閑話 付与料理


 「え? 凄いなこれ。パラメーターが1ランク上がってるじゃん」


 「僕もレベルが上がって来て、ようやく目に見えて実感出来るところまでこれました」


 秘密基地の食堂にて。いつも通りウルファの料理を食べてると、なんか魔力が増えてるような感覚。


 鑑定でステータスを確認すると、魔力のパラメーターが一つ上がっていた。勿論時間制限ありだが。


 人手不足の『クトゥルフ』だけど、総構成員は1000人を超える。常に秘密基地に滞在してる人間はそんなに大量に居ないけど、それでも毎日たくさん料理を作ってる訳だ。


 そりゃ、レベルはグングン上がるし、中には古参の料理人でカンストしてる奴もいる。ウルファもそろそろ200超えが見えてきて、毎日美味しい料理が食べれて嬉しい限り。


 出会った時から少しは成長して、身長も伸びたのに、より一層見た目が男か女か見分け辛くなってるウルファ。


 今もテレテレしてる姿は女の子にしか見えない。こんなのを毎日見せられてる料理人達は、性癖が破壊されたりしないんだろうか? まあ、意外と女性人気は高いんだけどね。


 まさか腐の方々じゃないだろうな? レイモンドは怪しんだ。


 「これは会心の出来なの? それとも量産可能レベル?」


 「作ろうと思えば作れます。しかし、使ってる食材はどれも高価なモノばかりなので…」


 「なるほど。毎日食べるにはコスパが悪いと」


 「そうです」


 構成員の性癖問題はさておき、今はこの料理だ。再現可能な料理らしいが、食材の値段、作る手間を考えると、流石に毎日全員にという訳にはいかないらしい。


 香辛料とかは、異世界の定番よろしくめためたお高い。日本で暮らしてたら馬鹿らしくなるくらい胡椒みたいなのとかは高いんだ。


 地球でも昔は胡椒は金と交換されてたって言われるぐらいだからなぁ。農業方法とかも現代とは比べ物にならないだろうし、高くなるのは仕方ないのかね?


 香辛料はうちでも栽培したいと思ってるんだけどね。秘密基地の環境はどうやらあんまり向いてないらしい。俺もなんちゃって現代知識があるとはいえ、胡椒やその他香辛料の育て方とかは知らない。なんか暖かいところで育てるのが良いんでしょぐらいだ。


 ディエル領を実質手に入れた訳だし、船で暖かい場所目指すのも良いかなぁ。良い感じの場所に良い感じの無人島なんかを見つけたり。主人公ばりのご都合主義を発揮出来ないもんかね。


 まあ、それはさておき。


 とにかく今の『クトゥルフ』では、香辛料は買うしかないのである。それを毎日ふんだんに使う訳にはいかない。俺はボスって事で、毎日それなりにいいモノを食べさせてもらってるけど、それでもだ。食べ物の恨みは怖いのである。毎日贅沢って訳にはいかないのだ。


 まあ、俺はそこまで食にこだわりがある訳じゃないけど。食べれるなら美味しいものを食べたいよねって程度だ。


 「ふーむ。当面は決戦の日とかに食べるのが良いのかな」


 「ですね。抗争が佳境に入ってきた日に用意するのが良いじゃないかなって思ってます」


 これからスラムの制圧やら、なんやらで戦いが増えるだろうし、冒険者組も大物討伐に向かう時に食べたりするのが良いかもしれない。


 「これ、何のステータスが上がるとか、調整出来たりするの? 器用が上がったりするなら、生産者組にも使えそうだけど」


 「ああ…それなんですけど…」


 「む?」


 戦闘組だけ美味しいご飯食べるのは生産組から反感を買いそうだなぁなんて思ったんだけど。補填のしようは色々あるけどさ。


 「大体の法則性は分かったので、出来る事は出来るんです。でも、ドーピングして作れた作品は自分の実力じゃないらしく…。生産者組からのウケは悪いんですよね…。エリザベスちゃんは気にせず使うべきだって言ってくれてるんですけど」


 「めんどくせ」


 変な職人魂みたいなのを出してくるなよぉ。使えるもんはなんでも使うスタンスでいかないともったいないだろうよ。


 エリザベスはそのスタンスだから気にしないんだろう。それにまだ生産者になって長くても4年とかの奴らだぞ? そんな奴らが職人魂を押し出してくるのはちゃんちゃらおかしいぜ。


 それで言ったら、戦闘組が使うのも、本来の実力じゃないって事になっちゃうじゃんね。まあ、あいつらにはアンジーやローザが勝てば良かろうの精神を、骨の髄まで叩き込んでくれてるから、そんな文句を言う奴はいないだろうけど。


 「仕方ない。生産組は俺からちゃんと言っておこう。プライドを見せるのも良いけど、より良いモノを作れる手段があるのに、それを使わないのは、ただの怠慢だぜ」


 「申し訳ないですけど、よろしくお願いします。僕も色んな人に僕の料理を食べて欲しいですから」

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