678 眞子が本番前にコチャコチャしてる理由

 楽屋内で三味線を弾き。

共演者からの称賛の声を浴びたのは良かったのだが。

その中で、ジェニーさんと言う人が、GUILDランクが低い事と『おかま』と言う事で差別的な発言を受ける。


それを見てられなかった私は、ジェニーさんを連れ出して……


差別は断固として反対なのです!!( ˘•ω•˘ )


***


「さぁ、ジェニーさん。どんな感じの女の子になりたいですか?」

「えぇっと、困ったなぁ。いや、正直言うとね、鞍馬ちゃん。これって……キャラクターなんだよね。だから、俺自身は『カマ』でもなきゃ。『女に成りたい』って訳でもないんだよなぁ」

「えっ?嘘?」

「ごっ、ごめんな。さっきは雰囲気的に言い出し難かったんだけどさぁ。いや、実を言うとさぁ。俺ね、昔から『ボーイ=ジョージ』とかに憧れててね。そんで、ちょっと化粧の真似事みたいな事をしながら、こんな格好してるだけなんだよ」

「あっ……そうなんですか。……早とちりして、ごめんなさい」


早速、やっ・ちゃっ・たよ。

アメリカに来て、まだ2時間程しかたってないって言うのに、イキナリこれですか?


なんか、幸先が不安になってきた。



「あぁでもさぁ。本当に俺なんかを、そんなに可愛く出来るものなのか?」

「あぁまぁ、特別自信がある訳じゃないんですけど。ちょっとぐらいなら上手くは行くと思いますよ」

「じゃあ、試しにやって貰っちゃおうかな」

「あぁ、全然良いですよ。でも、そのメイクをしたら、普通には帰って来れなくなるかも知れませんよ」

「それ……どっ、どういう事?」

「えぇっとですね。実は、私の知り合いに、武藤要さんってプロのメイキャップ・アーティストの方が居るんですけどね。私が今からやるのって、その人の技を盗んだ物なので、結構、バッチリ嵌ちゃうかも可能性があるんですよ。……だから、危険と言いますか」

「あぁ、それって、ちょっと怖い話だね。……でもさぁ、アイツ等を見返せるなら、1回ぐらいしても大丈夫なんじゃない?」

「あぁ、じゃあ、試しにやってみますか?責任は取れないですよ」

「まぁまぁ、取り敢えず、お試しって事で」


良いのかなぁ?


……本当に知らないよ。

『責任は取らない』って、ちゃんと忠告しましたよ。


……っとか言いながら、我欲に従ってやってしまう自分。


ダメな人間ですね……私って。


***


 あっ……ヤバイ、また、やっちゃったかも知れない。

ジェニーさんが、私の思ってた以上に良い感じに仕上がっちゃったよ。


ヤバイぐらいに可愛くなっちゃったよ、この人……どうしよう?


でもでも、私は、最初から危険だって言ってたじゃない。


だって、このジェニーさんってね。

元々顔が、かなり丸顔でゴツゴツした頬骨が出ててなかったし、目も比較的パッチリ綺麗な二重瞼。

まぁ鼻のラインに関してだけは明らかに男の人なんだけど。

こんな程度の誤差なら、詐欺メイクを上手く使えば簡単に誤魔化せるたりするんだよねぇ。


あぁ……ヤバイヤバイ。


これは、またまたやっちゃったかな。



「あっ、あの、一応、完成はしたんですけど。……あまり、鏡は見ない方が良いかも知れませんよ。ソレをお薦めします」

「なんだ?失敗したのか?」

「いえ、その真逆なんですよね。……鏡を見ると、本当に帰って来れなくなるかも知れませんよ」

「んな馬鹿な。……鏡貸してみ」

「あっ、ちょ……」


本当に知らないよ……


知らないからね……



「えっ?なっ、なっ、なっ、なにこれ?」

「えぇっと……俗に言う、新生ジェニーさんって奴かな?ははっ……ははっ……」

「あの、鞍馬ちゃん。俺って、こんな顔してたっけ?」

「あぁ、はい。最初のメイクを落とした時に、ちょっと『ヤバイ事になるかなぁ』とは思ったんですけどね。ついついノリでやっちゃいました。……だから、変な方向に目覚めないで下さいね。お願いしますよ」

「あぁ、大丈夫。俺は、元々そう言う気が無い訳でもないから」

「そっ、そう……ですか」


じゃあ、良いのかなぁ。


それとも……あまり良くないのかなぁ?



