676 鞍馬と鞍馬の関係

 アメリカに到着し、その足で本日のライブハウスに行ったまでは良かったが。

ほぼ実績のない私は、協演する筈のバンドの人間からファンと勘違いされて粗悪な扱いを受ける。


なので仕方なく、奈緒さんと共演した横浜アリーナでのライブを話すが……どうなる事やら?(。´・ω・)?


***


「なっ、なぁ、冗談抜きに、あれは、本当にオマエなのか?」

「『本当に?』って言われても、本当に困るんですけど。……あぁ、そうだ。証拠になるか、どうかまでは解らないですけど。そのライブで使ってた、崇秀が付けた『ミニスィッチ付きの79 Sting -rayちゃん』なら、今、此処に有りますよ」

「みっ、見せてくれ」

「あっ、はい。どうぞ。……あぁけど。絶対に本体を叩いたり、ネックを変に弄るのは辞めて下さいね。先持って調整済みなんで」

「あっ、あぁ、わかった」


私と、崇秀の思い出と絆が詰まった大事な大事な『79 Sting -rayちゃん』だから、絶対に丁寧に扱ってね。

ちょっとでも粗雑な扱いをしたら、そのハゲの頭を『パチン』って叩くよ『パチン』って。


……って、思いながら手渡してみたら、本当に丁寧に扱ってくれるの。


あらら。



「……間違いない。これは、あのライブで使われていた本物だな。……って事は、本当にアンタが、倉津眞子。通称『狂気の天狗』と呼ばれる女なのか?」

「はっ、はい?なっ、なんですか?そのケッタイな渾名は?」

「なんだ知らないのか?前回の横浜アリーナのライブで、仲居間さんが付けた渾名だ」

「ちょ、ちょ、ちょ、ちょっと待って下さいよ。……なんで、私が天狗なんですか?」


それって……調子に乗るなって事ですかね?


あぁなんだろう。

そう言われると、思い当たる節が満載にあるし、中々抑制力が上がりそうな渾名だね。



「いや、俺が、仲居間さんのホームページで見た所だな。仲居間さんのコメントで『倉津眞子を略して鞍馬』。それで『鞍馬天狗』って言う日本の空想の生き物から取った渾名だそうだ」

「嫌過ぎる。……なにそれ?」

「いや、俺に、それが、なにかはわからん」

「……ですよね」


あのバカチン。

人が『抑制力』だのなんだのと真面目に考えてたのに、なに、その単純極まりない理由?


ホント、ロクでもない事バッカリするなぁ。

今度逢ったら、崇秀にも変な渾名付けてあげるからね。


覚悟しときなよ!!


……あっ!!

それ以前の問題として……崇秀は、元から変な渾名しかないや。


じゃあダメだ。



「ところで鞍馬よぉ」

「えっ?えっ?私、その渾名で定着なんですか?」

「あぁ、まぁ、仲居間さんが付けた渾名だから、取り敢えず、それで我慢してくれ」

「うわ~~~っ、神への信仰は偉大ですね」


まぁ渾名で呼ぶって事は、なにかしろは信用してくれたのかなぁ?


だったら、まぁ良いか。


でもさぁ、出来たらで良いんで、せめて『鞍馬ちゃん』とかにして欲しいなぁ。

『鞍馬』じゃ、あまりにも可愛くないもんね。


まぁ、ドッチもドッチなんだけどね。



「なぁ鞍馬」

「あぁ、はい。なんですか?」

「急に変な事を聞くが、オマエ、なんで仲居間さんを呼び捨てにするんだ?」

「あぁっと、幼馴染なんですよ。後、ご存知かどうかは解らないですけど、倉津真琴ちゃんも幼馴染ですよ。一応、親戚なんで」

「ほぉ『DEVILS-TIGER』とも知り合いか?」


魔虎兄貴=デビルス・タイガー……


なんの捻りも無く……安易過ぎる。

なんて大雑把なネーミングセンスなのアメリカ人って?



「また、そんなロクでもない変な渾名が付いてるですか?」

「まぁまぁ、仲居間さんが付けた渾名だ。此処も我慢してくれ」


天丼だ。



「なんだろ。なにも納得出来無い気分なんですけど。……一応『はい』って言って置きますね」


ホント、なに1つとして納得出来無いけど。



「あのよぉ鞍馬」

「あぁ、はい、今度はなんですか?」

「オマエの渾名と同じ曲が、仲居間さんから提供された曲の中にあるんだがな。『三味線』ってなんだ?」

「あぁっと、それはですね。崇秀が、横浜アリーナの奈緒さんのライブで、最後に使ってた日本の楽器ですね」

「オイオイ!!あの超クールな音が出る楽器か?」

「まぁ、あの場合は、弾き手が崇秀だったからこそ、あれだけの良い音が鳴ってるだけで。普通なら、あんな良い音は中々出せませんよ」

「でも、そうは言っても、鞍馬も三味線を弾けるんだろ?」

「あぁ……まぁ、なんと言いますか。一応程度になら弾けますけど。そんなに期待されても、私は、そんなに上手くないですよ」

「なぁなぁ、鞍馬。だったらよぉ、これから一緒にライブをやる仲なんだから。今から、なんか一曲弾いてくれよ」

「えっ?あぁ、はい。別に良いですよ」


面白そうな提案なので『太棹』を、ハードケースから丁寧に取り出し。

近くにあったシートを床に轢き。

そこに正座して、背筋をピンッと伸ばし、三味線を弾く為の演奏準備を完全に整える。


俯くと、三味線は良い音が出ないので、特に背筋はピンと伸ばしてね。


三味線の演奏には、姿勢が一番大事だったりするんですよ。



「でわ、準備が整いましたので、お粗末な腕ではございますが、早速一曲いかせて貰います」

「あっ、あぁ」

「では『じょんがら節』……ハッ!!」


-♪-♪-♪-♪-♪-♪-♪-♪-♪-♪-♪-♪-♪-♪-♪-♪-♪-♪-♪-♪-♪-♪-♪-……



「ハイ!!」


-♪-♪-♪-♪-♪-♪-♪-♪-♪-♪-♪-♪-♪-♪-♪-♪-♪-♪-♪-♪-♪-♪-♪-……


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】

最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>


奈緒さんとのライブの話が功を奏し、なにやら信用を勝ち得たのか。

今度は楽器の腕前を確認して貰ってるみたいなのですが……此処で調子に乗って三味線なんかを弾いて大丈夫なんでしょうかね?


まぁまぁ、眞子自身、結構『後は野となれ山となれ』精神の持ち主なので、多分、後先の事なんて考えてないと思いますけどね(笑)


さてさて、次回は、その辺の評価を踏まえて物語を書いていきたいと思いますので。

良かったら、また遊びに来て貴下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾

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