閑話 アリーナ 


 「にゃ!」


 「グォォォ…」


 倒せた。やっと倒せた。

 浅層で最強の熊の魔物を単独で倒せた。


 「疲れたにゃ」


 「これでアリーナは浅層卒業だな」


 「深層まではまだまだにゃ」


 ボスに盗賊から助けられてからは、驚きの連続だった。まさか盗賊なんてのよりも、もっと恐ろしい組織を作ろうとしてるとは思ってもみなかった。


 裏社会を支配する。

 最初は言ってる事が分からなかったけど、秘密基地と呼ばれるところで、教育を受けてからボスのしようとしてる事が分かった。

 この世界の経済と生産を牛耳ろうとしてるのだ。


 「にゃー」


 「ん? どうした?」


 監督役のこの強面の男も元はスラムでチンピラをやっていたと言う。

 しかし早い段階でボスの組織に吸収され、教育、訓練を受けて今では深層にも突入出来る人材らしい。


 流石に一人では勝てないらしいがそれでも凄い。アタシは深層の魔物を死体で見た事あるけど、とても倒そうなんて思える相手じゃなかった。


 ローザちゃんやアンジェリカさんは単独で倒せるらしい。恐ろしい。

 経済と生産だけじゃなくて、暴力でも支配しようとしてるんじゃないか。


 「ま、アタシにはそんなのどうでも良いにゃね」


 ボスに従ってれば美味しいご飯をたくさん食べれるのだ。あんなに美味しいご飯はここでしか食べられない。それだけで辛い訓練も難しい勉強も頑張れる。


 ☆★☆★☆★


 『名 前』 アリーナ

 『年 齢』 16

 『種 族』 獣人

 『レベル』 81/456


 『体 力』 E/C

 『魔 力』 D/A

 『攻撃力』 D/B

 『防御力』 E/C

 『素早さ』 C/S

 『知 力』 D/A

 『器 用』 C/EX


 『恩 恵』 忍術

 『職 業』 隠者

 『属 性』 無 風 水


 ☆★☆★☆★


 「おっ。アリーナも浅層卒業か」


 「頑張ったにゃ」


 食堂で最近新しくメニューに出てきたラーメンを啜ってると、ボスがやって来た。

 一緒に話をしてると、浅層卒業を褒めてもらった。


 「次のオーガは手強いぞー。俺も初めての時は苦労した」


 「そうにゃのにゃ?」


 この人は不思議な人だと思う。

 ある時は残虐な一面を見せて、ある時は優しい一面を見せる。

 特に子供に対してはかなり甘い。


 この組織には定期的に孤児が運ばれてくるけど、みんな手厚く迎えている。

 カタリーナさんが言うには、自分が元孤児だった影響じゃないかって言ってたけど。


 本人は将来の為の投資だなんて言ってるけど、ただただ見捨てられないだけなんじゃないかなーと勝手に邪推している。


 「相性が悪いだろうな。あれは脳筋だから、アリーナが単独で勝てるようになるのは、結構時間が掛かるかも」


 「アタシの忍術でも無理にゃ?」


 「魔法と変わらないもん」


 「失礼にゃ」


 ボスは最初、アタシの忍術に興味深々だった。でも大体は魔法で真似れるとなると、急激に興味が無くなったらしい。


 あれはカタリーナさんがおかしい。

 アタシの忍術を見て、虚空に向かって真似て下さいって言ったら、大抵真似出来るんだ。精霊はずっこい。ボスが常日頃から言ってる事だ。


 分身や身代わりは出来ないみたいだから、なんとかアタシの忍術のプライドは保ったけど悔しい。ボスに言われるまでは無意識に使ってた力だけど、これまで何度もアタシを助けてくれた力なのだ。


 なんとかあっと驚く忍術を見せつけてやりたい。忍術と魔法はほとんど変わらないなんて言われたくないのだ。

 やっぱりボスが言ってた千◯とやらの練習を本格的にするべきかな…。


 「後はイヴィレオンだな。あいつは周りに擬態してて素早いから厄介だ」


 「アタシは獣人にゃ。匂いで見分けられるにゃ」


 「そうか、それがあったか。良いよなぁ。エルフは精霊魔法が使えて、獣人は匂いとか音に敏感。ドワーフはまだ会った事ないから分からんけど、何かしらの特性があるんだろう。それに比べて人間ときたら…」


 ボスはため息を吐きながら、自らの種族に落胆する。確かに人間は何もかもが大体平均だ。種としては一番多いから、繁殖能力に優れてるんじゃないかなと思うけど。

 それぐらいしか見るところがない。


 「でも良い事ばっかりじゃないにゃ。この前の異臭騒動の時は頭がおかしくなると思ったにゃ」


 「その節は大変失礼しました」


 食堂からありえないぐらいの異臭がした時は、アタシだけじゃなくて『クトゥルフ』に所属してる獣人全員が苦しんだ。

 鼻が良すぎるというのも考えものだ。時にはこれが弱点にもなる。


 「アリーナが早く俺達ぐらいのレベルになってくれたらな。深層の奥に行けるかもしれないんだが」


 「まだまだ先の話にゃ。まずは教育課程が終わらないと、レベル上げに集中出来ないにゃ」


 「そうだな。まあ、気長に待つよ。アンジーに焦りすぎって言われてるしな」


 アタシも出来れば早くレベルを上げて、もっとみんなの役に立ちたいと思う。

 盗賊から助けられた恩もあるし、毎日美味しいご飯を食べさせてもらってる。


 当たり前の様にご飯が出てくるっていうのは幸せな事だ。ここに来る前、盗賊に捕まる前は一日一食食べれたら良かったのだ。


 いつまでもこの幸せの日々を続ける為に。

 早くみんなの戦力になって、ボスや他のみんなを助けないといけない。

 私は恩恵持ちで期待されているのだ。もっと勉強と訓練を頑張ろう。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 バカ臭いって言わないんですね…。

 作者は大阪の人間なんですけど、日常レベルで使ってたから当たり前にあるもんだと思ってましたw


 まあ、滅茶苦茶臭いよって事なんですけど、別の意味も確かにあるなって事で修正しました。なるべく関西弁とか出さないようにしてるんですけど、偶に出ちゃってますね…笑。


 以後気を付けます。

 気を付けても出ちゃうかもですがw

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