第133話 決断
「まず帝国の行商人が急に結構な頻度で来るようになって、何か事件でもあったのかと視察に行ったのがきっかけだ」
はて、どうしたもんかと迷ってると、伯爵さんが話を続ける。
こっちが知ってる情報はやるから、さっさとお前もキリキリ吐けよって事かな。
多分急に行商人が来るようになったのは、盗賊が居なくなったからじゃないっすかね。あそこは国境の兵士と組んで襲いまくってたみたいだし。うちのアンジーさん筆頭に戦闘部の人間がメッ! ってしたからもう大丈夫ですよ。これからは行商人が来るんじゃないですかね。また馬鹿をやらかさない限りは。
「まあ、帝国で大きい事件はあったみたいですね。そういう情報は入らないのですか? 結構街中でも話題になってましたけど」
「帝国の騎士団長が行方不明になったという話か? あれは本当なのか?」
「どうやら本当みたいですよ。私も詳しくは知りませんが。辺境伯も亡くなったりと、そこそこ大きな事件になりましたね」
「むぅ」
わははは。うっかり手が滑ってな。
ハートブレイクショットをかましてしまったぜ。行方不明じゃなくて、死んだんだけどな!
「帝国が揺れるか…。しかしな…」
「この国は帝国と仲があまりよろしくないようですが…」
「この国というより、周辺国全てだな」
スパンダ帝国はこのフレリア王国と他に二つ隣接してる国があるんだが、そのどことも仲が悪い。
逆にフレリア王国と他二国は対スパンダ帝国で協調してるらしい。
三国に囲まれといて、それでも強国であり続けるって事は、やっぱりスパンダ帝国って強いんだな。
「しかしゴドウィン騎士団長が居なくなったとてな…。帝国にはまだまだ手練が多い。安易にこれをチャンスと攻め込む訳には…」
え? ゴドウィン以外に強者がいるの?
騎士団長って一番強いんじゃないの? いや、ゴドウィン並みに優秀な人間が居るって事か?
しまったな。スカウトしそびれた。
まぁ、ペテス領しか知らなかったから、仕方ないんだけど。やっぱりさっさと向こうにも支店を置くか。とりあえずでも良いから情報が欲しい。知らないのは怖いよ。
全部の国にとりあえず支店を置いて情報収集したいねぇ。
「国境門が無くなった事と関係があるかは分かりませんが…」
「いや、実際にゴドウィン騎士団長が居ないと裏付け出来ただけでも大きい」
いや、俺の情報だけで信じるのもどうかと思うよ? 俺が帝国の回しモンだったらどうするんだよ。この誤情報で調子に乗って攻めて、返り討ちにあうなんて事もありえるのよ?
まあ、今回はゴドウィンがアイテムボックス内にいるけどさ。そのうち復活させたら連れて来てびっくりさせてやろうか。
冗談だけど。
ふーむ。この伯爵さんはそれなりに優秀だと思ったけど、もしかしたらそうでもないのかも? ダンディな顔に騙されたぜ。
情報の大切さがまるでわかっちゃいない。俺が余程信用出来る奴ならまだしもね。
そこまで付き合いが深いって訳でもないし。
とりあえず伯爵さんは自派閥の貴族の引き締めをするらしい。
伯爵さんは戦争反対派らしく、この情報でチャンスとばかりに攻め込みたがる連中を抑えると。
帝国に勝てないから他国と協調してるのに、なんで攻めようとするのかね。
この世界の貴族は馬鹿ばっかか。
「ふーむ」
「帝国にゴドウィン以外の強者なんて居たかしらね?」
秘密基地に戻って来た。
会議室に、カタリーナ、アンジー、ホルトを呼んで話し合いだ。
アンジーはゴドウィン以外の強者に覚えがない様子。その情報は話半分にしといた方が良いと思うね。
俺も帰ってる途中に気付いたけど、この国の連中はとにかく弱い。それでゴドウィン以外にも強者が居ると思ったんじゃないかと思ってる。
「しかしアンジェリカさんがペテス領に引きこもってる間に新たな強者が誕生した可能性もあります」
「そうね。私も積極的に情報を集めてた訳じゃないし」
ホルトがもっともな事を言う。
恩恵持ちが台頭してきた可能性はあるよね。伯爵さんに話を聞けば良かったかな。
でも帝国に居たのに有名っぽい奴を知らないのは問題かなーと思って。まだまだ強者はいますねー雰囲気を出して知ってるアピールをしちゃった。
「ボス、どうしますか?」
「未熟なままで出すのはなぁ」
「しかし情報面で後手に回るのも問題です」
カタリーナさんもおっしゃる通り。
俺達が今迷ってるのはペテス領だけでも、支店を置くかって話だ。でもまだ人材がね…。元からペテスに居た奴は顔見知りがいる可能性があるから使う訳にはいかないし。
そうなると未熟な奴に任せないといけないんだよね。でも情報は欲しい。迷いマイマイ。
「ミスったなー。ペテス領を引き上げる時に商会一つは残しておくんだった」
あの時は焦ってたんだ。
とりあえず逃げる事しか考えてなかった。
適当に作戦を考えてたツケだね。
「支店を出すなら早めの方がいいかもしれないわ。勘だけど」
「良し、出すか」
アンジーがそう言うなら出すよ。
その勘は大事。恩恵さんきゅー。
働かせながら育てるしかないか。ある程度育つまでは出したくなかったけど、仕方あるまい。
「潰した商会から引っこ抜いた奴を使おう。こっちから逐一指示を出せばとりあえず営業は出来るだろ。計算とかも俺が満足するレベルではないけど出来るし。最初の方はしんどいかもしれないけど、頑張ってもらおう」
「では早速準備に取り掛かります」
なぁなぁで決めちゃったけど大丈夫かな?
アンジーが早めの方が良いって言ってるし、きっと何か理由があると思うんだけど。
出来れば面倒事じゃなかったら嬉しいです。
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はい。って事で今章は終了です。
思ったよりも長くなっちゃったぜ。
もっとコンパクトにする予定だったんだけどね。なんでだろうね。
とりあえず『ルルイエ商会』を建てるのが目標でそれを達成出来たから良し。
次章はどうなるでしょうね。もしかしたらレイモンドとアーサーの邂逅があるかも?
もしくはすれ違うかも? お楽しみに。
ではではまた次章で〜。
あ、作者は他にも作品を更新してるので、良かったらそちらもご覧下さーい。
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