第149話 情報共有
その後、夜明け直前までペテス領について、他国について詳しく聞いた。
デッカー領の伯爵さんからも情報を抜きたいんだけど、あの人は俺が結構な情報通だと勘違いしてる節がある。
出来る人間風に思われてるみたいだし、そのイメージは大事にしたいので、手駒にしたサムスに出来る限りの事は聞いた。
「じゃあ、転送箱を広めるのと、人と場所の選定はお願いね」
「ははっ! 万事お任せ下さい! その暁には…」
「ちゃんと正当な報酬は渡すよ」
「ありがとうございます!!」
拷問後から、正確に言えば商売の話をしてから一気に忠順になったなぁ。
選民思想さえなけりゃ、お金大好き人間みたいで扱いやすくて助かる。ちゃんと報酬さえ渡しておけば、働いてくれるって事だからね。
この調子で役に立ってもらうとしよう。
「何かあったら転送箱で連絡して。それか直接商会の方に来てくれたら誰かが対応してくれるから」
「かしこまりました」
よし。帰るか。
夜更かししちゃったから眠いです。
帰って寝て、起きてから情報共有かな。
「パラエルナ王国ですか」
おはようございます。『クトゥルフ』のレイモンドです。よろしくお願いします。
って事で、早速サムスに聞いた事をカタリーナに報告。本当はホルスとアンジーにも聞いて欲しかったけど、二人ともお仕事中みたいで、今は手が離せないみたいだ。
後からカタリーナか俺がもう一度説明したら良いだろう。
俺は簡易地図を広げながら、サムスに聞いた港街がある国を指す。
「この国は昔から帝国が狙ってる国らしくてな。帝国には海がなくて、ずっと海がある領地を欲してるらしい。で、このパラエルナ王国のディエルって港街がこの大陸では一番栄えてるって噂だ」
俺は知らなかったんだけど、帝国には海がないらしい。塩とかどうしてるんだろうね。そんな値段が高い印象はないけど。岩塩が取れる場所とかがあるのかな?
それはさておき。
帝国は海がないから海に面してる領地が欲しい。なら、ここらで一番栄えてるパラエルナ王国を狙おうってなったんだけど、それを周りの他国が許さなかった。
帝国にそこの利権を握られると更に手が付けられなくなると思ったんだろう。
昔は支援だけにしてたみたいだが、帝国が考えなしに周りにも喧嘩を売るもんだから、いつしか周辺諸国は結託して同盟を結ぶ事になったとか。
「デッカー領から馬車で一ヶ月以上は掛かる長旅になる」
「なるほど。やはり遠いですね」
うむ。遠い。
交通手段が徒歩か馬車しかないし、前世みたいに道も整ってる訳じゃない。
トラブルとかがあったらもっと時間が掛かるかもな。
「ボスが行く予定ですか?」
「一応その予定。今、直近で抱えてる問題なんて、アーサーの処遇ぐらいでしょ。そっちは正直どうなっても良いし、行くなら早い方が良いかなと」
俺が拠点に居ても特にやる事ないしね。
何かあったら転移で戻って来れるし、行く先々で転移スポットは増やしておきたいから。転移装置を置く拠点はまだ用意出来ないから、直接俺が出向くしかないんだよね。
「ではそのように予定を組んでおきます。それと大規模農場ですか?」
「うん。ペテスから少し離れた場所に新しく農場を作ろうかなと」
サムスと話したのは、他国の事じゃなくて、ペテス領の収益を上げる話もした。
お金大好きなサムスは、税収を上げるぐらいしか思い付いてなかったみたいだが、税は上げすぎると逆効果だ。
ある程度平民にもお金を持ってもらわないと、長期的には儲からない。
それならば『クトゥルフ』が出資する形で、ペテス領内に大規模な農場でも作ろうかと思いまして。新しく雇用も生まれるし、出来た農産物は俺達が買い取る。
「ホルトが秘密基地を広げるって言ってたけど、滅茶苦茶広げれる訳じゃないからさ。それなら土地が余ってるペテスを有効活用しようかなと」
ペテスは魔物の脅威があるせいで、あまり外に新しく街やら村を作れない。
せっかく結構広い土地があるのに勿体よね。
魔物の脅威も俺達が毎日の様に浅層から深層までレベルアップの為に狩りをしてるから、結果的に間引く形になってる。
特に魔物が減ってる気がしないのが不思議なんだけど。
「その農場で大豆とかその他諸々、うちで大量消費する予定のモノを育てようかと。米にも目星がついたしね」
「? どこかで米は見つかったのですか?」
そう。米の情報をとうとう手に入れたのだ。パラエルナ王国はジャパングっていう、他の大陸との交易が滅茶苦茶盛んに行われてるらしい。大陸というか島国なんじゃないのって思うんだけど、そこは行ってみるまで分からないな。
ジャパングですよジャパング。
ゲームかラノベの世界って情報がなくてもピンときますよ。これ、絶対異世界あるあるの和風な国だろ。
実際、サムスは醤油や味噌は知らなかったものの、米は聞いた事あると言っていた。
この大陸ではあまり評判が良くなくて出回ってないはずだと。
なんかべちゃべちゃで美味しくないって情報があって、みんな敬遠してるらしい。
多分ちゃんとした調理法を知らないんだろう。
「籾種さえ手に入れば、こっちでも田んぼさえ用意すれば生産出来る筈。多分、きっと、めいびー」
「曖昧ですね」
仕方ないじゃん。
お米の育て方なんてふわっとしか知らないし。これなら田舎の爺ちゃん婆ちゃんの家に帰省した時に、田植えの仕事を手伝っておけば良かったぜ。
眺めてたぐらいで、本当にふわっとした知識しか無いんだよなぁ。
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