第130話 エリザベスと


 「あ、ボスだ」


 「調子は?」


 「微妙。最近は同じ物を繰り返して作ってるだけだから面白くない」


 翌日、生産部のところにやってきた。

 商会が人気になったせいで、ここも段々忙しくなってきた。まぁ、量産体制は整ってるから、品切れになるほどじゃないけど。


 でも転送箱は今のところエリザベスと他数名しか作れないんだよね。

 理由は多分レベル。作れる奴はレベル200でカンストしてるんだ。後は能力値も影響してると思う。


 ☆★☆★☆★


 『名 前』 エリザベス

 『年 齢』 9

 『種 族』 ヒューマン

 『レベル』 239/456 


 『体 力』 E/C

 『魔 力』 B/S

 『攻撃力』 E/D

 『防御力』 E/D

 『素早さ』 E/C

 『知 力』 A/EX

 『器 用』 A/EX


 『恩 恵』 精密操作

 『職 業』 高位錬金術師

 『属 性』 無 火 水


 ☆★☆★☆★


 勿論エリザベスも200は超えている。

 でも戦闘部と違ってレベルの上がりが遅い。


 その職業に沿った行動をすると、魔物やら人を殺さなくてもレベルは上がるんだよね。

 上がり方が遅いだけで。


 だから毎日戦闘部と同じように頑張ってる生産部でカンストしてる奴は少ないんだ。

 命の危険がないからかね。理由は分からん。


 転送箱が広がりだしたらかなりの数が必要になるだろうから、今のうちに作り溜めしてるんだけど、作れる人が少ないからエリザベス達に負担が少し掛かってる。


 大好きな研究発明が満足に出来てなくてご不満のようだ。


 「レベルチェックに来たんだ。カンストしてる奴が増えてれば作り手を増やせるだろ?」


 「是非お願いする」


 どこの部署も定期的にレベルチェックをしに来ている。やっぱり自分の成長ってのは、モチベーションになるだろうしね。

 前回からいくつレベルが上がってるよってのは教えてあげるようにしてる。


 資料を片手に一人一人レベルを言っていく。これも数少ない俺の仕事。

 俺にしか出来ないからね。時間と負担は掛かるけどしっかりこなす。




 「限界突破の手掛かりは未だ無しか」


 「難しい。身体そのものを作り替えないと無理なんじゃないかと最近は思ってる」


 レベルチェックが終わるとエリザベスの作業部屋でお話。俺が椅子に座るとエリザベスは膝の上に乗ってきた。偶に甘えてくるんだよね。可愛い。普段あんまり表情すら変わらないから尚更だ。


 今、エリザベスに重点的に取り組んでもらってるのは三つ。


 不老薬、蘇生薬、レベル上限を突破する何かだ。


 不老薬と蘇生薬の方は素材があれば、とりあえず試験的に作れるかもしれないとは言っている。

 色んな資料を読んでとりあえずの目処はついたらしい。


 その素材がまだ全然集められてないけど。

 世界樹の葉とか竜の血とか。ちょっと今は無理ですねぇ。


 世界樹なんてエルフの国に行かなきゃ。

 カタリーナを追い出した馬鹿な国って印象しかないけど。話が通じない奴が多そう。

 目的は葉だけだから、忍び込んでパクろうかな。


 でも『クトゥルフ』の目標は世界展開。

 エルフの国にも店を出したい。それにはどうにかエルフ至上主義をなんとかしないといけない。


 偉い奴を契約すれば良いってもんじゃない。ほとんどの国民がエルフが一番だと思ってるらしいから。苦労するだろうなぁ。


 それはさておき。


 問題は限界突破の方法。

 『クトゥルフ』にはカンストしてる奴が増えてきた。マーヴィンとかチャールズとかアハムとか。初期の戦闘部の奴はほとんどカンストしてる。


 勿体無いんだよね。今は技術を上げる事で誤魔化してるけど、本当に勿体無い。


 「まずボスにしかレベルの概念がないから、資料が全くない。何もかもが手探りになる」


 「そうだな」


 問題はそこですよ。なんの手掛かりもない。不老薬は伝承とかがあったから、まだなんとかなった。

 鑑定が存在しないっぽい世界だから、そういう資料や言い伝えですらないのだ。


 「限界まで追い込んだらありえるかなと思ったけど、それも無さそうなんだよな」


 チャールズとかね。あいつはローザの相手で毎日の様に限界まで追い込まれている。

 でもレベルの上限を突破しそうな雰囲気はない。サンプル数が少ないかと思って、今度はマーヴィンもぶつけようと思ってる。


 だから好きなだけ手合わせしても良い権利なんてのをローザにあげた。

 何も考え無しにあいつらを犠牲にした訳じゃないんだ。


 効果がないとショックを受けるだろうから、詳細は言わないようにしてるけど。

 でもそれもそろそろ限界なんだよね。


 ローザが手加減をミスったら死ぬぐらいのレベル差になってきてる。

 アンジーなら上手にやるだろうけど、そろそろ辞めさせないといけない。


 「まだ限界まで追い込めてないだけかも。それこそ死ぬぐらいの経験があればもしかしたら」


 「それで死んだら元も子もないんだよ」


 カンストした奴を死なすなんてとんでもない。どれだけの時間とコストが掛かると思ってるんだ。それにそこまで育てた奴なら少なからず愛着や親近感が湧いてるはず。

 敵ならどうでも良いけど『クトゥルフ』の人間にはなるべく死んで欲しくない。


 「あ、蘇生薬か」


 「そう」


 なるほどなるほど。

 カンストした奴を死ぬまで追い込んで蘇生薬を使う。それで試してみようって事だな。


 「まぁ、それをするにしても希望者だけだな。生き返ると分かってても死にたい奴なんてそんな居ないだろう」


 「うん」


 エリザベスの頭をわしゃわしゃと撫でながら考える。

 死ぬほど追い込まれてでも強くなる可能性があるならやりたいって気概のある奴はいるのかな。


 とりあえずまず話を持って行くとしたらチャールズとマーヴィンだな。


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 新作だすぜヒーハー。

 体調を崩す前から書いてたんだけど、あっため続けてるのもなーと思ってとりあえず放出。

 ストックはあるけど、それが無くなったら毎日更新出来るかは分かりません。


 地獄からの刺客『エンマダイオウ』


 競馬モノのお話です。初日は5話更新。

 良かったら暇潰しに読んでくだせぇ。

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