第143話 案内
「え!? ここはペテス領の森の奥なんですか!?」
「うん。S級冒険者ぐらいしか、簡単に入ってこれない場所。そこに俺達『クトゥルフ』の拠点があるんだ」
「えーっと『クトゥルフ』というのが、裏組織で『ルルイエ商会』は資金集めの為の商会って事ですよね?」
「そういう事だな。このサッキも元は敵対してた裏組織の人間なんだ」
「なるほど。だからサッキさんは盗賊みたいな顔をしてるんですね」
サラに説明を開始。
まずは俺達の本当の活動を教えた。
裏組織を支配して、ゆくゆくはそれを世界に広げて裏から世界を支配する。『ルルイエ商会』はカモフラージュの為の資金集め商会であるって事。
なんかシンプルにサッキの顔をディスってるような気がする。惚れてるんじゃなかったの? 俺の勘違い?
「でも『クトゥルフ』ってなんか裏組織らしい事してませんよね? そういう組織ってもっと奴隷売買とか、麻薬売買とかしてるものだと思ってました」
「それな。俺も説明してて思った」
サラちゃんに痛いところを突かれました。
『クトゥルフ』がやってるのって、裏組織の人間を吸収して、孤児も保護。
教育して職を斡旋するっていう、まともなムーブしかしてない。
奴隷売買はやる気はないし、奴隷にするぐらいなら『クトゥルフ』の人員にするしね。
うちはいつだって人手不足なのです。
麻薬は考え中。
正直全然やりたくない。
ラリって良い事なんて何もないし。
でも麻薬は規制とかしようとしても無理だ。絶対に密売する奴らが出てくる。
麻薬の魔力ってのは恐ろしいんだぜ。映画とかドラマの知識しかないけどさ。
だから俺達が販売して供給量をコントロールした方が良いのではと思ってる。
この辺はまだ迷ってるところだな。元日本人だからか、麻薬売買には抵抗があるんだよなぁ。……人殺しとかしてて今更だけど。
「まあ、今はそんな事しかしてないけど、将来的には俺達にとって都合の悪い奴らが出て来たら、そいつらが善人であろうが殺すよ」
「分かりました」
分かりました? 分かったの?
もっとなんか抵抗感とかあると思ってたけど、なんか普通に受け入れてらっしゃる。
いや、話が早くて助かるけど、後々不満を爆発させるのはやめてほしいなぁって。
それはさておき、ここがどこかも説明して秘密基地内を案内する。
食堂、温泉、牧場、各部門毎の部屋。
そして訓練場。
「うわぁ! サッキさんもここで訓練して強くなったんですか?」
「ああ。俺より強い人間なんてたくさんいるぞ」
サラが1番目を輝かせたのは訓練場だった。
戦うのが好きなのかね? ローザと気が合うんじゃなかろうか。
因みにサッキのレベルは150ちょっと。職業は槍豪で、元はデッカー領のスラムでゴロツキをやってた奴だ。出来ればカンストするまで表には出したくなかったんだけどね。人手不足が深刻なのです。
「サラもまずは勉強と訓練だな。レベルが低すぎるし、戦闘技術も磨かないと」
「レイモンドさんの恩恵? でしたっけ? 私にもその特別な力があるんですよね?」
「万力な」
サラには鑑定の事やレベルの事も説明している。理解してもらうのに、中々時間は掛かったけどなんとか分かってもらった。
で、サラの恩恵の万力は非常にシンプル。
力が滅茶苦茶強くなる。これだけだ。
どれぐらい強くなるかは、これから要検証だけどね。将来的には『クトゥルフ』で一番の力持ちになるかもしれない。
「勉強っていうのは、文字の読み書きですか? それなら一通りできますけど…」
「ほう。それは良い。後は計算とか一般常識、ちょっとした専門知識とかも学んでもらう予定だ」
文字の読み書きが出来るのはありがたいね。大抵まずはここで躓くから。計算もだけどね。
専門知識は部門毎によって様々だ。
戦闘部だったら、野営知識とか、解体の仕方、食べられるモノと食べられないモノの見分け方だったり、人体の構造だったり。
そういうのを一通り学んだら、晴れて独り立ちって訳だな。
「へぇー。良く考えられてるんですね」
前世知識を使ってるだけだけどね。
『クトゥルフ』内で学校教育から就職って流れを作ってる感じ。
「あの! この『クトゥルフ』で1番強い人は誰なんですか? サッキさんほどの人でも勝てない人がいっぱい居るって言ってたんですけど…」
「1番強いのはアンジーだな。さっき俺の護衛をしてたお姉さん。サッキが50人居ても勝てないと思うぞ」
サラはやっぱり戦闘に興味深々か。
恩恵も戦い向きだし、戦闘部所属になるのは間違いないかな。
後は戦闘部の中でもどこに所属させるか。
ローザには傭兵部門を任せる予定で、後は冒険者部門と、警備部門、裏組織部門ってあるんだけど。
ローザの補佐にするのもありか。
サラはローザと違って考え無しに突っ込むような事はしなさそうだし。いや、簡単に俺達についてきてるから、やばいか? その辺は教育しながらおいおい考えていくか。
「さて、みんなはまだ仕事中だから、紹介するのは後にして。次は俺が話を聞かせて欲しいんだけど」
「はい。アーサーの事ですよね?」
そうね。なんでバイバイしたのかもまだ聞いてないし、その勇者君がどういう人間なのか、転生者っぽい事を言ってなかったかとか、色々聞きたい。
「サッキ、アンジーとカタリーナ、ホルトを呼んできて」
「うっす」
これは幹部達も聞いた方が良いだろう。
正直『クトゥルフ』には幹部とか、下っ端とかの線引きがあんまりないからあれなんだけど。人が揃ってきたら、こういうのも決めないとな。
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