679 まずは自身の本番前の実験

 共演者と和解後、ジェニーさんに対する性的差別に首を突っ込んだりする私だったが、これには、ある思惑があっての行動。


それは、共演者と音合わせもせずに『自身の即興力を上げる実験』


上手く行くかな?(´・ω・)?


***


 此処は『クロコダイル・シアター』


先程も言った様に西海岸でも屈指のライブハウス。

観客の皆さんも、普通のライブハウスとは比べもにならない位に目が肥えていて、相当レベルの高いライブじゃないと、中々観客は盛り上がってはくれない箱。


特に、その盛り上がりについての問題として挙げられるのが『このライブハウスを囲う様に、カフェが設立されている変わった造りの店構え』にある。


通常のカフェ同様、カフェエリアを使うのは、基本的に飲み物代だけで無料なんだけど。

まず此処では、サービスの為に、今現在行なわれているライブがモニターで映し出されており、会場内の様子が見える様には成っている。

ただそれ故に、併設するカフェからライブスペースに入るには、当然、別料金を負担しなきゃならない。


っとなると当然、モニターを見ているカフェのお客さんは、バンドのレベルが相当高くないとライブスペースには移動すらしてくれない。


こんな感じの特殊なライブハウスなので、演奏を見に来てるお客さんだけじゃなく。

ただ単に『カフェとして利用』されているお客さんも数多いので、正直言えば、演奏者にとっては、かなりシビアなお客さん達だと言える。


……そんな厳しい現状の中、今日の1バンド目のジェニーさん率いる『Jany-Alien』さんのライブが始まった。


だけどね。

さっきも言った理由から、ライブエリアに見に来てくれているお客さんの入りは半分ぐらい。


この現象自体が、このライブハウスのレベルの高さを証明されており。

それは同時に、100位圏内のGUILDランカーですら厳しい現状だと証明されている。


因みにだけどね。

『Jany-Alien』さんの演奏は、日本で活躍中のメジャーバンドなんかとは比べ物にならないぐらい上手いんだけど、これで恐らくはアメリカじゃ普通レベル。

音楽に触れ合う機会が多いアメリカ人の基本水準に成るレベルなんだろうと考えられる。


なんと言っても、この上手い『Jany-Alien』さんですら、まだマイナー契約にすら行き着いてないんだからね。


それだけレベルが高くても、ライブハウスの基本水準が高いので厳しい現状は変わらない様だ。

これにより、アメリカには、矢張りゴロゴロと演奏の上手い人が居る事も証明される。


でも、こう言っちゃあなんだけど、基本的には、結構、盛り上がってるんだよ。

ジェニーさん、綺麗に高音を出てるし、演奏自体もかなりの高レベルですからね……私個人としては、凄く良いと思うんだけどなぁ。


***


 ……こうして『Jany-Alien』さん達の出番が終了した。


でも、ヴォーカルのジェニーさんは、自分の思い描く様な良い感触を掴めなかったのか、まるで、なにもかもが失敗ライブだったかの様に、自分の唇を強く噛み締めていた。


心底口惜しそうに顔をしながらも、気落ちしたまま、肩を落として楽屋に戻って来る。

全米GUILDツアーの『オープニング・アクト』を任されてただけに、その重責を担うほどの満足いく結果が出なかったのだろう。


でも……こう言う言い方をするのは、なんなんだけど、それは仕方が無い事だとも思える。

お客さんは、お金を払って見に来ている以上、盛り上がるのも、盛り上がらないのも、お客さんの自由。

日本のミーハーな馬鹿ファンの様に、下手でもなんでもキャーキャー言ってくれる様な愚かな観客は、此処には居ないんだからね。


みんな、それだけ本気で音楽を聴きに来てる証拠だと思えた。


そんな気落ちするジェニーさんを見ながら。

私は、彼等のライブの間に、崇秀との約束を果たす為に、指定された『着物』に着替えて準備を整えていた。


……さて、ジェニーさんには悪いけど、本当の意味で『格の違い』って奴を見せ付けてあげるよ。


私の出番は、これからだからね。


ふふっ……愉しみ。


……っと言っても『Dio-king`s』さんの時も『X-DESIRE』さんの時も、バンドが演奏する全曲を一緒に弾く訳じゃない。

さっきニルさんや、クリスさんが指名した様に、私は相手方から指名して貰った曲だけを弾かせて貰うのが今回の仕事。


