第3話 どこかのだれかの噂
四月七日。俺がこの星蘭高校に入学して一週間が経とうとしていた。まだ見慣れない高校の教室にどこか落ち着かない。そんな俺の所属する一年三組の教室は未確認飛行物体の話でもちきりだった。いや、正確には未確認落下物の話だ。
昨夜未明、眩い光が街を包んだのだ。俺もその日は何となく眠れなくて起きていたからその現象を目の当たりにすることができた。一瞬、昼間かと思うほどの光。
ほとんどの人がその光で目を覚ましたようで目撃者も多かった。なかには目が覚めなかった鈍感もいたようだが。
入学式から一週間あまりが経ち徐々に仲間の輪を広げつつある連中にとっては、丁度いい話のネタになったのかもしれない。四月というのは多くの人にとって変化の季節であり、新しい環境での生活が始まる人も多い。結局慣れてしまえばなんということはなく、心配して損したと拍子抜けすることも多いがその慣れるまでが試練なのである。誰もが人生で通る道。そう自分に言い聞かせながら今日も生きなくてはならない。
「おはよ。俊介」
「ああ。おはよ。今日もイケメンだな」
「俊介は今日も眠そうだな」
「元々眠そうな顔なんだよ」
「そいつは悪かったな」
こいつは川崎奏人。入学式の日に俺に話しかけきた変わり者だ。後から聞いた話だと後姿が知人に見えたので話しかけたら全くの別人だったらしい。それでもそのまま俺と話を続けてくれたいいやつだ。なんというか、裏表がないというか、あるんだろうけど無さそうに見せる振る舞いが見ていて感心する。話ができる相手が同じクラスにいるのは悪いことじゃないんだがこいつの場合は常に周りに人がいるタイプなので正直話すといっても一言二言が限界だ。あんまり長く話していると接点のない奴らが奏人目当てに集まってきて三分クッキングもびっくりの気まずい空間の出来上がりである。
そんなことは全く気にしていないであろう奏人は人当たりのいい笑みで話を続ける。
「俊介もあの光に興味あるんだろ?得意分野だもんな」
「さすがにあんなものを見せられると都市伝説好きの血が騒ぐな」
「そういえばあれ、俊介の家のほうに落ちなかったか?」
「え?そうなのか?」
「正直心配したよ。俊介の家に落ちてないかって」
たしかにあの光は相当まぶしかった。家の近くでの出来事だったのなら納得できる。でも何かが落ちた音なんてしなかったよな?
「都市伝説好きのお前なら調べたくなるのは分かるがあんまり首を突っ込むなよ?目撃者の証言を聞いたけど正直気味が悪かったよ」
「ああ。あの光と共に落ちてきたもののことか」
「うん。みんな言ってる。“人”が落ちてきたって」
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