第162話 港街ディエル
「んはー! 潮の匂いが懐かしい!」
「これが海の匂いなのね」
港街ディエルに到着した。門で手続きしてた時から思ってたけど、街に入って途端、潮の匂いが濃くなった。
前世で海水浴とかに行ったりしたけど、今世では初めての海。港以外に海辺で遊べるところとかもあるっぽいしね。楽しみです。
アンジーも傭兵時代に旅はしてて、デカい川とか湖は体験があるみたいだけど、海は初めてらしい。興味深そうに周りを見渡している。
「にゃー。匂いはキツいけど不快になる匂いじゃにゃいにゃ」
獣人のアリーナも鼻をクンクンさせてるけど、大丈夫な様子。これで匂いがキツいってなって獣人を派遣出来ないとかにならなくて良かった。『クトゥルフ』には結構獣人がいるからね。
「とりあえず宿を取るか。ここにはいつでも来れるようになったから、もう秘密基地に転移して帰っても良いんだけど」
「拠点は置かないの?」
「それはもう少ししてからかな。任せられる人がまだ育ってない」
良さげな土地があったら先に買うぐらいはするけどね。突発的にペテスに支店を出した事もあって、人が足りてないんだよ。
俺達が大体整備したけど、既に廃れ始めてるペテスのスラムすら人を送れてない状況だからね。
それにこのディエルに来るまでに寄った街で孤児を攫いまくったから、それの面倒を見る奴や、教育する奴にも人を取られてる。
「ここはペテスより広いしな」
「確かにここまで大きいのはびっくりしたわね。これより大きい所を探すなら国の首都ぐらいじゃないかしら」
この大陸最大の港街を謳ってるだけあって、この街はかなり広い。その分闇も深そうだし、スラムというか裏街を攻略するなら、それなりに本腰入れてやらないといけない。
優秀な人材を送る必要があるし、焦らずじっくりと行こうかなと思ってます。
「それはそれこれはこれとして。秘密基地にお土産とか持って帰りたいし、まずはこの街を探検しよう」
「そうね。宿に荷物だけ置いて行きましょうか」
デカい街だから、宿もいっぱいある。俺達はそれなりに高級な宿を取って街歩きに飛び出した。
「にゃー。お魚がいっぱいだにゃ」
「ここは魚より肉の方が貴重なんだろうな」
特に目的も決めずにアンジーアリーナと宿を飛び出した。他の面子は宿の荷物を見ておくのをお願いしたり、軽い情報収集を頼んだ。お金もそれなりに渡しておいたし、交代で街に遊びに行ってもらおうと思ってます。
で、俺達は適当に目的も決めずにブラブラしてる。一応海方面に歩いてはいるけど、途中の屋台で魚の串焼きを買ったりして、食べ歩きながら、ディエルで売ってる商品とかを見てる。
「あー美味い。久々に食べたけど魚も良いな」
「海に近くないと干物ぐらいしか食べれないものね」
生で食べる文化とかないのかな? 寄生虫とかがあるから無理かな? いや、生で食べるなら醤油は欲しいよなぁ。
「おっ! そこの兄ちゃんと姉ちゃん! うちのも食っていかないか! 特製のタレで仕上げてるから絶品だぜ!」
「5本ちょうだい」
「毎度ありっ!」
お上りさんみたいにキョロキョロしながら歩いてたら屋台のおっちゃんに声を掛けられた。特製タレとやらが気になるから、お願いする。うん、美味い。素晴らしい味だ。
「早いところ拠点を置きたいな。秘密基地でも魚を食べれるようにしたい」
「大賛成にゃ!」
「でも軽く見た感じ空いてる土地がないわよ? 商会を置くのはちょっと厳しいんじゃないかしら?」
それは俺も思ってた。やっぱり激戦区だからか、余ってる土地なんてないし、空き家も見当たらない。ここが大通りだからかな? もっと外れた場所は空いてるのかもしれないけど、やっぱり店を置くなら大通りが良いよねぇ。
「後で商業ギルドに寄って空いてる土地とか聞いてみるか。望み薄だけど」
「これだけ激戦区だもの。空いてもすぐに契約されたりするのかもしれないわよ? 予約とかあったりもあるんじゃないかしら?」
なるほど。そのパターンもあるか。空いたら契約させてねとかそういう風に予約してる可能性があるね。
「何個か表通りの商会を潰そうかな。これだけいっぱい店が並んでるんだし、悪徳商会の一つや二つあるでしょ」
「その辺は情報待ちね」
まあ、それも商業ギルドに行ってから考えよう。今は探検を楽しまねば。
「海にゃ!」
「おお…」
「大きい船ね」
そうこうしてると海に到着。
ガレオン船って言うのかな? いくつもの帆があるどでかい船がいっぱい並んでて、港では船夫達が忙しなく動いている。もちろん小さい船もあるけど、やっぱり大きい船の方が目立つよね。麦わら帽子を被った海賊とかいないのかな?
「動力は風かな? 蒸気機関とか、魔法で云々はしてなさそう」
木造船しかないし、多分そうだろう。
そういう研究をしてないのなら、まだまだ俺達にチャンスはあるね。蒸気機関の詳しい仕組みとか覚えてないけど。エリザベスに知ってる事を教えて丸投げだな。
「おい、そこの女三人。俺様が遊んでやろう」
良いものを見れたとホクホクして宿に戻ってると、いかにも高貴な人が乗ってますみたいな、キラキラした馬車に乗った豚に声を掛けられた。
まあ、アンジーとアリーナは顔立ちやスタイルが整ってるけど、三人?
まさか俺も女として見られてます?
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