683 広げるべき自身の視界

 ニルさんのバンドに引き続き、クリスさんとの共演も果たす私だったが。

その際、会場が私のお陰で盛り上がったと感じて下さったのか、クリスさんとの共演は、なんと全曲一緒に演奏する事に!!


その結果は!!(*'ω'*)どきどき


***


 ……ってな感じの曲を演奏してたんだけど。

一応、崇秀との約束があるので、3曲目である『DEI!! Die!! die!! fly』の途中で一気に着物を脱ぎ捨てて『例のコスプレ衣装』に早変わりしてみた。


すると……アメリカ人って言うのは、こう言う珍しい物が好きなのか妙に盛り上がる。


まぁ敷居の高い此処『クロコダイル・シアター』で、こんな馬鹿な真似をするのは、怖い物知らずの私ぐらいのものだと思うけどね。


ははっ……


でも、思った以上に盛り上がったから、アリかな?

いつの間にか、ライブスペースも、ほぼ満員になってるし。

盛り上がりが最高潮になったぐらいで、ステージに駆け上り『モッシュダイブ』を敢行してくれるお客さんも続出してくれてる。


なので、まぁまぁ……私、頑張りましたよ。


……だってさぁ。

『例のミニスィッチ』をONにしたら、崇秀と一緒にPLAYしてる感覚だから滅茶苦茶疲れるんだよね。


ホント『私、お疲れ様』って感じだね。


***


 ……そうやって、一旦ライブは終了。

盛り上がってくれてるお客さんに手を振りながら、私はクリスさん率いる『X-DESIRE』さん達と楽屋に引き上げて行く。


GUILDライブ。

全米45箇所ツアーのオープニング・アクトとしては、上々の滑り出しだね。


良い感じ♪


***


 ……そうやって楽屋に戻ると。

初めて訪れた時とは大違いな程の歓迎ムードで、皆さんが私を迎えてくれた。


いやいや、これは、本当に嬉しいですね。



「やってくれたなぁ、クリス!!まさか、全曲、鞍馬に弾かせるとは思ってもみなかったぜ!!これで、またGUILDランキングに差を付けられたなぁ」

「なに言ってやがるんだ、テメェは!!そのつもりで、最初から鞍馬をステージに残したクセによぉ。……よく言うぜ」

「まぁ、確かに、そのつもりはあったけどよぉ。まさか、全曲行くとは思わなかったぜ」

「ノリだよノリ。つぅかニル『クロコダイル』が、こんなに盛り上がるのって、ホント久しぶりだな」

「まぁなぁ。地元のバンドとしちゃあ情けねぇ話なんだが。今回のこれは、全部、この鞍馬のお陰だな。そこだけは間違いねぇ」

「全くだ。地元のバンドより盛り上げるなんて、コイツはトンデモナイ奴だよ。最高だったぞ鞍馬!!」

「ははっ……そんなそんな」


うぅ~~~、嬉しいな♪

泣いちゃいそうな位、本当に嬉しいよ。


だってさぁ、私って、本来は存在しない人間でしょ。

そんな人間を、皆さんが認めてくれてるんだから……なんて言うのかな、少しは私も必要とされて『生きてるんだなぁ』って思える。


それと同時に『此処に私が存在してるんだなぁ』とも思える。


感動だよ。


……一生懸命やって良かったよ。



そんな感動に浸っていた時……



「ちぇ……100位圏内からのランク落ちかよ。全くやってらんねぇな」


っと言って、ジェニーさんが楽屋から機嫌悪く出て行った。


恐らく、オープニング・アクトが上手く行かなかったのがランクに反映したのか。

それとも、後半の盛り上がりと比べられての評価かなのは解らないけど……ジェニーさんの機嫌は非常に悪かった。


私……なんて無神経な事をしてしまったんだろう。


自分の身に起こってる事だけを喜んで、ジェニーさんが『オープニング・アクトを上手くやれなかった』と思ってる事に対して、なにも気遣いもしてあげられなかった。


最悪だよ……私。



そこに……



「鞍馬さん。単独でアンコール、至急2曲お願いします」

「へっ?ちょ……単独って。私、ベースか、三味線しか出来ませんよ。歌なんか、全く唄えませんよ」

「えぇっと……兎に角、会場が収拾が付かない状態なんで、そこを、なんとか早めにお願いします」

「えぇ!!ちょ、ちょっと!!そんな、なんとかって言われても……」


単独でのアンコールって言うけど……ベースだけでどうするのよ?


なにしろって言うの?



