第194話 自慢
「あ、あなた、やりたい放題ね…」
「照れる」
「褒めてる訳じゃないのよ」
クロエ、エスピノーザとの話し合いはとりあえず終了。屋敷の人間も片っ端から契約していった。その時に他領からのスパイが使用人として潜り込んでるのが何人かいたのを発見。
クロエも一応マークしてたみたいで、契約して嘘がつけなくなるなら聞いてみて欲しいってお願いされたから、聞いてみると見事にヒット。
この港街はとにかく金になる。だから少しでも利権に食い込もうと、そういうスパイが紛れ込むのが後を絶たないそうだ。クロエも苦労してるんだねぇ。
で、契約が終わると、馬車の御者を呼ぶ。今日契約するのはほぼほぼ決まってた事だから、御者の人間は生産部の人間なんだ。
その生産部の人間と俺が協力して、屋敷の物置部屋に転移装置を設置した。俺が毎回この屋敷に来て転移させるのは面倒だし、領主であるクロエ達が何度も『ルルイエ商会』に来るのもおかしな話だ。
なら、設置した方が早いよねって事で。その為に使用人とかも契約して不審に思われないようにしたんだし、使用人達にも秘密基地に来てもらっての教育が必要だ。
転移の仕組みを聞いたクロエは呆れた顔で褒めてくれた。照れるよね。転移装置と転移箱の発明は『クトゥルフ』に欠かせないものになってますよ。
教育部門は大忙しだぁ。ただでさえ『ネイビー』の奴らが増えててんやわんやしてるからね。まあ、ここで使用人してる奴らは貴族出身も多いし、ある程度学はある。そこまで教育に時間は掛からないだろう。
「今日の夜にでも俺達のアジトである秘密基地に行ってみて。そこでうちの幹部達との顔合わせもしたいし」
「分かったわ。何人連れて行ってもいいのね?」
「こっちの仕事に支障が出ないなら、何人連れて来ても良いよ。あ、最初は転移酔いで気持ち悪くなると思うから気を付けてね」
さて、この屋敷でやる事は大体済んだかな。てか、この領地でやる事の半分ぐらいは終了したか。
後はスラムを制圧するのと、教会にちょっかいを出してみるのと、船をどうするのか考えるのと。
あれ? 結構まだやる事が残ってるな…。まあ、まずは秘密基地で顔合わせも兼ねた会議を開いて、何をどうするか決めようか。
一つずつやるのか、一気にまとめて同時進行するのか。よーく考えないとね。
「ここが秘密基地…」
「いらっしゃーい」
はい、という事で、場所は変わって秘密基地。クロエはエスピノーザと側近と呼べる古株の使用人や、騎士達を秘密基地に連れてやって来た。
思ったよりも広いアジトでびっくりしてる様子。ここを建設するのは結構時間が掛かったからね。自慢の場所ですよ。是非ご堪能して行って下さい。
「軽く施設の説明してから会議室に案内するよ。結構広いから、次に来た時迷ったらいけないし」
クロエ達を引き連れて、秘密基地内の施設を軽く説明する。説明と称した自慢だけどね。たくさん驚いて欲しい。こっちも作った甲斐があったってもんよ。
クロエ達女性陣は温泉に惹かれ、エスピノーザや騎士達は訓練施設に興味深々。ローザが台風のように暴れてるのを見て目を丸くしてたけど。
あれが『狂姫』の一番弟子だよって言ったら、みんなちょっと引いてたな。ローザは良い子だよ? ちょっと頭が緩いけどね。
他にも色々自慢したいけど、今日は本当に軽い説明だけ。後は個人個人で来た時に驚いて下さい。その生の反応を見れないのは残念だけど、そろそろ夜になるし、さっさと会議を始めちゃおう。
「ダンとカイルは帰って来れない?」
「ええ。まだ帝都へ向かってる最中みたいで。報告書は転送箱で送られてきています」
「そっか。出来れば直接報告を聞きたかったけど、仕方ないね」
勇者君に同行しているダンとカイルには、勇者君のゲーム知識から『スティグマ』についてや、教会について聞けたら聞いといてと雑にお願いしてある。
結構信頼関係を築いてるみたいで、以前の勇者君からは考えられないぐらい、頑張ってるらしいと報告は受けてる。サラはちょっと複雑そうな顔をしてたけどね。
サラに置いて行かれて勇者君も思うところがあったんじゃないかな。知らんけど。
「レベルカンストでも厳しそうな相手が五百人? やべぇな。思ったより強いじゃん」
「ですね」
カタリーナに渡された報告書を読みながら、会議室に向かう。それだけ恩恵持ちを集めてるって事か? それともキメラにすると、限界突破は出来る? 教会は限界突破する方法を知ってる? まだちょっと分からない事が多いな。
とりあえず会議でクロエに勇者と魔王、光魔法と闇魔法について教えてもらおう。何か知ってる風な感じだったし。
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