第187話 領主の屋敷へ
「なんか結構人を集めてるみたいだね」
「それだけ警戒してるんでしょう」
「噂だけでここまで警戒するのは過剰な気もするにゃー」
「いやぁ、噂は馬鹿に出来ないだろ。アンジーの噂が尾鰭付きまくって広がったと仮定しても、お偉いさんからしたら脅威だし。俺もアンジーがここまでとは思ってなかったけど」
「雇い主を斬り殺したのは2.3回だけなのにね。ちょっと大袈裟だと思うわ」
「普通は殺さないんだよなぁ」
「舐めた事言われたらそれ相応の対処をしないと傭兵界隈ではやっていけないわよ。ボスもムカついたら、ケジメをつけて契約で黙らせるでしょう? それと一緒よ。ボスは契約してるから表沙汰にならないだけで」
「それもそうか」
馬車でガタゴトと揺られて領主の屋敷に移動中。
直前で入った情報では領主の屋敷に騎士がたくさん集まってるらしい。厳戒態勢を敷いてるみたいで、街でも何かあったのかと噂になってるくらいだ。
「チラッと騎士の練度を見たけど、少なくともペテスの騎士よりは上っぽかったぞ。俺達がテコ入れする前の話だけど」
「ペテスの騎士は馬鹿領主が『レーヴァン』の縄張りに精鋭部隊を注ぎ込んできたもの。後は残り滓だったんだから仕方ないわ」
優秀な騎士は軒並みアンジーにやられちゃったみたいだからねぇ。ほぼ一人で斬り殺したらしいぞ。このお姉さんは昔からやばかったんです。
まあ、馬鹿領主も運が無かったね。普通はスラムにこんな猛者がいるわけないんだよ。下手に手を出さなかったら、大人しくしてただろうに。薮を突いたら蛇どころか、ドラゴンが出てきたようなもんだ。ご愁傷様としか言いようがない。
「各自武器はダミーのやつに変えてるよね?」
「ええ。入り口で武器を預かられても、魔法指輪にちゃんとしたのをしまってあるから」
「アタシもにゃー」
まともな領主なら、アンジーの噂を知ってて、武器を携帯させたまま話し合いの場に行かせようとする訳がない。
ほぼ間違いなく武器は事前に回収されるだろう。対策は簡単だけど。魔法指輪に主武器を収納しておくだけ。
俺がこの世界で情報を集めた限りでは、魔法鞄はダンジョンとかで、かなりの低確率でドロップするらしいが、形状は鞄なんだよね。
アクセサリー型になってるタイプは、まだ見た事も聞いた事もない。『クトゥルフ』では既に開発に成功してるけどね。俺かカタリーナの助力は必要だが、エリザベスがやってくれました。
鞄型なら万が一を警戒して回収されるかもだが、指輪とかアクセサリーなら大丈夫だろう。
俺達は武器無しでも戦えるように訓練はしてるが、アンジーとかは刀を持った方が明確に強いからね。
かなりの数の騎士を集めてるみたいだし、もし話し合いがおじゃんになって、戦闘になってもこれで安心だ。
問題は三人で騎士をなんとか出来るかって事だが…。
「大丈夫よ」
アンジーさんの勘的には問題ないらしい。流石に一人で相手をするのはキツいとは言ってたけど。俺とアリーナもそこそこ戦えると自負してるからね。
俺はこんなんでもレベル300を超えてるので。こんなんでも。大事な事なので二回言いました。俺の戦闘力がバレる云々は、戦闘に発展したら殺すか契約なので良いだろう。
「はてさて。領主はどんな人物なのかな。情報では優秀らしいけど。スラムの現状を見るとなぁ」
「スラムの現状をきっちり把握してる領主なんて稀よ? ましてや、ここのスラムは広いし、港があったりと特殊だもの」
「それでもなぁ。孤児をなんとかする政策の一つや二つぐらい…」
領主主導の孤児院を作るとかねぇ。まあ、これまでの街で領主が、孤児院を作ってるところは見た事ないけど。
それは教会の領分らしい。一応名目上は民の救済を掲げてる教会だ。高い寄付金を払って、下品な聖堂を街に建てさせてるだけあって、そういう事をしてますよってアピールが必要らしい。
もう教会の実態を知ってる身としては、闇が深いって分かるよね。絶対ロクな事してないでしょ。
中にはまともに運営してるところもあるだろうが、ほとんどの所はヤバい実験とかに使われてそう。
俺の中では領主やその他側近は、ほぼ契約する気でいる。優秀だろうが、ボンクラだろうが、とりあえずこの地は重要なのだ。
海があるのはとにかくデカい。海洋貿易はマフィアの嗜みであるゆえ。絶対に自分で船を持ちたいし、領主の力添えがあったら、なにかと楽だろう。
穏便に契約するか、過激に契約するか。
それは実際に会ってみないと分からないけど、出来れば穏便が良いよねぇ。
領主がスラムの現状を知ってて放置したなら、残念ながらお亡くなりになってもらうけど。
スラムのチンピラと領主じゃ立場が違う。チンピラはどうしようも無かったかもしれないが、領主という立場があれば、スラムに大鉈を振るってなんとか出来たはず。
それが良いか悪いかは別にしてね。ペテスの馬鹿領主みたいに派手に失敗するかもしれないし。
俺はそういう姿勢を見せて欲しいのです。果たしてディエルの領主さんは如何なものか。
人を見る目に定評がないレイモンド君がしっかり見極めさせてもらいますよ。
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