第6話 パターン:赤
「行け、若き勇者の精子Aよ!!!
ここは、もう、正面突破しか道は無い」
「あと、蛇足だが、自分の体を心眼で見て見なさい。
もう、随分、体も大きくなったではではないか!これなら、多分、大丈夫だよ。
【賽は投げられたのだ】、行け、行け、行け、突き進むのだ」
「ハイ、スペルマ大王様」
このようにして、約一千万匹以上もいる、大精子軍団の「ファースト・バタリオン」に向かって、たった二匹の精子が、突進して行ったのだ。
◆ ◆ ◆
この様子を先ほど以来、液晶画面等を、見つめ続けていた明智美桜は大声で叫んだ。
「先生、パターン:赤です!!!」
「いよいよ、精子同士の最終決戦の始まりなのかもしれないなあ……」と、田中教授は、最初からこの事を予想していたように、呟いた。
まるで、自分自身を納得させるように……。
そして、何と事もあろうか、下着姿のみで軽くガウンを羽織っているだけの絶世の美人の明智美桜のガウンをまくり上げ、またも下着をずらし始めたのだ。
「先生、つい先ほどしたばかりでしょう……。それに、パターン:赤は、精子の最終決戦だと言われたばかりじゃ無いですか?
こんな一番大事な時に、一体、何を考えておられるのですか?」
「最終決戦だからこそ、こちらも余計に、猛烈に、熱意が入るのだ。
どうせ、もう婚約もしたのだし、今度は後ろからだから、ちゃんと行いながら、同時に液晶モニターも見る事ができるのだ。
それじゃ、遠慮無く、入れさせてもらうよ。いいよね。
美桜チャンに、【入(はい)る、ヒットラーだ!】」
と、冗談とも、本気とも着かない言葉を吐いたのだ。
確かに、その堅さや長さは、40歳前後の年齢の割には、とても尋常では無さそうだ。
「痛い、もっと優しくしてよ……」
「うるさい、それは、もうこちらの勝手だ!!!グダグダ、言うな!!!」
力一杯、グイグイ入れられながら、明智美桜は、この田中教授は、色情狂か、本物の○○か、本当に、自分でも理解が出来かねて来ていたのだ。
果たして、アインシュタイン以来の超天才なのか、本物の○○なのか?
何とかしてこれを確かめなければ、今度は、自分の身にも危険がいずれは及ぶのだ。幸い、自分の友人が、Z大学医学部にいる。
彼女は、精神医学が専攻だった筈だ。
彼女が答えられなくても、その上司には、日本屈指の精神科医もいる。
今回は何とか、うまくやり過ごして、彼女の意見も聞いてみようと思ったのだ。
◆ ◆ ◆
精子最終決戦は、スペルマ総統の、適切な指揮により、確実に、始まりつつあった。約百万匹単位で構成される、第一大隊と、第十大隊(隊長は交代済み)が、まず先発隊として向かって来た。
合計約二百万匹である。
その時である。スペルマ大王は、叫んだ。
「精子Aよ、一子相伝の奥義のその二だよ。良く、見ておけ!!!
『スペルマ鞭毛(べんもう)波動打』だ」
「ハッ!!!」と、音速を超える鞭毛(べんもう)の動きにより、衝撃波にも近い、波動打が放たれた。
これにて、先発隊の、第一大隊と、第十大隊が、見事に大混乱を来した。
その間を縫って、精子Aとスペルマ大王は、先を急ぐ。
しかし、スペルマ総統は、次なる作戦、第二大隊、第三大隊、第八大隊、第九大隊
の四大隊の緊急派遣を命じた。
この大隊は、実に統制が取れている。
スペルマ大王が、『スペルマ鞭毛(べんもう)波動打』を何度も連続して発出しても、大隊の列は全く乱れ無かった。
これは、手強い。
これでは、きっと、この四大隊で、進撃は食い止められてしまうのだ。
しかし、ここを突破しなければ、勝ち目は全く無い。
「スペルマ大王、どうすれば?」
「【ワルキューレ作戦】を思い出せ!」
「ワルキューレ作戦とは、何ですか?」
「ワルキューレ作戦とは、「旧ドイツに実在した将校クラウス・フォン・シュタウフェンベルク大佐が考えた」かっての、独裁者アドルフ・ヒットラー暗殺計画の事だよ。
映画にもなったと聞く。
歴史的には、結局、失敗したのが、異常な独裁者に立ち向かったドイツ軍人の作戦を真似るのだ。
いいか、スペルマ総統に悪意を抱く精子らも、数多くいると聞く。この内の、数十万匹でも、見方に引き入れる事ができれば、正面突破も不可能では無かろう」
「そうですか?」と、精子Aは、力無く答えたのだ。
「でも、どうやって」連絡を取るのですか?」
「テレパシー、つまり、精神感応で、仲間を募り、ゲリラ戦で戦うのだ。即、テレパシーを発せよ!!!」
「やってみます。
スペルマ総統に、異論の有る勇敢なる精子達よ。この我が尻尾の元に参集せよ!!!」
すると、どうであろう?
あっという間に、数十万匹以上の精子達が、応援に来てくれたではないか。
「これで、うまく行くかもしれない」と、いつのまにか随分と大きくなった、若き精子Aは、自信を取り戻し始めた。
「いいか、皆には、「フィギュア4回転キック」を、教える。これで敵陣を突破しようでは無いか」と、精子Aが叫ぶ。
「オー」と、鬨の声が、全方向から、上がった。
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