第186話 逸れる思考
新入り達をいびって調子に乗るイキりムーブをかました後、俺は仕事を再開した。
新入りの教育課程の確認だったり、教育課程が終了した面々の部署を考えたり。一応本人の希望を聞いてるけど、全部要望通りになる訳じゃない。
そういう時は本人と話し合って、こうして欲しいなっていうのを伝える。秘密基地は主にカタリーナが上手くまとめてくれてたけど、こっちの仕事も中々ハードである。
「ふーむ。あっさりとオッケーしてきたか」
そんなこんなで仕事をこなす事数日。
領主に挨拶したいよーって手紙を送ったら、あっさりとオッケーの返事が返ってきた。俺達というより、アンジーに対して結構警戒してるみたいだから、屋敷には連れてくるなとか言われると思ってたけど、そんな事もなく。なんと領主本人が会ってくれるらしい。
「ここまであっさりだと逆に疑っちゃうけど。行かない訳にはいかないしな」
こっちから行きたいって言ってるんだし。やっぱりやめたは流石にない。それに、スラムの『聖域』の所業を知ってて放置してるのか、知らないのかも確認しておきたい。
どうやって突っつくかは、適当に考える。うちの商会員がスラムの誰かに暗殺されそうになって、その過程で調べた時に知りましたとでも言っておけば良いだろう。
後はアンジーに殺気でも振り撒いてもらっておいて、ポロリを期待するみたいな感じで。
会談がどれだけ長く続くか分からないから、一旦カタリーナには秘密基地に戻ってきておいてもらうか。
今、ディエルのスラムでは『ネイビー』の元縄張りを維持しつつ、利益が出るように少しずつ改装中。それをしながら他の組織の情報を集めてる段階だ。
もしかしたら『聖域』にスティグマが派遣される可能性もあるからね。どこかの誰かさんが先走ったせいで。
どうせならそのスティグマの強さを見てみたいし、今は慎重に情報を集めてもらっている。『聖域』はシャブ中ばっかりで、まともな情報を集められてないみたいだけど。
「クスリねぇ。うちでも扱うべきなのか。元日本人マインドを持ってると、どうしても忌避感がなぁ。人殺しとかしてて今更っちゃ、今更なんだけど」
拷問、人殺し、脅し、詐欺。日本ではやったら、間違いなくアウトな事をやってて、今更なんだけど、どうもねぇ。
でも裏社会を支配しようとするなら、避けては通れない道だろう。これは俺が規制しようとしても無駄だと思う。
絶対に隠れて製造、密売する奴は出てくるし、そんな事をされるぐらいなら、こっちで流通をコントロールした方がいい。
「どれくらい依存性があるのかね。タバコぐらい? これも試してみるべきなのかなぁ」
一応シャブ中を回収して治療出来るかの実験は始まっている。幸い今の所うちの組織の人間に中毒者はいないけど、絶対将来的に出てくるし。
以前会議した時に絶望した穴あきだらけの組織は、部門の長が決まってないのに、新しい部門が出来たりしてて、その一つが医療の分野。
これはないのはおかしいだろうと。俺もそう思う。神の啓示を受けたので慌てて作った。完全に忘れてたよね。魔法で怪我は治せるからすっかり忘れてた。
病気は薬でしか今の所対処法がない。それに魔法で回復出来るのは俺とカタリーナだけだしね。いずれ、絶対に手が回らなくなる。
ポーションもあるけど、まだ俺達の魔法程の効能を発揮するのは作られてない。欠損を回復したりするやつね。
一応医療は生産部門の紐付きにしてあるが、いずれ戦闘部門の衛生兵も作ろうかと思ってる。人手が全然足りてないけど。
「長が決まってないのに、ぽんぽこ新しい部署を発足するのは馬鹿なんですかねぇ」
まあ、とりあえずシャブ中の治療法さえ確立出来れば、一旦試してみるのはありだな。どれだけの依存度かしっかり確認しておかないと、売りには出せないよ。
「でもシャブ中は依存度もあるけど、心の問題もあるって、前世の何かのテレビで見たなぁ」
なんかアメリカのドキュメンタリー番組。体からクスリが完全に抜けても、ハイになった時の快感というか、快楽は心が覚えてるから、どうしても手を出してしまいたくなるらしい。
パチンカスとかの上位互換かな? あれも当たった時の脳汁が忘れられなくて、大勝ちしたのに味を占めて中毒になるみたいだし。
俺は前世でタバコを辞められなかった人間だし、クスリなんて手を出したらとんでもない事になりそうだ。この世界にタバコがあったら、間違いなく手を出してただろう。
今の所キセルしか見つかってないが。マフィアなら葉巻だよねと、探してるんだけどね。
……なんか思考が逸れまくってるな。一人で色々考えるといつもこうなる。最初に考えてた事から脱線しまくるんだよね。
誰かと一緒に相談しながらなら、軌道修正してもらえるんだけど。結構あるあるじゃない?
「とりあえずは領主との会談だな。色々準備も必要だ。聞きたい事もあるし、売りたいものもある。下手したらそこでボコって契約、ひどい場合なら殺してしまう可能性もある」
アンジーとアリーナは連れて行くか。アリーナは暗殺部隊を任せる予定だから、あんまり表に出したらダメかもなんだけど。
それなら最初に俺が旅に同行させるのは間違ってるよね。ノリで同行させちゃいました。
まあ、アリーナが暗殺部隊を率いてるってバレなきゃ良いでしょ。暗殺者だって常に潜んでないといけない訳じゃないし。
よし、自己弁護オッケー。準備しよう。
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