第126話 確保
「よ、よろしくお願いします」
ウルファは悩んだ末に了承した。
わははは。恩恵持ちゲットだぜ。カタリーナに言われて街歩きをして良かった。
これからも新しい街に行ったら、しっかり自分の目で街の隅々まで探さないといけないな。
「じゃあとりあえず商会に行くか。家は? 宿?」
「は、はい!」
食堂から出てとりあえずウルファが泊まってた宿に向かう。
宿屋経営も将来したいなぁ。スラムの縄張りでは収入源として激安でやってるけど。やっぱりスラムだから人入りが悪い。
安いからお金がない連中は来るけどね。
表通りでも前世のホテルみたいな宿を作れば繁盛するんじゃなかろうか。
アイディアはいっぱい湧いてくるけど、とにかく人が足りない。恩恵持ちも欲しいし、それ以外の人員も増やしたい。
組織作りって最初が一番しんどいよなぁ。
人手を充分確保出来て軌道に乗れば、俺は座ってるだけで大丈夫なんだろうけど。
宿から商会に向かう途中でウルファ君の身の上話を聞く。どうやら親に口減しで村を追い出されたらしく、半年程前にデッカー領に来て冒険者になったらしい。
最初は細々と堅実にやってたみたいで、ホーンラビットとかいう弱い魔物を狩れるようになってきた辺りで、あのやんすやんす達に声を掛けられたらしい。
風貌は怪しかったものの、ウルファもそろそろ大きく稼ぎたいと思ってたらしく、臨時でパーティを組んだけど、残念ながら大外れの面々だったという訳だ。
「ボス。お疲れ様です。そちらの方は?」
そして『ルルイエ商会』に到着。
売り場を通り過ぎて3階の執務室に向かうと、ホルトが書類仕事をしていた。
「新人。恩恵持ちの有望株だ。ウルファ、こいつはホルト。『ルルイエ商会』を切り盛りしてるのはほとんどこいつだ」
「あれ? レイモンドさんが会長だって…。それに子供…ですよね?」
「俺はお飾りだから。仕事は出来る人にポンポン回します。まだ12歳で成人もしてないけど、俺なんかよりよっぽど優秀だぞ」
「ホルトです。以後お見知りおきを」
俺はやいやい口出しするだけの存在。後はそれをみんなが良い感じにやってくれる。
いざという時に矢面に立つだけだね。それ以外は全面的にお任せしてます。
「さて。ウルファには俺達の事をちゃんと知ってもらわないとな」
って事で、自己紹介もそこそこに地下室へ向かう。秘密基地に飛んで、そこから契約。
その後はお勉強タイムだ。料理人だろうが戦闘員だろうが、基礎教育は絶対受けてもらうからね。
「ここは…?」
転移酔いをスパッと治してあげて、到着しました『クトゥルフ』本部秘密基地。
ウルファは転移に驚き、そして転移装置が置いてある部屋から出て更に驚く。
なんか洞窟っぽい中で、色んな人間が忙しなく動いてるからね。
ちゃんとエリザベスが発明した灯りの魔道具を各所に置いたり、掃除もしてるから滅茶苦茶綺麗だぞ。
そしてそこから怒涛の説明。俺の鑑定の事。『クトゥルフ』の事。ここはどこなのかという事。一気に説明しても分からないだろうが、とりあえず一通りは説明した。
後は時間が解決してくれるはずさ。
「で、俺の鑑定でお前には恩恵ってのがあるのが分かった訳だ」
「な、なるほど」
多分半分も理解してない。まぁ、その辺はおいおいな。『クトゥルフ』の奴らは強面が多いけど、みんな良い奴だから。
聞けば知ってる事は答えてくれるよ。
「にゃにゃ! ボスが居るにゃ」
その後、俺はどうせ暇してるって事で、秘密基地内を案内する。勿論機密の場所には連れて行かない。情報部の場所とかな。
あそこはうちのメンバーでも入る奴を制限してる。契約で縛ってるとはいえ、万が一があるからな。
あれこれ案内して、食堂でジュースを飲みながら質問の受け答えをしてると、アリーナがやってきた。
因みにアンジーは秘密基地に帰ってきた途端に温泉に向かった。途中訓練所にも寄ったのか、やんすやんすの雄叫びが聞こえたような気がしたけど、それはさておき。
「アリーナか。丁度良いから紹介しておこう。こいつはウルファ。デッカー領で見つけた恩恵持ちの料理人だぞ」
「にゃんと!」
料理人って言った瞬間、アリーナの耳と尻尾がピーンってなった。獣人って感情が分かりやすいよな。そういえばアリーナってご飯を食べるのが好きなんだっけ。
こいつを探したかったら、大抵食堂に行けばいる。
「アタシはアリーナにゃ! ウルファはどんな料理が作れるにゃ?」
「ウ、ウルファです。申し訳ありませんが、料理はほとんど素人で…。これから学ぶところです」
「にゃー。そうにゃのね」
これこれ。露骨にガッカリするでない。これからに期待だよ。お前も食べるのが好きなら、今のうちに仲良くなっておいた方が良いぞ?
因みにウルファは料理人になる事に異論はないらしい。むしろ戦わなくていいなら大歓迎だと。冒険者も生きていく為に仕方なくやってたらしいし。戦う料理人とかロマンがあっていいと思うけどね。ステータスも魔法使いなら普通に戦えそうなんだし。
魔法を教えてみてハマったりしたらワンチャンあるかなと思ってます。
一応『クトゥルフ』は俺が鑑定して向いてる持ってる職業を教えてあげてるんだけど、ごく稀にその職業以外を選ぶ奴がいる。
農家が戦闘員やったりね。そういうのはある程度やらせてみて、本当に続けていけるか確認してからやらせている。
大成するのは難しいかもしれないけど、本人がやる気ない仕事をやっても効率が悪いからね。人一倍努力は必要だけど、そういう意思も尊重するようにしてる。
そう考えると俺のもう一つの恩恵の複職もチートだよなぁ。
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やんす君が何故か人気なんだがw
その場限りのモブとして登場させたのにw
何か役割を与えてどこかで使おうかなw
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