だから今、演奏を開始したニルさん率いるバンド『Dio-king`s』さんでは、約束通り『鞍馬』以外は弾かない。

それは、クリスさんのバンドの『X-DESIRE』さんの時でも同じで『DEI!! Die!! die!! fly』と『Spitfire』しか演奏はしない。


……でもさぁ、こう言っちゃあ、なんなんだけどさぁ。

ニルさん所のバンドのベースの人、あんまり上手くないね。

聞く人が聞けば、結構、ベースラインが崩れてるのが、よく解るから、会場の温度が、ジェニーさんの時より幾分下がって来ているように思う。


けど、これは流石に、ちょっと『戴けない雰囲気』だ。


このままじゃあ、豪い事になっちゃうよ。


……って事なんで、これは、もぉ支援すべき状況だよね。


うん、だからさぁ。

去年の夏のライブで崇秀がやってた、あれ……やっちゃっても良いよね♪


確か、崇秀曰く『ライブ中の演奏者が下手だった時、バックアップの人間が『勝手に弾いても良い』って暗黙のルールがGUILD内には存在してる。

なら、次の曲の『One night fool』は、私の大好きなで得意なパンク系の曲だから、此処等辺で私が代わりに演奏しちゃっても良いって事だよね♪


私の腕だって、崇秀には遠く及ばないけど、今、ベースを弾いてる人よりは幾分マッシだと思うからね。


だから、やっちゃうもんね。



「ふふっ……ミニスィッチON……『音楽共鳴・レゾナンス』」


いけえぇぇえぇ~~~!!


いっちゃええぇぇぇ~~~~~!!


----♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪--♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪-----♪♪♪♪♪♪♪♪----♪♪♪♪



重低音の渇いた『79 Sting -rayちゃん』独特の音が会場に響き渡り、一瞬にして『狂気の渦』が巻き起こる。

そして……だらけたきった空気が、一気に張り詰めた様に凍りつき、観客達は目を白黒させながらステージを凝視している。


そぉ……私が自信を持って、こんな無茶をやった理由は、これ♪

崇秀が、アメリカツアー行きの餞別代りに、唯一私に教えてくれた技。


『音楽共鳴・レゾナンス』


これは『ミニスィッチをON』にする事で、私と、崇秀を繋ぐ『絆』を得て、まるで崇秀が私の横で演奏してくれてる様な感覚に陥る技。

そして、この狂気に満ちた音を共鳴と共に作り出す。


更には此処から、崇秀と深い共鳴をする事により、私は、彼に教えて貰った全てのベースの技術を、完全に開放する事が出来る。

そこに今回は、遠藤さんが弾いてくれたベースの音を混ぜ込む事によって『狂気』に『更なる狂気』を足した様な音色が『狂気の旋律』っと成って、完全に会場を狂気で支配して行く。


これはきっと、私と、崇秀にしか出来無い『究極の絆技』だ。


あぁでも……


これ、愉しいなぁ……


ダメだ……


止められないぐらい……愉し過ぎる……



もっと、もっと……


もっと私に弾かせてよぉ……



愉しくて、狂いそう……



もっと……



弾かさせて……


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】

最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>


眞子が、この実験に乗り出した切欠は、崇秀や奈緒さんが言った『嘘の才能』だったのですが。

この実験が成功する確率を、眞子が高く感じしていた理由は、崇秀に教えて貰った『音楽共鳴・レゾナンス』だった訳ですね。


そりゃまぁ、そこがあれば、その成功率は飛躍的に高くなりますもんね(笑)


さてさて、そんな中。

少々崇秀の狂気や、遠藤さんの狂気に飲み込まれがちな眞子なのですが、これ以降は、一体、どんな行動を取るのでしょうか?


次回は、その辺を書いていきたいと思いますので。

良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾

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