第123話 街歩き


 「ボス。お疲れ様です」


 「ホルトの方が疲れてそうだけど」


 「そんな事ありません。皆さん優秀なので、僕の負担はそこまでないです」


 転移装置を使ってデッカー領の『ルルイエ商会』に転移してきた。護衛にはアンジー。

 別にいらないと思ったけど、万が一と見栄え的にも必要だとカタリーナが言ってきたので。


 その通りだと思って温泉でリラックスしていたアンジーを引っ張り出してきた。その時に少しハッスルしてしまったのは内緒ね。


 それにアンジーの超直感であわよくば恩恵持ちを見つけれないかなと思ってます。

 流石にそこまで都合は良くないだろうけど。


 「経営は順調?」


 「はい。在庫も生産部の活躍によって、充分確保出来ています。しかし、やはり転売は避けられませんね。個数制限して売っても人を変えて買いに来る者達が後を断ちません。恐らく他領では、ポーションやリバーシなどは高値で売られてるんじゃないでしょうか」


 「うーん。転売なぁ」


 俺ちゃん転売大嫌い。本当に欲しい人に適正価格で届かないのってマジで腹が立つんだよね。でも、これは取り締まってもゴキブリのように湧いてくるからなぁ。


 「世界中に支店を出して、地道に駆逐するしか根本的な解決にならないんだよね。俺達がいざ他領や他国に行った時に、高値で転売されてたら、絶対殺すけど」


 まぁ、異世界にその辺のモラルとか求めても無理だろう。てか、安く仕入れて高く売るのは商人の基本だし。輸送価格とかが掛かるのは仕方ない。俺だってそれぐらいは多めにみるさ。


 問題は度が過ぎてる奴ね。絶対いつか駆逐してやる。俺の娯楽を庶民も楽しめるぐらい広めるというミッションの為にも、悪質な転売ヤーは絶滅させねばなるまい。



 ホルトや他の商業部のみんなに経営状況を聞き終わった後は街に出る。

 お待ちかねの宝探しの時間だ。


 「やっぱりペテス領と比べると質が低いな」


 「最高でC級らしいしねぇ。普通の街はこんな感じじゃないかしら?」


 近くの冒険者ギルドの前を通ってささっと鑑定したけど、やっぱりめぼしい人材は居ない。


 ペテス領は魔物の強さがおかしいからな。深層はカンスト組でもパーティで挑まないとやばいし、更にまだ俺達でも勝てるか怪しい奥があるときた。どうなってんだってばよ。


 「深層の奥はまだだめ?」


 「だめねぇ。ヤバいという事しか分からないわ」


 アンジーの勘では、俺とカタリーナ、アンジーローザで行ってもやばそうらしい。

 どんなヤバい魔物が待ち構えてるんだろ。その手前に拠点を置いてる俺達って実は危ないのではと最近思い始めてきた。


 早く強くなりたいところだけど、マジで最近レベルが上がらん。300になったアンジーはもちろん、ゴドウィンも相当な猛者だったんだなと再認識しました。


 「あー書記の人が居る。欲しいなぁ」


 冒険者ギルドを通り過ぎた後も、周りを見渡しながら鑑定する。中には書記とか、教育者とかの職業持ちがいる。今、うちの組織で最も欲しい人材だ。


 「勧誘するのかしら?」


 「いや、職にあぶれてるならともかく、普通に生活出来てる人は無理矢理誘う気はないね」


 これが恩恵持ちなら話は変わるが。あの手この手で勧誘しますよ。問題は現状に満足してる人とかだよな。そういう人を勧誘するのは難しい。


 大抵の人は願望とかがあるもんだ。それを叶えてあげたりすると、スカウト成功率もグッと上がるんだけど。


 「アンジーに使ったようなマッチポンプを仕掛けるとかな」


 「あれは酷いわよねぇ。断る選択肢が用意されてなかったじゃない。断る=死だった訳だし」


 「どうしてもアンジーが欲しかったんだ」


 「そう言われると悪い気はしないけど」


 なんか告白みたいになっちゃった。これぐらいで良い気分になってもらえるなら、何回でも言うけど。今度カタリーナにも言おう。

 いつもお世話になってるからな。


 「小悪党の方がやりやすいな。暴力で従わせれば良いだけだし。心も痛まない」


 「そうね。私達にはそっちの方が性に合ってるかもしれないわ」


 やはり暴力。暴力は全てを解決する。

 まぁ、悪党ってのも限度はあるけど。一緒に居て不快な奴とかもね。

 恩恵持ちは貴重なんだろうけど、どうしても合わない奴は居る。そういう奴は遠慮させてもらう。わがままでごめんなさいね。

 でもなるべくそういうので我慢はしたくないので。


 「そう考えるとスラムはいいな。街でもあぶれた奴らばっかりだから、気軽に契約して人員補充が出来る。この街を粗方見回ったら、さっさと別の街に行くか。商会の支店はまだ作れなくても、スラムを制圧するぐらいなら出来るだろ」


 「制圧した後の縄張り維持があるけどねぇ」


 あ、そうか。まぁ、戦闘員は内向きの仕事とか商業部、生産部より早く実戦投入出来るし、少し視野には入れておこうか。


 「それにしてもこの街には恩恵持ちは居ないな」


 「まだ初日でしょうに。ボスはせっかちだわ」


 すみません。どうしても、早く結果を欲しがっちゃって。一日二日で見つかる訳ないよね。根気強く探していきますか。

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