第148話 ネズミの拷問


 「お、お前達はここが何処か分かってるのか!?」


 「ええ。サムスさんの寝室ですね。中々豪華で感心したものです。結構お金持ってますねぇ」


 徐々に冷静さを取り戻した領主のサムス。

 まだちょっとテンパってるみたいだけど、俺達とお喋り出来るくらいには復活したね。


 すると落ち着いてきたサムスは段々と顔を真っ赤にして、俺達に対して喚き立てる。

 一体何様のつもりだーとか、平民が入って来て良い場所じゃないーとか、まあ、色々言ってましたけども。


 とりあえず無視して、好きなだけ言わせてあげた。こういうのは一回全部吐き出させてあげる事が大切。うーん。俺は優しい。

 さっさと拷問して、はいって言わせた方が楽なのに待ってあげるなんて。


 ほら、マリクなんて合図はまだですかとばかりに、顔がウズウズしてらっしゃる。


 「な、なぜ誰も来ないのだ…? これだけ騒げば誰かが駆け付けるはず…」


 「ほう」


 なるほど。何も考え無しにピーチクパーチク言ってた訳じゃないと。

 てっきり馬鹿やってるんじゃないかと思ったけど、中々どうして悪くないじゃないか。


 「満足した?」


 「貴様、さっきから無礼だぞ。たかが商人の分際で、貴族たる私になんて口の聞き方だ」


 「帝国の貴族ってほんと面倒だよなぁ」


 追い詰められてるって分かってる筈なのに、この選民思想が抜けない。

 顔は焦りまくってるのに、なんでそんな神経を逆撫でする事が言えるのか。


 貴族は上、平民は下で魂レベルで染み込んでるんだろうな。それは大体間違ってないけど、今は間違いじゃないかなと脅してる側は思う訳ですよ。


 貴族の執事やってたジェイクも選民思想が根付いてたからね。あいつも元は下級貴族出身だったらしいし。


 「とりあえずお話出来るようにしようか」


 俺はマリクに目配せして合図をする。

 本当はこのままお喋りで説得出来るのが一番話が早かったんだけどね。


 やっぱり一回どっちが上かを分からせておかないと話にならない。

 貴族のサムスからすると、俺達が命令を聞いて当然って思ってるんだし。



 「うふふふ。ボスが言ってたのを試す時がきました」


 「な、何をするっ!!」


 情報部の人間でサムスを拘束。

 マリクは手にネズミと金属で出来た桶を持っている。


 ここまで見たら皆さんは何をするかお分かりだろう。そう、かの有名なネズミの拷問だ。


 ネズミを腹に置いて桶を被せてから熱すると、ネズミは熱さから逃れる為に腹を食い破ろうとするらしい。

 俺もそんなのをネットの説明で見ただけだから、本当かどうか知らないけど。


 ここで実証出来るな。


 サムスはまだ何をされるか良く分かってないみたいで、ネズミを気持ち悪がってるだけだ。


 「うふふ。では始めますね」


 「ま、魔法!? いや、そんな事は良い! 何をするつもりだ!」


 マリクが軽い火魔法を使って桶を熱する。

 魔法にびっくりしたサムスだけど、それよりも何をされるか分からないからか、かなりビビっている。


 「今、桶の中ではどんどん熱くなってるんだけど、ネズミは逃げ場がないんだ。すると、ネズミはどうすると思う?」


 何をされるか分からないのも怖いけど、理解しても怖いだろうという事で説明する。


 「ま、まさか…」


 「ネズミに腹を食い破られるのをお楽しみに」


 「や、やめろ! 何が目的だ!」


 とりあえずちゃんとお話出来るようになるのが目的ですねぇ。

 

 「ぎゃーっ!!!」


 こいつ以外にも何人か契約しないといけないし、さっさと済ませたいけど。

 マリクが楽しそうにしてるし、偶にはこういう機会をあげないとね。






 「な、何が目的なんでしょうか?」


 ネズミ拷問を始めて15分程でサムスはギブアップした。いや、普通に死にそうになった。

 やっぱり下水道にいたネズミ系の魔物じゃ、現代の拷問の代わりにはならんな。


 腹を食い破るペースが異常に早かった。

 マリクがポーションをぶっかけるのが遅かったら死んでたかもしれん。


 それはさておき。

 あっさり忠順になったサムスに契約をしてから、目的を話す。


 この転送箱を売ってみないかと。


 「こ、これは凄い代物です! いくらでも売れますよ!!」


 「俺は帝国の貴族にツテとかないからさ。サムスが売ってくれたら助かるなぁって。その提案をしようと思ってたのに、なんか職人を全部寄越せとか言ってきちゃって。ねえ?」


 「その節は大変申し訳ありませんでした」


 深々と土下座するサムス。

 土下座の文化ってあるんだな。

 いや、スラム連中も制圧した時にやってたような? 覚えてねぇや。


 「お前は帝国貴族に転送箱を広げる事に注力してくれたら良いから。何か手助けして欲しかったら、ある程度はするし、しっかり分け前も渡そう。頑張ってくれよ?」


 「はい! このサムス! 粉骨砕身励ませてもらいます!」


 即堕ちすぎて怖い。

 そんなにネズミの拷問ってヤバいのかな。

 確かに自分の腹を食い破られるのは、想像しただけでキモいよなぁ。


 とりあえず何セットか転送箱を渡して、サムスの側近と屋敷の使用人何人かと契約する。素直に従わない奴はマリクが喜んで手を貸してくれました。

 これで帝国貴族の情報はある程度時間が経てば手に入れられるだろう。


 勿論将来的には商会の支店をもっと出して、手紙からの情報だけじゃなく、生で情報を集めたいけどね。

 流石にまだそこまで人員が整ってない。


 なんたって、荒れ始めてるペテス領のスラム地域ですら人員不足でまだ制圧出来てないからね。


 まあ、この辺は時間の問題って事で。

 育ったら逐一投入して、制圧していこう。

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