第151話 16歳


 「こう! こうだよ!」


 「なるほど…。二刀流奥義! ぺちんぺちん!」


 「ボス。それは如何なものかと」


 「あ、カタ姉だ!」


 上位化した職業の習熟訓練を四苦八苦しながらこなしつつ、なんか特殊な職業にでもならんもんかと、ローザに二刀流を教わってると、訓練場にカタリーナがやってきた。


 どうやら俺の必殺技名に異議があるらしい。だって何も思い付かないんだもん。仕方ないよね。スターバーストストリームとでも言えばいいのか? イキリトになっちゃうぞ? キリトかなーやっぱりwww〜とか言い出したら責任取ってくれよ?


 「どうしたの?」


 「勇者に魔物をけしかけて救出。接触に成功したようです」


 「おお。適当なマッチポンプが上手くいったか」


 とりあえずコミュ力が高そうな男に勇者に接触させてみたんだよね。サラからの情報では勇者は女好きっぽいって聞いてたから、女を当てようか迷ったけど。万が一の事があるからね。男にしておきました。


 「これでそのままパーティーでも組んでくれたら万々歳だな。まあ、情報さえ抜けたらどんな形でもいいけど」


 「どうでしょうね。サラにも前世知識は言ってなかったみたいですし、そう簡単に漏らすとは思えませんが」


 勇者は前世知識がよほど大事らしい。

 まあ、独り占め出来るならしたいよなぁ。

 その気持ちはとっても良く分かる。俺だって知識チートでウハウハしたいし。


 ただ俺は自分一人じゃどうしようもないから、みんなに手伝ってもらってるだけで。

 知識もふわっとしかないし。


 「まあ、勇者の方は良いや。そのまま関係構築を進めてもらおう。行き先さえ分かれば先回りすれば良いしね」


 「はい。この調子でやっていくように連絡しておきます」


 勇者の強さもある程度コントロールしないとなぁ。俺と同じでレベル999が上限だし、下手に成長させすぎると、こっちの手に負えなくなる可能性がある。


 限界突破は発動条件が厳しいけど、能力が一段階上がるってのは脅威だ。成長して限界突破が発動して、能力が全部EXとかになってる状態で敵対なんてしたら負けるかもしれない。


 勇者の前世知識は欲しいけど、扱いが面倒なら始末する事も頭に入れておかないとな。


 はい。って事で勇者君の議題はこれで終わり。

 俺はさっさと職業に慣れないと。

 早く港街へ出発したいのだ。





 「およ? いつの間にか16歳になってる」


 今日も今日とて訓練を良く頑張りましたって事で、ステータスを確認して職業が変わってないかなーと見たら、16歳になっていた。

 職業は残念ながら変化無しだったけど。


 「前世なら高校生ぐらいか。向こうではまだまだ子供なのに、こっちではやりたい放題やってますなぁ」


 「私からすると小学生とやらから始めて12年、大学生を含めると16年ですか? それほど長く勉学にあてるというのが信じられないのですが」


 執務室で一緒にいたカタリーナが俺の独り言を拾ってくれた。

 確かにそう言われると、16年って結構長い時間だよな。


 「大体の奴は高校までは出てるしな。あの時はそれが普通だったけど、こっちの世界の人間からしたらおかしい事だろうよ」


 「教育を受けるのは基本的に貴族のみですからね」


 貴族の大事な既得権益だからな。

 このアドバンテージと魔法がないと、貴族はやっていけないだろう。俺は楽したいから教育にも力を入れてるが。


 人を使おうと思ったら、ある程度相手にも教養がないと意図がちゃんと伝わらないんだよね。賢い人なら馬鹿でも上手く使いこなすんだろうが、俺には無理です。だから、最初に時間が掛かろうが教育はさせて頂きます。


 「16歳か。早く不老薬を作らないとな。人の一生なんてあっという間だ」


 「ヒューマンだとそうでしょうね」


 カタリーナはエルフだからまだ余裕があるもんね。既に100年以上生きてるけど、それでもエルフにしては若い方だ。


 「アンジーが焦ってるからね」


 「本人の前では言えませんが、そうですね」


 俺が16歳になったって事は、アンジーはそろそろ36歳になる。見た目は妖艶なお姉さんって感じだけど、それでもヒューマンである限り加齢での衰えはくる。


 俺はまだまだ成長期だから大丈夫だが、アンジーはさっさとその薬を完成させて欲しいと思ってるっぽいんだよね。


 「世界樹関連ならちょろっと忍び込んでパクってくるってのも出来るんだけど、不老薬の材料は竜が関係してるからなぁ」


 色々な資料を集めたりして、材料と製法はある程度分かっている。蘇生薬の方で材料になる世界樹ならまだ簡単だったんだが。


 不老薬の方は竜種の素材が必要なんだよね。で、竜の目撃情報なんてどこにもない。


 「あ、勇者がいるじゃん」


 「なるほど。接触してる人間に連絡しておきます。魔物の話の流れから自然に聞き出せるでしょう」


 勇者がどこまで口が軽いかによるけど、どこに生息してるかぐらいは聞き出して欲しいな。せっかく原作知識とやらを持ってるっぽいんだしさ。有効活用させてもらおう。


 「まあ、勝てるか分からないんだけど」


 「伝説の存在ですからね。私も御伽話でしか知りません」


 ドラゴンって普通は強いよなぁ。

 作品によってはへなちょこドラゴンもあり得るんだけど、ここはテンプレを踏襲してる世界だし。


 うちの上位陣だけで勝てる存在なら話は早いんだけど、そこまで上手くいかないかな。

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