閑話 エリザベスの開発


 「エリーちゃん、この液体はちょっとはダメかな。耳がちょっとヒリヒリするのー」


 「分かった。改良する」


 「髪はサラサラになるんだけどねー」


 研究部屋で新しい魔道具の開発に勤しんでるとローザお姉さんがやってきた。

 ボスの知識からシャンプーとリンス、ボディソープを作ったのはいいものの、結構失敗続き。今度こそと思ったのも、どうやら人体に害があるみたいだ。

 ローザお姉さんは既にボスに魔法で治してもらったみたいだけど、ちょっと申し訳ない。


 「また新しく出来たら渡す」


 「わかったー!」


 まさかシャンプーとかの開発がこんなに難しいと思わなかった。ボスのあやふやな知識しかないから、仕方ないんだけど。

 薬師の人達を集めてまた配合を考えなきゃ。



 「リズ。ボスに聞いたんだけど…」


 魔道具の製作を中断して、シャンプーの改良案を考えてるとアンジェリカお姉さんが珍しく研究部屋に来た。この人はあんまり生産組の方に近寄らないんだけど。


 どうやらボスに乳液やら化粧水、保湿クリームの存在を聞いたらしい。

 最近肌荒れに悩んでると愚痴を吐いたら、ボスの前世にそういうものがあったのだと。


 確かにアンジェリカお姉さんは、綺麗なお姉さんだけど少し歳が…。


 「リズ? 何考えてるのかしら?」


 「私何も考えてない」


 怖い。この人は恩恵のせいなのか、心が読めてるんじゃないかと思う事がある。

 今も少しおばさんだなと思っただけなのに…。


 「まさかおばさんだなんて思ってないわよね?」


 「アンジェリカお姉さんはお姉さん」


 フルフルと首を振って目を合わせないようにする。カタリーナお姉さんに『エルフって胸が大きくならないの?』って聞いた時と同じ雰囲気を漂わせている。

 これはいけない。私は子供ながらに学んだのだ。誰にでも触れてはいけないモノがあると。


 「全く。今のリズは子供だから分からないでしょうけどね。大人になると、色々大変なのよ? 幸いボスがまだ女として見てくれてるから良かったものの--」


 アンジェリカお姉さんがこうなると話が長くなる。それを無視してお姉さんがボスに聞いてきて、紙にメモした乳液とかのあやふやな知識を読む。

 いつもは頼りになる人なのに。やっぱり年寄りは長話が好きなんだ。ボスが言ってたもん。


 「またリズが良くない事を考えてるみたいね?」


 「私の脳みそは研究の事しか考えてない」





 「出来た」


 シャンプーもリンスもボディソープも。乳液とかの美容用品も。まとめて完成させた。

 シャンプーとかは今回こそ自信作。美容用品も似たような感じだったからすぐ出来た。


 早速ローザお姉さんとアンジェリカお姉さんに渡す為に研究室から出ようとしたところで、ボスが来た。ハッと思って時計を見る。

 因みに時計は私が作った。


 「お前また徹夜したな?」


 「してない。今帰る所だからセーフ」


 「もう朝になるんだが?」


 「まだ完全に朝になってない。だからセーフ」


 「アウトだ」


 しまった。開発に熱中しすぎて時間を忘れてしまっていた。今度徹夜したら生産部屋に立ち入り禁止一週間って言われてたのに。

 まさかボスに見つかるとは。いつもはこの時間は寝てるのに。


 「お前には色々頼んでるけど、徹夜してまでやれとは言ってないぞ。就業時間はちゃんと守ってもらわないと。それにお前はまだ子供なんだ。ちゃんと寝ないと身長が伸びないぞ」


 「私は伸びなくても問題ない」


 「ああ言えばこう言う。成人するまで働くのは無しにしようかな」


 「分かった。次からちゃんと守る」


 「よろしい。でも生産部屋に立ち入り禁止一週間だからな」


 「むぅ」


 ボスは笑いながら私を抱き上げて髪をわしゃわしゃと撫でる。雑な撫で方だけど私はこれが好きだ。褒められてるって感じがする。


 「ボスはなんでこんな時間も起きてるの?」


 「大人の事情だ」


 「ヤりまくってたんだ」


 「言い方」


 授業で習った。男女でそういう行為をすると。男同士、女同士でもあるらしい。何が面白いんだろうか。大人になれば分かるかな。


 「私もやりたい」


 「馬鹿言え。15歳になってからちゃんとした相手を見つけろ」


 「ボスがいい」


 「じゃあちゃんと寝て大人のお姉さんになってもらわないとな。俺は子供に手を出す趣味はないんだ」


 「分かった」


 「まあ、お前が大人になる頃には気になる男の人でも出来るんじゃないか?」


 いやだ。私はボスが良い。

 『クトゥルフ』のみんなは良い人だけど、ボスだけは別格。


 どうやらボスは私が言ってる事を本気にしてないらしい。これは早くアンジェリカお姉さんみたいな綺麗なお姉さんになって、ボスを見返してやらないと。


 早く成長する薬とかないかな?

 後は胸を大きくする薬。これはカタリーナお姉さんも喜ぶかも。


 「研究室に戻らないと」


 「お前は何を言ってるんだ」


 呆れた顔をしてボスが私を見る。

 気付いたらローザお姉さんと一緒に使っている部屋についたらしい。


 「ほら。とりあえず寝ろ。明日からは生産部屋に行ったらダメだぞ」


 「おやすみ」


 ボスの返事はーという声を無視して、ベッドに飛び込む。生産部屋に行かなくてもアイディアは考えられる。

 明日からたくさんアイディアを考えて、謹慎が解けたらすぐに開発出来るようにしないと。



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 大阪でもバカ臭いを使わないだと…。

 年代なのか、住んでる場所によるのか…。

 それより関東の方が使ってるっぽい。

 言語って難しいね…。

 あ、作者は因みに今年で30になりますね。

 住んでる地域は流石に言えませんがww

 

 

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