「あぁでも、なんか……いや、やめておきます」

「どうしたんだ?まだ、なんかあるのか?」

「いえ。こう言ってはなんなんですが『服とメイクが合ってないなぁ』とか、ちょっと思ったんですけどね。流石に、それはヤリスギですよね」

「あぁっと、例えば、鞍馬ちゃんなら、どうする?」

「あぁまぁ、ちょっと可愛い系にしたら『誰にもバレないかなぁ』とかですかね」

「それって、ひょっとして、やるべきかなぁ?」

「えぇっと、私的には『やめておきましょう』って言って置きますね。多分、本当に帰って来れなくなる様な気がしますんで」

「……だね。確かに、それは危険だね」

「ですね」


……って訳で。

即座に女子トイレを退去して……メイクを終えたジェニーさんを連れて、楽屋に戻ってみましたぁ。



「あの、只今、戻りました」

「あぁ、鞍馬。お帰り、お帰り。……っで、ジェニーの奴は、どうなったんだ?」

「はっ、は~~~い」

「はい?……オイオイ、嘘だろ?」

「いや、これが何故か本当なんだよな。自分でビックリする程なんだよな」

「……オマエ、人生の路線変更したら」

「あぁ、さっき、鏡で自分の姿を見た時、正直それも考えた」

「だろうな」

「おっ、おぅ」


驚いてるねぇ。


でも、出来れば無理に変な方向には行かないでね。

今の所、ジェニーさんの心は男の人のままみたいだからさ。

そっちに進んじゃったら、苦労する事が多い人生になるから、絶対ヤメテ下さいね。


本当の本当に、責任取れませんよ。



「あぁそうだ、そうだ、鞍馬。それはそうとして、例の曲な。ウチでやる事になったんだが。オマエは、それで良いか?」

「えっ?……あぁ、はい、曲の話ですね。それなら私は、どなたとでも構いませんよ。私で良ければ、精一杯頑張らせて頂きます」

「あぁ、その代わり。ウチのバンドで『DEI!! Die!! die!! fly』と『Spitfire』が決定したんだが、それもOKか?」

「あぁ、はい。勿論、大丈夫ですよ。喜んで引き受けさせて貰います」


笑顔笑顔。


人と人との関係では、好感度は、かなり重要なポイントだからね。


特に初対面の方には笑顔を振り撒かなきゃね。


……でも、多分、私の場合は、また直ぐに破れる『張子の虎』かも知れないけどね。


良いもん!!


破れたら、また張るもん!!



「あのよぉ、鞍馬」

「あっ、はい、なんですか?」

「鞍馬の、その顔って言うのも、メイクで補ってるものなのか?」

「あぁ、あの、一応ですね。全体的にナチュラルでは仕上げてますが、ほぼスッピン状態ですね」

「って事は……さっきまで、あまり気にしてなかったんだが。落ち着いてみると、オマエって、滅茶苦茶可愛いな」

「そうですかね?」


うん、知ってますよ。

ちょっとナルシストなので、ちゃんと自分の事は必要以上に理解してますよ。


だって、眞子は、あれですよ。

ニルさんが神だと崇める崇秀が認める可愛さなんだよ。


中身は、どうにも腐ってるらしいけど……(;´д`)トホホ



「なぁ鞍馬」

「あぁ、はい」

「オマエ、良かったらさぁ。ウチのバンドに入らないか?ウチはGUILDランクも58位って良い位置に付けてるしよぉ。オマエのベースや、三味線が、そこに加われば、ウチのバンドは、もっと良くなると思うんだよな」

「ちょっと待て、ニル!!流石に、それは黙ってられないぞ。俺も、鞍馬をウチのバンドへどうかなって、今、誘いを考えてた所なんだからよぉ。そう言う抜け駆けは卑怯だろ」

「いやまぁ、確かにそうだな。今回ばかりは、その意見に同意する。誘っては見たものの。ウチのバンドで、鞍馬の才能や魅力を引き出せるかどうかは自信が無いからなぁ」

「まぁ、かくゆう俺も、そこを悩んで、言い出せなかったんだがな」

「だよな」

「だな」


えぇ~~~、私、まだ一回もベース弾いてないんですけど。


ベースの腕じゃなく、所詮は顔なの?

