第200話 造船所へ
「典型的な豚野郎だったなぁ。この街に来てすぐに殺したなんとかとか言う貴族にそっくり」
「匂いがひどかったのにゃー。クスリとか色々な匂いが混じってて、鼻が曲がるかと思ったにゃ」
クロエの屋敷にこの街に滞在してる大司教がやって来ると聞いて、遠目から見させてもらった。今日の護衛であるアリーナが、鼻を押さえて辟易した表情を見せている。それぐらい匂いがやばかったらしい。俺は遠くからだから分からなかったけど。
因みにいつもの護衛であるアンジーは、今頃深層で恐竜相手に暴れ回ってると思う。ローザの成長具合が凄いからな。師匠として負けてられないと、必死にレベリング中だ。
「大司教自体のレベルはカンストもしてないし、限界突破もしてなかったな。リスクがあって、失敗しても大丈夫な孤児にしかそういう実験をしてないのか、それとも他に理由があるのか…」
「レベルが低いのは予想外だったにゃ。どうやって『スティグマ』を従えてるのか気になるにゃね」
「それな」
なんか実験した時に、誰々の命令を聞くようにとか組み込まれてるのかね? そんな事が出来るなら、リスクなく限界突破する方法なんてのも考えてそうなもんだけど。
あ、この世界の人はステータスとか見えないのか。限界突破なんて言われても訳が分からんよな。あくまでも『スティグマ』は駒として使って、権力者の豚共は鍛えもせずに高みの見物ってやつですかね。
まあ、普通はそうだよね。権力者が先陣を切って戦うってのは、結構稀なケースだろう。知らんけど。異世界では普通にやってそうで怖い。
「まっ、俺も調子に乗って一人で『聖域』の縄張りに突っ込んで行ったし。人の事は言えないか」
「反省するにゃ」
領主の屋敷から馬車で『ルルイエ商会』に戻る。商会は既にオープンしていて、立地も相まって富裕層の従者なんてのがちらほらと見受けられる。
この場所を買ってからちょっとした失敗に気付いたよね。一応庶民向けのモノを多く販売してる商会なのに、場所が金持ち連中が集まるところなんだから。
幸い、珍しい魔道具や、効能の良いポーション、ちょっとした娯楽。貴族や金持ちはそういうのが大好きだから、結構売り上げは悪くないけど。
「もう一店舗、平民達が気軽に入れる場所に作るかな。ここじゃ、庶民は来たくても気遅れしちゃうだろ」
「なら、こちらの店舗は富裕層向けの商品も置きましょうか。今の商品も物珍しさから結構売れてますが、秘密基地には値段の問題で置けていない商品が山程眠ってますし」
執務室で働いていたホルトが提案してきたので、そのまま承認しておく。ついでに良い感じの土地が空いてれば買うようにも言っておいた。
前に商業ギルドに行った時は、ここかスラムに近い土地しか空いてなかったんだよね。まあ、将来的にスラムは俺達の支配下になるし、そこでも良いんだけど。その辺はもうホルトに任せます。
さっきから服をグイグイ引っ張って、早く行くぞってアピールしてくる子を宥めないといけないからね。
「分かった分かった。もう行くから。じゃあホルト、後はよろしく」
「お任せ下さい」
今日はクロエに紹介してもらった造船所に行く予定なのだ。その事を聞き付けたエリザベスが、連れてけアピールをしてきたので連れて行く事に。
秘密基地から滅多に出ないエリザベス。初めて来たディエルの街なのに、全然気にした素振りがない。どうやって船を作るのか、それしか考えてない。
他にも『クトゥルフ』所属の職業大工達を何人か連れて行く。なんか職業が上位化した時に、船大工とかにならないかなーと思って。
未だに職業関連の事は分からない事が多い。これも実験の一種である。
「大工達はともかく、エリザベスは大人しくしててくれよ。お前はあくまで船が好きだから特別に連れて来たって事になってるんだから」
「がってん」
『クトゥルフ』の魔道具やら、その他便利道具の開発やらを一手に引き受けてるエリザベスだけど、この子はまだ子供なのである。本来なら連れて行く事自体がおかしいのだ。
一応その辺はクロエが付き合いのあるお偉いさんが来るって事にして、その子供が船大好きって言うから、本当に特別に作業を見せてもらえる事になってるのである。
俺は船の善し悪しなんて分からないけど、ちゃんとした人なら『クトゥルフ』に引き込んでやろうと思ってる。
それも出来れば穏便に。船の善し悪しは分からんが、今の船からの進化系は知っている。それを餌になんとか出来ないかなーと。
なんたってまだ木造船だからね。魔導エンジンなんて考えたりしちゃったりして。木造から鉄の船へのバージョンアップだ。
簡単な事じゃないから、すぐには無理だろうけどね。その辺は生産組がなんとかしてくれると信じてます。
これぞ人任せの極致。俺も馬鹿なりに知恵を振り絞るので許しておくんなまし。
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