「うん?鞍馬、どうした?」

「あっ、あの、私、ベースが弾けるだけなんで、アンコールと言われても、他にはなにも出来ないんですよ」

「あぁ、そう言う事か。……だったら、三味線を使って。まずは俺等に弾いてくれた『じょんがら節』とかをやってみたらどうだ?」

「あっ、あぁそうですね。……でも、後、一曲は……」

「なにか、他には弾けないのか?」

「あぁっと、一応、横浜アリーナで崇秀が演奏した『帰郷』なら弾けますね」

「『帰郷』かぁ。……俺の低音の声や。『X-DESIRE』の所のヴォーカルじゃあ声が合わないから、ちょっと無理だな。……そうだなぁ。誰か『帰郷』唄える奴は居ないもんか……」

「おい、ニル!!ジェニーの奴なら、あの声が出るんじゃねぇか?それにアイツなら、仲居間さんの曲は全て憶えてる筈だぞ」

「あぁ、そうだな!!……良し鞍馬。兎に角、俺達でジェニーを説得するから。オマエはステージに上がって、まず『じょんがら節』を弾いて来い。その間に、なんとかしてやるからよ」

「あぁ、はい。わかりました」


大丈夫かなぁ?


此処まで来て、お客さんに嫌な想いをさせたら、今まで盛り上がったライブが、全てが台無しだよね……


『水泡に帰しちゃう』


それとも……これって、私が、ジェニーさんを気遣って上げられなかった……罰?


あぁでも、ジェニーさんの件と、見に来てくれてるお客さんは関係ないよね。


うん!!

だったら今更ゴチャゴチャ考えても、どうにもならないよね。

此処はニルさん達が、ジェニーさんを説得してくれる事を信じて、なる様になれ!!


私は、余計な事は一切排除し『無心』になり。

今回の単独演奏の相棒である『しゃみ太=三味線太棹』を携えて、再びステージに上がった。



「「「「「おぉぉぉおぉぉぉおぉぉ~~~~鞍馬ぁ~~~!!お帰りぃ~~!!」」」」」

「「「「「待たせ過ぎだぞぉぉ~~!!アンコールに向けて腹ごしらえかぁ?」」」」」

「鞍馬姫えぇぇぇ~~~!!お待ちしておりましたぞぉ~~!!」

「鞍馬姫ぇぇぇぇ~~~!!」

「「「「「鞍馬姫?……おぉ!!」」」」」

「「「「「鞍馬姫!!……鞍馬姫!!鞍馬姫!!鞍馬姫!!鞍馬姫!!鞍馬姫!!」」」」」


えぇ~~~!!

アンコールでステージに上がっただけなのに、またしても変な渾名付けられたぁ~~……


あぁでも、今度のは『姫』って付いてるから……アリかな?


……アリだね。



「皆さん、お待たせしました。あの、1人じゃ大した物は出来ませんが。もし宜しかったら、お時間の許す限り。最後までお付き合い下さい」

「「「「「おぉぉおおぉおぉおぉぉぉ~~~!!」」」」」

「……では、僭越ながら、一曲目『じょんがら節』を行かせて頂きます!!……ハァ~~~~ハッ!!」


-♪-♪-♪-♪-♪-♪-♪-♪-♪-♪-♪-♪-♪-♪-♪-♪-♪-♪-♪-♪-♪-♪-♪-……



「ハイ!!」


-♪-♪-♪-♪-♪-♪-♪-♪-♪-♪-♪-♪-♪-♪-♪-♪-♪-♪-♪-♪-♪-♪-♪-……


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】

最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>


1つの事象が上手く行ったからと言って、全てが上手く行ってるとは限らない。

今回は、その辺りにスポットライトを当ててみて。

眞子の成功の裏側で『ジェニーさんのあまり上手く行かなかった心理状態』と『単独アンコール』っと言う試練を入れてみましたぁ♪


まぁ、普通なら、此処まで気にしなくても良い所なのですが。

この遠征は崇秀に頼まれての遠征なだけに、様々な場面で眞子が気を遣わなきゃいけない所がありますので、この様なお話を書かせて頂きました。


これにより『人間的な成長』があるでしょうし『技術的な面』や『精神的な面』の成長もあると思います♪


さてさて、そんな中、単独でステージに上がり。

まずは三味線でじょんがら節を弾いて、ジェニーさんの登場を待つ眞子なのですが。


果たしてジェニーさんはステージに現れてくれるのか?


次回は、その辺を書いていきたいと思いますので。

良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾

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