第124話 怖いもの知らずのチンピラ
街歩き初日はなんかアンジーとデートしたみたいになった。歩きつつ屋台で買い食いしたり、色んな商会を冷やかしたり。
途中でアンジーが欲しそうにしてたアクセサリーをプレゼントしようかと思ったけど、俺なら職業を取得して、練習すれば作れると思って、俺が作ってプレゼントするよって言ったら、珍しく顔を赤くしてた。
アンジーの赤面顔ですよ。かなりレアな瞬間でした。カメラがないのが悔やまれる。
こういう時は現代アイテムがいかに便利だったかを思い知らされるね。絶対いつか開発しよう。
その後は秘密基地に戻って、カタリーナに私にもプレゼントはあるんですよねと詰められつつ、夜のハッスルタイム。かなり良い気分で就寝。
そして街歩き二日目。
恩恵持ちや面白い職業持ちはいねがーと、アンジーと歩いている。
「スラムはマーヴィン達に任せてるし、俺達はスラムじゃない表通りから外れたちょっと怪しい場所に行ってみるか」
「そうねぇ。昨日は表通りは大体見た事だし」
街で一番治安が悪いのはスラムだけど、表通りから外れた場所も、出来の悪い冒険者やらがたむろしていたりする。
今日はそういう場所を攻めようと思った訳で、行ってみたんだけど…。
「あ、あの、報酬はみんなで平等にするって…」
「そうだけどよぉ。お前荷物持ちしかしてねぇじゃねぇか。それで俺達と一緒の報酬ってのは、不公平じゃないか?」
「そ、それは! 皆さんが僕に全部押し付けたから戦闘に参加する暇がなかっただけで…っ!」
「知らねぇなぁ」
なんか一人の男…? 多分男を囲んでる三人組のチンピラみたいなのに出くわした。
話をチラッと盗み聞きした限りでは、報酬の分配で揉めてるっぽい。
まぁ、三人組がクズっぽいんだけど。正直そんなのはどうでも良いんだ。
見つけちゃったよ。お宝を。
☆★☆★☆★
『名 前』 ウルファ
『年 齢』 15
『種 族』 ヒューマン
『レベル』 15/456
『体 力』 F/C
『魔 力』 G/S
『攻撃力』 F/C
『防御力』 F/C
『素早さ』 F/C
『知 力』 E/A
『器 用』 E/EX
『恩 恵』 付与料理
『職 業』 料理人
『属 性』 無 火 水
☆★☆★☆★
俺が求めてる人材とは違うけども。
恩恵持ちは恩恵持ちだ。さらに都合良くなんかピンチときた。ここは恩着せがましく助けて、勧誘というムーブが正しいのではないだろうか。
そう思って俺とアンジーは男達に近付いていく。
うーん? 男だよね? 俺も男か女か分からない美少年な見た目をしてるけど、この囲まれてる子もどっちか分からん。
正直どっちでも良いが。
「何ジロジロ見てんだ!」
「見せもんじゃねぇぞ!!」
「やんすやんす!」
すげぇ。THEチンピラムーブ。これほどまでに噛ませ臭を漂わせてるチンピラが居るんだろうか。最後の奴は意味が分からないけど。
「ほう? そっちは良い女じゃねぇか」
「男の方はぶるっちまって何も言えねぇか! がはは! おい、姉ちゃん! こっちに来たら可愛がってやるぜ! 少し歳がいってるのが残念だかな!! がはは!」
「やんすやんす!」
お前達なんて恐ろしい事言うんだ。俺ですらアンジーの年齢弄りは心の中でしかやらないぞ? それでも超直感で勘付かれるんだが。
「ボス。良いかしら?」
「あの人だけ残してくれたらお好きに」
ほら。アンジーが凄い笑顔だよ。目が全く笑ってないけど。ちょっとヒュッてなった。
怖いねぇ。やっぱり女性は怒らしちゃだめだよ。特に武力を兼ね備えてる女性なんて、命の危険がある。俺も気を付けようね。
「自分から来るとは殊勝な女だ!!」
「がはは! 今日は寝かさねぇぜ!」
「やんすやんす!」
下卑た笑顔とはまさしくこの事。
気持ち悪いにやけ面に、鼻を膨らませて、まぁきもい。アンジーじゃなくてもぶっ飛ばしたくなる顔をしてるね。
てか、やんすやんすうるせぇ。
「ぎっ!」
「がっ!」
「やんす!」
アンジーが近付いて笑顔のままでパンチ三連発。顔面が陥没しちゃってるんじゃないの? 死んじゃったかもね。なむなむ。
「ひゃっ! ぼ、僕は何も持ってません!!」
ああ。アンジーの恐ろしさにウルファ君…ちゃん、どっちか分からないけど、滅茶苦茶ビビっちゃってる。
ここは俺が好青年ムーブをかまさないと。
「君、性別は?」
「は、はい?」
間違った。初手失礼ムーブをしてしまった。気になり過ぎて心の声がそのままでちゃったよ。
「怪我はない?」
「は、はい。お陰様で…」
おどおどと恐る恐る返事をしてくれるウルファ。なんだろう。庇護欲が湧いてくるな。
「とりあえず場所を移して話そうか。君にちょっと話があるんだよね」
「は、話ですか? で、でも…」
チラリとアンジーを見て、ぶっ飛ばされたチンピラを見て、もう一回アンジーを見る。
なるほど。場所を変えて乱暴されるとでも思ってるのかな。
「大丈夫。君に危害を加えない事は約束しよう。なんならあの女性には席を外してもらったっていい」
「私はあなたの護衛なんですけどぉ?」
「そうだった。離れた場所で待機って事で」
「そ、そういうことなら…」
よしよし。とりあえずお話の権利はゲットした。逃がす気なんてさらさらなかったけど、自ら着いてきてくれるのはありがたい。
「こいつらはどうするのかしら?」
「生きてるの? あ、仲の良い友達とかじゃないよね?」
アンジーに生死確認しつつ、ウルファに聞く。これで親友なんですとか言われたら、やばいんだけど。囲まれて脅されてたから大丈夫だと思いたい。
「り、臨時のパーティメンバーなので…」
「ふむ。じゃあどうでも良いか」
「かろうじて生きてるわよ」
俺達の姿を見られてるし、殺しとく方が良いか。契約しても良いけど、この性根を叩き直して教育し直すのも面倒だしなぁ。
「まっ、いっか。使いもんにならなければマリクにあげよう」
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