第157話 予定


 「丸投げしてすみません」


 「いえ。それは大丈夫です」


 村人を誘拐した日の夜。

 俺は秘密基地に戻ってきていた。


 丸投げして先を急ぎなんとか今日中に街に入りたかったんだけど、残念ながらギリギリ間に合わなかった。既に門は閉められていて、入るのは明日の朝に門が開くまで待たないといけない。


 って事で門の近くで野営の準備だけしてから、こっちに飛んできたって訳だ。


 カタリーナに丸投げした事を謝りつつ、その後の事を聞く。どうやら契約は終わらせて、流動食を食べさせるところまではやってくれたみたいだ。


 今は食事も終わって、まとめて休ませてるとの事。


 「じゃあ鑑定しに行くか。ざっと見た感じ恩恵持ちはいなさそうだったけどな」


 「どんな職業でも今の『クトゥルフ』には人が足りてませんから。人手が増えるだけでありがたいですよ。教育に時間は掛かりますけどね」


 カタリーナと喋りながら村人達が休んでる場所へ。


 「あ、あなたは!」


 すると、一番良く話してた奴が俺に気付いたみたいで、慌てて駆け寄ってきた。まだまだ貧相な体だが、さっき会った時より顔色は良さそうだ。


 まだ静養は必要だろうが、命の心配はなさそうだな。


 「えーっと、カタリーナに聞いただろうけど、これからはお前達の体調が回復したら俺の為に働いてもらいます。ちゃんと給料は渡すし、人並みの生活を送れるようにする事は約束しよう。早く元気になって、俺の役に立つように」


 「は、はい! ありがとうございます!」


 うーん。上から目線で言ってみたけど、全然気にしてない様子。飢えから救ったってのが大きいのかね? まあ、働いてくれるならなんでも良いや。


 みんなも俺の話を聞いてやる気になってくれてる様子。まあ、小さい子供はほとんど寝てるけど。それは良いだろう。子供は食べて寝てちょびっと勉強するのが仕事です。


 「じゃあ鑑定していくか。カタリーナ、メモお願いね」


 「かしこまりました」


 そこからはささっと150人ほど鑑定して、ゆっくり休むように言って、その場から離れた。俺がいたら気軽に休めなさそうだし。




 「特に法則性とかはないな。職業ってやっぱりランダムなんだねぇ」


 「遺伝とかも特になさそうですか」


 「魔法属性の適性ぐらいならワンチャンあるかもだけど」


 執務室でさっき鑑定したメモを読みつつ、カタリーナと話をする。両親の職業を受け継いだりするのかなと思ったけど、見た感じそんな事はなさそう。魔法属性は被ってるのはちらほらと見受けられるけどね。


 「サンプルが少ないから確定ではないけど、ランダムって思っておいた方がいいな」


 「ですね」


 遺伝とかするならね。もし俺に子供が出来たらどうなるのかなって思うんだけど。

 俺はいっぱい職業があるし。それこそランダムに何かしらが引き継がれたりするのかな。


 「あ、そうだ。明日には男爵領の街に入って、孤児ぐらいは攫いたいんだけど受け入れる余裕はある? これから街を通る度にパクろうかなと思ってるんだけど、流石にキツい?」


 「子供でしたら何人増えても構いませんよ。託児所にまとめて預けておくだけですし。一応、人員を増やすように言っておきます」


 ふむ。なら孤児は攫うか。説明とか面倒だから問答無用で人攫いをする予定です。

 いきなり攫われた子供にはちょっぴり怖い思いをしてもらう事になるが。多分攫われた方が暮らしは良くなるので、少しだけ我慢して下さい。


 「じゃあ俺は向こうに戻るよ」


 「ええ。孤児を攫う部隊はこちらで用意しておきますね」


 「うん。明日の夜に派遣をお願いすると思うからお願い」


 「かしこまりました」


 さって。それじゃあ向こうに戻るか。




 「やっと帰ってきたにゃ。アタシはもう腹ペコにゃよ?」


 「別に先に食べてても良かったのに」


 転移でテントの中に戻ると、全員が待っててくれたみたいだ。待たせてしまって申し訳ない。


 って事でいただきます。


 「拠点のご飯も良いけどにゃ。野営のご飯も悪くにゃいにゃね」


 「野営のご飯は本来はもっと酷いものよ? 私の傭兵時代は携帯食料とか干し肉だったもの。スープなんて贅沢だわ」


 「やんす!」


 誰が作ったのか知らないけど、普通に美味しいスープだ。まあ、アンジーが言うようにスープとかは贅沢だよね。俺達は魔法鞄とか魔道具のコンロみたいなのがあるから、ここまで出来てるけど。


 「ボス、明日の予定は?」


 「1日男爵領で時間を潰すぞ。馬を休ませたいし、軽く街を回って恩恵持ちがいないか確認したい。で、夜になったら転移で孤児を攫う部隊を招集して一気に誘拐する。昼のうちにある程度孤児にも目星をつけておきたいな」


 「意外と忙しいにゃ」


 「まあな。馬車の中で暇だったから丁度良いだろ。港街に着くまでは、馬車で休んで街で精力的に活動するみたいなルーティンになると思う」


 「この馬車は普通の馬車と違って快適に休めるものね」


 普通は旅の疲れを街で癒すんだろうが、うちの馬車はそこまで揺れたりしないので、普通に休める。


 異世界基準の普通の馬車はケツが二つに割れるんじゃないかってぐらい痛くなるからな。クッションとかもいっぱい用意してあるから快適快適である。


 「そう都合良く恩恵持ちは見つからないだろうけどな。後は何か珍しい食材とか素材とかその辺があればなと」


 せっかくの長距離移動だからね。

 何か面白そうなモノがあれば積極的に確保だ。それを秘密基地で量産やら改良やらすれば、さらに商売のタネになる。


 本命は港街だけどね。

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