第12話 アリシア、お宝をゲットする
そっかそっか。
創作する前に構造を把握するのね!
確かにその使い方のほうが良さそう!
えーと、まずは木のほうを把握してみましょうかね。
材質はニセアカシア。別名ハリエンジュ。……ハリエンジュって何? 別名とか言われてもまず本物のアカシア持ってこい!
それと……パストルラン王国内に広く分布している。加工しやすい材質のため、家具や食器等、幅広く利用されている。
なるほどね。加工しやすい木ってことね。なんとなく理解。
続いて羽根ー。
女神ミィシェリアの翼の一部。ミィシェリアと常に接続されており、永続する女神の加護を有する。加工方法は参照不可。
また参照不可かあ。レベル上げないとなあ。
しかしこの「常に接続されている」ってなんだろ。無線LANみたいなものかな?
もしもし、ミィちゃん。聞こえますか?
小声で羽根に話しかけてみる。
「なんですか? くすぐったいので羽根に息を吹きかけないでください」
ほう? 無線LANじゃなくて感覚までつながってるんだ?
ならば、コチョコチョコチョー。
「きゃふっ! や、やめなさいって言ってるでしょっ!」
ミィシェリア様が身をよじってくすぐったがっている。
ふむ……なるほどね。
ということは、ここかな? ここがいいのかな? それともこのあたりかなー? ママを5秒で寝かせるわたしの超絶マッサージテクニックをフル活用しませう!
「なひゅっ……はぁふっ……あはぁはぁ……やめ……もうやめ……てっ……んっ」
ふーむ。なかなか寝ないな。
なんだか気のせいか、吐息がエロい……。汗をかいてテラテラしてきてる。……ちょっと記録しておきたいな。そうだ、カメラとか作れないかな……。レンズがあれであれして、んー、だいたいの構造はわかるんだけど、屈折とか専門じゃないからなあ。うー、わからないところは良い感じに魔法制御とかにならないかな。うん。最終結果が印画紙で出るようになればそれでいいや。
なんとなくいけ! スキル:創作!
お、おお? それっぽいのができた。
インスタントカメラ(謎の魔力駆動)の完成だー!
……あ、やば。めまいがする……。うぉ……MP1500も持ってかれてる。材料なしで構造もあいまいだとこうなるのか……。
でもちゃんと撮影さえできれば、結果いいよね?
「ミィちゃん撮りますよ~。こっち向いて~。ハイ、ポーズ!」
「え? 何⁉」
ミィシェリア様は、上気した真っ赤な顔で身体を抱いて息を切らせている。
「はい撮れましたー。1分くらい待ってねー」
出てきたフィルムをパタパタしてー。お、ほら、写ってきた!
いいじゃないのー。なんかわからない謎の魔力駆動だけど、ちゃんとそれっぽく写ってるよ!
「ぬはー。めっちゃ良い写真取れたー! 見てー見てーミィちゃんっ!」
「これはいったい……。なるほど、これが写真というものですか。私の姿が写しとられているのですね……え……私、こんな顔してますか⁉」
「普段はもうちょっと清楚な美人なんだけどね。これはエロい時のミィちゃんだね。お宝ゲットだぜ!」
上気した顔。振り乱した髪の毛。ほんの少し開けた着衣。光る汗。
ハゲの司祭様に見せたら泡拭いて倒れそうだなあ。ハゲに売りつけたらいくら出すかな?
「エロい……。女神に形容してはいけない言葉では……。私、こんな乱れていますか……」
おや? ショック受けてるのかな。
巨乳にエロいは誉め言葉じゃないの? シールケは「エロいねー、かわいいねー」って言われると、うれしそうに男とどこかに消えていくよ?
「それは人によるかと……。ただし、女神には誉め言葉ではありませんからね。他の女神にも絶対に言ってはいけませんよ」
「なーに? エロを独り占めしたいの? さっすが愛の女神様♡」
ミィシェリア様ってば、欲張りさんなのねー。よっ、愛のエロ女神!
「愛の女神とはそういうことではなくて……もういいです。それより、曖昧な構造のものを創作するとどうなるかは体感しましたね」
「はいー。MPがごっそり持っていかれて、もうヘロヘロですよー。MP回復ポーションとかください」
「今回は素材もなく、構造も曖昧という状態でしたから、よくMP1500ほどで完成できた、といったところでしょう。正しい使い方は、構造を把握し、材料を集め、創作する。この手順ですからね。覚えておいてください」
「あとはこの羽根があれば、女神の加護で絶対成功、でしょ?」
ふふーん。
女神ボーナスバンザイ!
まああとは、わたしの高いLUK≪幸運≫ステータスがものを言うわけよね。
「それと羽根は返してくださいね」
え、絶対嫌だなあ。
好きな人の一部をずっと持っていたい。そんな乙女心もわかってほしいな?
「アリシアがほしいのは女神の加護でしょう。だまされませんよ」
「ちがうよー。それも含めてミィちゃんの魅力だよぉ。悪用しないからー。お願いお願ーい! もうくすぐったりしないからー」
この通りだから! お願いします!
必殺ジャンピング土下寝。ウネウネー。ついでにパンツ覗きー。
「……わかりました。特別ですからね。大切に保管してください。くれぐれも誰の目にも触れないように」
「わーい。ありがとー。ミィちゃん様大好きー。毎日この羽根に向かって礼拝しよう♡」
これからミィシェリア様がいつも一緒だと思うと、すっごく気持ちが軽くなる。これが女神の加護なのかなあ。
「ではこれで追加のスキルも解放しましたし、そろそろ帰ってもらえますか?」
ミィシェリア様がわたしを追い出すように出口のほうへとぐいぐい押してくる。
もう帰らないとダメかあ。やだなあ。他に何か話題は……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます