりましたー。ではここに取り出したる現像済みの1枚の写真。これをハゲとほかの信徒の皆様にも見ていただきましょう。そしてみんなで、エロかわいいミィちゃんを崇め奉ることにしますね。ではお世話になりましたー。ありがとうございましたー」
ふーんだ。
「ちょっとお待ちなさい……。それはなりません。わたしは断じてそのような顔はしていません。捏造です」
ミィシェリア様、肩つかまないで?
力強すぎ。めっちゃ痛いよ。
「でもー、写真って前世の言葉だと、真実を写すって書くんですよね。つまり、これがミィちゃんの真の姿! ミィちゃんはエロ女神様だぁぁぁぁ!」
でもちょーっとエロ過ぎて刺激が強いから、男性にはその顔を見せちゃダメだよ? あのハゲに見せたら……襲われるよ?
「エロ女神って言うんじゃありません! ……わかりました、もう、わかりましたから。このアイテム収納ボックスを差し上げるので、さっさとカメラを収納してお行きなさい」
ミィシェリア様は渋々といった表情で、壺の中から革製の小さなショルダーバッグを出してくれた。その壺、ギフト玉以外も入ってるんだ?
「おお、これがアイテム収納ボックス! ありがとー!」
わーい、わーい。
異世界チート主人公の9割が所持している(当社調べ)便利グッズだー!
ねえねえ、収納中は中の時間も止まるんだよね⁉ 料理を熱々のまましまったり、生肉を腐らせずに保管したりするー、ラノベで読んだやつだー! わたし、料理はけっこう得意なんだよね。ママに仕込まれてるし、今なら前世の記憶もあるからね! 食堂って料理長に食戟を仕掛けて料理勝負に勝ったら、そのまま乗っ取れたりするんだっけ?
「内部に時間の概念はありませんから、時が止まっていると考えて差し支えないでしょう。ただし、今のアリシアのMP量で扱えるものとなると、無限収納とはいきませんよ。手に持てるものよりもほんの少しだけ多く収納できる程度になりますから、注意してください」
「ほーむ。アイテム収納にはMPを使うんですか?」
知らなかった。
なんでも好きなだけ入れられるものかと。家をまるごと収納したりしてる主人公たちってMPどんだけあるの?
「収納時、というよりは、収納管理のために微量ながらMPを常に消費します。収納空間を維持するためにMPが必要だと思っておいてください」
「なるほどなるほど。つまり、わたしのMPが増えれば、収納空間も広がると」
それはなかなか良いことを聞きました。
それではインスタントカメラと、大切なミィちゃんの羽根と、あとはこの万が一のための脅迫用写真と、この箸置きみたいな木製の羽根は――。
「これはミィちゃんに差し上げます! 羽根やカバンやギフトスキルのお礼です! わたしだと思って大事にしてください!」
毎晩それと一緒に寝てくれてもいいんだよ?
あ、でもくれぐれも変なことには使わないでね?
「変なこととは……。ですが、奉納とは感心ですね。アリシアに女神の加護を」
そう言ってミィシェリア様はわたしの頭に右手をかざした。
ふふ。なんだか女神様っぽいね。
「じゃあ、かなしいけど、これでしばらくお別れね。でも浮気しないでね! すぐ連絡するから!」
ミィちゃんの羽根もあるし! すぐふーふーするね!
「アリシア……もういいです。はい、また祈りに来てください。くれぐれも派手にスキルを使ったりしないように」
「わかってまーす。よっしゃー、Sランクスキルで異世界無双だ!」
「ぜんぜんわかっていない……。本当に困った子です」
へっへっへ、冗談ですよーだ。
ささ、わたしもこれで正真正銘の仮成人!
前世の記憶が混じって複雑な気分だけど、がんばって生きていくぞー!
名残り惜しいけれど、何度も振り返って手を振ってから、わたしはミィシェリア様にお別れを告げる。
神託の間を出ると、外で待っていたハゲと目が合う。愛想笑いをしながら足早に神殿を出た。
んー、これからどうしようかなー。
まずは村に帰ってママに報告してー、それからLv100相当の力ってやつで、サンスのバカをぶん殴ってみるかなー。吹き飛んだら写真撮ってみんなで笑おう! うん、それがいい!
ホントはシールケとルースにギャフンと言わせたいけど、あいつらの取り巻きも相手にすると大事になりそうだしなあ。
あーあ。みんなが巨乳を憎む世界になったりしないかな。そしたらわたしだけモテモテのハーレムになるんじゃない? って誰が貧乳じゃ! 10歳のわりにはけっこう成長してるわっ!
それなら……もしもボックスを創作する? でもなー、構造わからなすぎるし、さすがにMP全部持っていかれて干からびて死にそう……。
(それが汝の望みか)
ん? 今誰かなんか言った? 気のせいかな?
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第一章 アリシアと女神ミィシェリア 編 ~完~
第二章 アリシアと工房 編 へ続く
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