4頁 赤チン
夜、ランプの灯の周りを大きな蛾が飛んでいます。
小山上等兵の話しは続きます。
夕食後、小山上等兵は高山サン(看護婦)からコップに入った「赤い水薬」を渡されたそうです。
その薬は消毒液の様な匂いがしたそうです。
「薬ですか?」
と尋ねると、高山サンは黙って頷(ウナズ)いたので、
「すいません。頂きます」
小山上等兵は「赤い水」を一気に飲み干したそうです。
コップを渡すと高山サンはニッコリと笑って医務室に戻って行ったそうです。
すると何処からか声が聞こえて来たそうです。
「薬は試しに使っている。薬を呑んで生きたヤツもいれば、死んだヤツもいる」
小山上等兵はその声を聞いて少し不安になったので、巡回して来た河村サン(看護兵)に水薬の事を尋ねたそうです。
「すいません。あの赤い水薬は何だったのですか?」
すると河村サンは、
「赤い水薬? ああ、あれは薄めたアカチンだ」
と応(コタエ)えたそうです。
小山上等兵はガッカリして、
「アカチン?・・・そうですか。アカチンだったのですか」
と言って河村サンをため息混じりで見詰め、
「アカチンとは何にでも効くのでしょうか」
と再度尋ねると、
河村サンは一言、
「効くと思って飲めば、効かぬ薬はない!」
そう言い残し、去って行ったそうです。
何と言う『精神論の戦争』なのでしょう。
小山上等兵は、コレでは日本軍は勝つわけがないと思ったそうです。
つづく
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