第210話 ブランド


 造船所を吸収合併した後、早速警備の人間を造船所に配置した。これから機密情報を扱いまくるし、今の時代では革新的な船を造る予定だからね。


 絶対同業他社からの探りがあるはず。早めに配置して警備体制を確立しておくに越した事はない。それにクロエとも連携して、騎士の警邏にも力を入れてもらう事に。


 使えるものはなんでも使う。これがレイモンドクオリティ。


 「で、次はこっちと」


 表の仕事を終えた次の日は裏の仕事へ。今日は『海蛇』のトップと会う日である。そのままカタリーナがまとめてくれても良かったんだけど、どっちにしろ鑑定はしないといけないから、俺も向かう事にした。


 護衛はカタリーナ、チャールズ、マーヴィンである。正式に契約した後に更に人員を呼び寄せる予定だけど。


 「おぉ。ここまで胡散臭い顔の人間っているんだね」


 「………カタリーナ殿。こちらの方は?」


 「『クトゥルフ』のトップであるレイモンド様です」


 「どうも。よろしくね」


 俺の第一声があまりにも失礼だった事は謝罪しまする。だってこれぞ裏切り者の顔って感じだったから。


 人を見る目がない俺からすると、契約って手段が無かったら味方にするのを躊躇しちゃうぐらい胡散臭い。


 狸獣人で少しお腹がぽっこり出てて、切れ長の鋭い眼。見方を変えれば仕事が出来る人って感じなんだろうけどね。


 「こちらが…。なんと言うか…意外ですな」


 「こんなクソガキが来ると思ってなかったって?」


 「いえ。そういう訳では。『ルルイエ商会』の商会長ですよね?」


 「ああ、知ってるんだ」


 「一応これで仕事をしてますので。『クトゥルフ』の情報はほとんど得られませんでしたが」


 ふむん。表の方の情報収集もしっかりしてると。まあ、俺は特に顔を隠して行動してないからな。少しでも情報を集めてる人間なら知っててもおかしくないか。


 「それで? 『海蛇』の他の面々は説得出来た?」


 「それはもう。納得出来てない人間も少数いましたが、あなた様を見れば納得するでしょう」


 「? なんで? 俺って、自分で言うのはなんだけど、結構舐められる容姿をしてると思んだけど?」


 「『ルルイエ商会』の商会長に『狂姫』が付いてる事は、うちの構成員なら誰しもが知っています。あの女性は傭兵界隈や、一部の裏社会では触れてはならぬ存在として有名ですからね。そんな女性を当たり前のように侍らせている。私にはまだ分かりませんが、レイモンド様には、何か特別な力でもあるのでしょう」


 「アンジェリカブランドすげぇな」


 アンジーの異名が轟いてるところでの、恐れられ方が半端ない。話でしか知らないけど、そこまでなのかね。


 それと対抗してたゴドウィンもやっぱり相当だったんだろうな。俺は卑怯な手を使って、殺しちゃったけど。是非蘇生させて、味方にしたいものである。


 俺は今でようやくゴドウィンに追い付いたかなってレベルだし。実戦経験がほとんどないから、経験ではまだ負けてるだろうけど。


 「まっ、納得してくれるならなんでも良いや。さっさと済ませちゃおう」


 とりあえず目の前のポルカから。

 ふむふむ? 職業は将軍で、レベルもそこそこ高い。見た目は戦えない感じだけど、意外とやれる人間なのかね?


 指揮者とか将軍とかは人をまとめるのが上手い感じの職業だけど、カタリーナを見ても分かる通り結構戦闘の方もいけるのである。あいつは精霊ってチートがあるのもあるが。


 「不思議と暗殺系とか諜報系とか、そういう裏で働ける人間が多いな。よきよき。こういう人材はいくらいても良い」


 カタリーナと協力して鑑定、契約を済ませていく。転移で書記係も呼び寄せた。


 初めて転移を見たポルカは細い目を見開いて驚いてたな。ちょっと面白かった。


 「文官の職業も結構いますね。ありがたい限りです」


 「ジェイクが激務でヒーヒー言ってるからなぁ」


 ペテスの馬鹿領主の元で執事として働いてたジェイク。今は情報部で働いてるんだけど、いよいよ本格的に使われ始めた転送箱の処理に毎日追われてる。


 早く楽にさせてあげたいんだけどね。残念ながらこれからもっと忙しくなると思う。俺に出来る事は人員と給料を増やして、頑張れと応援するだけである。


 今回の『海蛇』連中にはその辺の仕事も期待したいね。情報の取捨選択なんてお手のものだろう。


 まあ、まずは『クトゥルフ』の教育を受けてもらってからだが。

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