所謂1つの『客寄せパンダ』って奴ですか?

私は、顔だけの存在なのですか?


もぉ泣きますよ。



「あの、申し訳ないんですけど。一応、3月から、奈緒さんとの全米10箇所ライブに参加する可能性があるんで、今の所は、どこのバンドにも所属しない所存なんですよ」

「あぁ、そうなのか?あぁでも、やっぱり、一応、誘っておくな。俺は『Dio-king`s』のニル=グレイ。なぁ鞍馬、別にバンドには無理に入らなくても良いから、気が向いたら、まずはライブにでも遊びに来てくれよ」

「あっ、はい。ありがとうございます。ニルさん、必ず遊びに行かせて貰いますね」

「あぁじゃあ、俺も誘いだけは入れとくな。俺は『X-DESIRE』のクリス=ハーディGUILDランクは49位の50位圏内だ。ニルとは昔からの悪友なんだが。良かったら、コッチにも遊びに来てくれな」

「あっ、はい。喜んで」


ふふっ……さっきは文句を言ったけど、やっぱり顔が可愛いって得だね。

こうやって、みんな親切にしてくれるし、基本的に可愛がって貰えるもんね♪


チヤホヤされるの大好き♪



「すみません。本番入りますんで『Jany-Alien』さん。お願いします」


来た!!来た!!

話が長引いただけに、完全リハ無しの一発勝負……ぶっつけ本番!!って奴が。


この状況、ある意味、私の理想通りに事が運んでくれてので楽し過ぎるよ。


実は私ね。

この『ぶっつけ本番』を狙って、わざと話を長々としたり、ジェニーさんにメイクをしたりしてたんだよね。


……いや、って言うのもね。

これは、ちょっとアリーナで崇秀に言われた事を深く考えてたら、フッと、ある事を思い付いたんだけどね。

私って単純に言えば、人の演奏を見れば、一応、最低限度ではあるんだけど……曲は弾けるじゃん。


……って事はね。

これを=関係に置き換えた時、相手のバンドメンバーに居るベースの真似をする事で、そのバンドのクセを捉えられる事も不可能ではないんだよね。


だからね。

強ち奈緒さんや崇秀の言った『リハも、音を合わせるのも必要ない』って言うのも、考え様によっちゃあ頷ける内容になってくるんだよね。


まぁまぁ勿論、これが正しい理論だとしても『変な慢心』をしたい訳じゃないんだよ。

まずにして、そんな事ぐらいで『慢心』したら凄い怒られるからね。


でもね、今日みたいな、こう言う時間がなくなった場合だと、私が前以て相手方のライブの映像かなんか見て、相手のクセさえ調べて置いたら、その場で速攻で演奏を合わせる事も可能になる。


要するに、緊急事態に強くなれるんですよ。


まぁただ、これについては、一回のリハするよりも、もっと手間の掛かる作業ではあるんだけど、もし今回のライブで上手く演奏出来れば『有用な技』には成り得ると思うんですよ。



……っとまぁ、そんな理由を含めた上で、今回は、早速チャレンジしてみた訳ですね。



……現状は、そんな、ちょっといい加減な感じなんですけど。


此処からは、問答無用でライブはスタートしますです。



……失敗したら、ごめんね。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】

最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>


眞子が、なにやらコチャコチャしてた理由は『新たなる挑戦』でしたね。


まぁ本来、こう言う事は、ある程度以上の確信を持ってからすべき事なのですが。

眞子自身、かなり本番に強いと言う面と、一応、その辺を考慮した上での行動なので、後は成功を祈るばかりですね。


さてさて、そんな中。

眞子の思惑通りにライブでの演奏は上手く行くのか?


次回から、そのライブの本番が始まりますので。

良かったら、その結果を見に来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾

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