第132話 盛りだくさん
「優秀かと思ってたけど、レベルは大した事ないな」
「その分職業は優秀です。奇跡的に今『クトゥルフ』で欲してる人材が流れてきましたね」
「まぁな。それはラッキーだ」
例の商会の何人かが荷造りをして逃げ出そうとしてた。家族も連れて街から出ようとしてたんだけどね。俺が見逃すはずがない。
見張ってた奴らにお願いして、家族含めて拘束してやりました。
そこからは転移で秘密基地にご案内。
中には俺が『ルルイエ商会』の商会長って事を知ってる奴も居て驚いてたけど。
まぁ、関係ないね。
俺達に手を出しておいて、何も無しで逃げられるなんて思わない事だ。
きっちり代償を払ってもらう。ふははは! 死ぬまで働いてもらうからな!!
「なんか家族だけは! みたいに言ってくる人が多くて俺が悪い事してるみたいになっちゃったよね」
「実際に悪い事をしてるじゃないですか。誘拐は立派な犯罪ですよ?」
「先に手を出してきたのはあっちですー」
「向こうは裏のほぼ人権がない人間だから安易に手を出したのであって、ボスが関わってると知ってたら、手を出さなかったと思いますよ」
知らん知らん。向こうが情報収集を怠ったのが悪い。まぁ、なるべく漏れないようにはしてますが。
表向きクリーンな商会を目指してるうちが、裏社会と関わってる事がバレたら面倒だし。
「書記、指揮官、教育者。俺が欲しい人材が盛りだくさん。執事、メイドなんてのも居たな」
執事とメイド。何気に初めて見たんだよね。レアなのかな? 結構ありきたりな職業だと思うんだけど。
「ありがたいです。元から商会を経営してたのも大きいですね。基礎教育が終わればすぐに現場に出せます」
「この領では無理だけどな」
勿論捕らえた奴は捕まえて家族まとめて契約した。優秀な職業持ちが多くてなにより。
カタリーナもホクホク顔だ。
「他にもまだ商会には何人か優秀な人間が残ってるみたいですよ。それらの人間も確保してしまいましょう」
「だな。あれだけの人数が一気に居なくなったらあの商会もすぐに潰れるだろ。ついでに金品とかも貰っておくか」
早速捕まえた奴に事情聴取して、優秀な人間といるならついでに家族も攫っちゃおう。
で、商会の金品やらを奪って終わりだ。
後は勝手に潰れていくさまを高笑いしながら眺めてやる。一気にこれだけの誘拐とかあったら、流石に事件になるよなぁ。
まぁ、表向きは俺は全く関係無しだから疑われる事はないだろう。裏社会に手を出して報復されたとでも思ってくれたら良い。
「これで伯爵さんがスラムに干渉してきたら面倒だな」
「どうでしょう? 意図的に放置してるなら、適当な所で切り上げるような気もしますが」
俺なら徹底的に調べるけど。
一つのそれなりの商会が潰れて、領民が行方不明になったんだぞ?
民の事を第一に考える系の領主なら、また誘拐があるんじゃないかって不安に思ってる民の為にも調査するんじゃないかな。
「うん。一応マーヴィンに連絡しとくか。俺達に関連付けられそうなものは一端全部回収しよう。で、転移装置も一端回収だ。あれは絶対に見られたくない」
「ではそのように。早速連絡しておきます」
これでこの領地に関しては一段落かな。
街を歩いて恩恵持ちを見つけるのはやるけど。それ以外は人材が育つまで、ゆるりと商会経営しよう。
二週間後。
『クトゥルフ』に手を出してきた商会は潰れた。優秀な人材がほとんど居なくなって、金品や商品まで無くなったんだ。そりゃ経営なんて出来んわな。
商会長さんはスラムの『クトゥルフ』って闇組織にやられたんだって、狂ったように宣伝してくれた。今では殺されるとか、脳みそをくり抜かれるとか、物騒な事をぶつぶつ呟きながら、安宿に引きこもって怯えてるらしい。
店と土地を売っても、どうやら方々に借金があったみたいで、取り立てられてほぼ無一文。これからどうなるのかね。一応見張らせてはいるけど。
「ではこちらを」
「すまぬな」
そんな俺は今伯爵さんのお屋敷に居る。
なんの用だと思ったけど、転送箱が追加で欲しいとの事だったので、素直に持ってきた。
安い買い物じゃないんだけどね。まあ、使ってくれるのはありがたい。情報もちょっとずつ入ってきてる。今はまだ情報部の人間でも余裕で捌ける程度の量だ
人材が育つのが早いか、転送箱が広まるのが早いか。壮絶なチキンレースが始まろうとしてるな。ブラックな職場にしたくないから、是非早く人材が育ってほしいと思ってる。
「最近帝国の品がこちらにも流れてくるようになってな」
「みたいですね」
「どうやら帝国側の国境門が無くなってるらしいのだ。私も先日確認しに行って驚いたよ」
「国境門…? 私が通った時にはフレリア王国の国境門しか通ってませんが…?」
商品も渡したし帰ろうかと思ったら、世間話風にとんでもない事を突っ込んできた。
国境門ね。あれは壊しちゃいました。無かった事にしようと思いまして。
だから俺も国境門なんてありませんでしたよムーブをかます。オレシラナイ。ホントダヨ。
「私もいつから無くなってのかは正確に把握しておらぬ。帝国で何かあったのかと思ってな。レイモンド殿は帝国から来たのであろう? 何か情報は持っておらぬか?」
ふむ。なるほど。
俺ちゃんが疑われてる感じじゃなさそう。
まぁ、国境門が無くなるなんて、普通はかなり大がかりな事をしないと無理だからね。
はてさて。どこまで話して良いものか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます