第127話 戦闘開始
☆★☆★☆★
「やっとだねー! 待ちくたびれたよ!!」
「そうだな」
縄張りの見回りをしてる奴らから連絡があった。どうやらあちこちで小競り合いが始まってるらしく、いよいよ対『クトゥルフ』連合が仕掛けてきた。
ローザは遅いとぷりぷり怒ってるが、俺からしたら思ったより早かったなという印象だ。恐らくこっちが弱ってるうちに攻めたかったんだろうが。
「そもそも弱ってないんだよなぁ」
「マブ兄! 早く行こうよ!」
「待て待て」
別に俺達は手負いだから、縄張りを広げてるのを止めていた訳じゃない。
秘密基地で余裕をもって受け入れられないから、放置していただけだ。
教育係が忙しくなる事を無視すれば、いつでも制圧は出来たのだ。それを勘違いしたのは向こう。可哀想にな。
珍しく、本当に珍しくローザはここに居る間大人しくしていた。よほど終わった後の俺とチャールズを好きにして良い権利がお気に召したらしい。ひたすらリバーシとトランプで遊んでて、俺が少し飽きてきたぐらいだ。
だが、戦いが始まると分かればローザが大人しくしてる道理はない。今にも飛び出そうとしてやがるが、こっちにも段取りってのがあるんだ。
ボスに追加で送ってもらった人員にスラムの入り口を見張ってもらっている。
表の人間にこっちの抗争の余波を広げたくないのと、敵対組織の構成員を逃さない為だ。どうせやるなら徹底的に。人員を一気に確保したいってのがボスの要望だ。
後ローザを契約してない奴に見られると面倒になる。こいつはもしかしたらまだ、表で働く可能性があるからな。
「分かってるな? 建物はなるべく壊さない。構成員はなるべく生け捕り。スラムの外には出て行かない。はい、復唱」
「建物はなるべく壊さない! 構成員はなるべく生け捕り! スラムの外には出て行かない!」
「よろしい」
わざわざ訓練用の刃を潰してある大剣を持ってきてるからな。運が悪くても全身の骨が折れるくらいで済むだろう。ローザに出会った奴はご愁傷様だ。なむなむ。
「さっ。行くぞ。間違って味方を攻撃するなよ」
「分かってるよー! マブ兄はローザの事馬鹿にしすぎ!!」
お前には耳にタコが出来るくらい言っとかねぇとな。戦ってる時のお前はすぐに我を忘れるんだからよ。
☆★☆★☆★
「アッハハハハ!!」
長かった。本当に長かったよ。ローザはたくさん我慢した。遊びに行きたいのを我慢して、ずっと部屋に閉じこもってたんだよ?
秘密基地で魔物と戦ってる方が楽しい。師匠と訓練してる方が楽しい。レイモンドとお喋りしてる方が楽しい。
そんな日々ももう終わり。
マブ兄が騒がしい方に行けって言ったから、自慢の狼の耳をすませて、戦闘音が鳴り響いてる方に走って向かう。
もう我慢する必要はないんだ。殺さないようにしないといけないけど、思う存分楽しもう。
「おい。ローザちゃんが来たぞ。離れろ」
「おぉ。巻き込まれたらたまらねぇ」
魔法で身体強化して二本の大剣を振り回す。
剣の腹の部分で敵を吹き飛ばす。
「アッハ!」
楽しい。やっぱり戦うのは楽しいな。
駆け引きも何もないけど、向かってくる敵を薙ぎ払うのは本当に楽しい。
師匠との勝てない戦いも面白いけど、たまにはこういうのもアリかもしれない。またこういう事があれば、レイモンドにお願いしよう。
「ふぅ」
いけないいけない。楽しくなり過ぎて手加減をし損ねるところだったよ。
ちゃんと言いつけを守らないと、チャル兄とマブ兄と遊ばせてもらえないかもしれないし、レイモンドに次は行かせてもらえないかもしれない。
「ねーねー! この人達お願いしていいー?」
「任せておけ!」
近くにいたお友達にローザが吹き飛ばした相手をお願いする。まだまだ敵はいっぱい居るんだ。もっともっと倒さなきゃ。
それからたくさんの敵を吹き飛ばした。
でも当たり前だけど、時間が経つ毎にどんどん敵が少なくなってきちゃった。
楽しい時間は一瞬だなー。
「話が違う! 話が違うじゃねぇか! 俺は弱ってるって聞いたから参戦したんだ! こんなバケモンを飼い慣らしてるなんて聞いてねぇぞ!!」
「失礼しちゃうー! ローザは可愛いんだから!!」
組織のボスなのかな? 他の人達よりちょびっとだけ強く感じる。私を見てバケモノ呼ばわりは失礼だ。レイモンドやお友達には可愛いねっていつも言ってもらってるんだから。
約束がなかったらぐさーっってやってるところだよ、全く。
「これで終わり!」
失礼な人の頭を大剣でポコンと叩いて気絶させる。うん、やっぱりローザは手加減が上手になったね。訓練所にいる人達と違って、今回の敵はすぐに壊れちゃうからね。
何人かはスラムから抜け出そうとしてたけど、それは追いかけないでおこうかな。
外に出ちゃいけないって言われてるし、戦いに夢中になってたらいつの間にか出ちゃってるかもしれない。
チャル兄が出入り口を固めてるって言ってたし、私は拠点に戻ろうかな。
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