第5話 魔物との戦い


 「そりゃそうだよな」


 夜になって外に出る為に、闇を纏う練習をしたり過ごしてるとあっという間に日が暮れた。

 人通りも少なくなってきて、そろそろ行くかと門へ歩いて到着すると門は閉まっていた。


 「うんうん。閉めるよね。何の為の門だよってなるし」


 マジでどうすっか。とりあえず隠れ家に戻ろう。

 なんか夜になると危ない雰囲気の人が増えてきた気がするし、レイモンド君の記憶でも夜はほとんど出歩かないようにしてた。きっと危険って事なんだろう。


 「よし。帰って今日は隠れ家で記憶を整理しながら寝よう」


 思えば、今日は中々波瀾万丈に過ごした。

 体は子供なんだし、休める時にしっかり休まないと肝心な時に動けない。


 「おお。なんかそう思うと一気に体が重くなってきたな」


 俺は急いでスラムの隠れ家に向かい、すぐに睡眠を取るのであった。




 「地下水道か」


 翌日。空腹で目が覚めた。スラムの隠れ家なんて言ってるけど、実際は誰も使っていない空き家を勝手にそう呼んでるだけだ。少し表通りと近い故にスラムの人間が寄り付きにくく、俺がありがたく拝借してる場所になる。


 で、昨日寝る前に軽く記憶整理をしていると、この街には地下水道がある事がわかった。

 まぁ、少年の記憶は少な過ぎるし、限定的すぎるしで整理するまでも無かったんだけど。

 街規模なら地下水道ぐらいあるわな。


 「地下水道にはネズミ型の魔物やスライムが居るみたいなんだよね」


 俺は干し肉に齧り付きながら考える。

 地下水道はスラムからでも入れるし、ネズミやスライムが強いとも思えない。

 これは魔物戦をするには持ってこいじゃなかろうか。


 「そうと決まれば早速行こう。その後どうするかは強くなってから考えます」


 この街の人の能力値やレベルを見た感じ、そんなに強くなさそうなんだよね。

 少し魔物を倒して、レベルと能力値を上げる事が出来れば、裏の世界ぐらいすぐに牛耳れるのでは?

 俺はそんな楽観的思考になりながらも、ルンルンで地下水道に向かった。



 「くっさ! えっぐ!」


 舐めてた。匂いが半端ない。既に引き返したい気分だ。薄暗くて視界も悪いし。


 「光魔法で浄化とか使うべき? いやいや、ただでさえ少ない魔力量なんだ。ここは我慢。ここから出る時に使おう」


 まず浄化が使えるのかも分からん。今まで魔法は頭に叩き込まれた魔力操作とイメージのみでやってるからな。これは今日からちゃんと魔法の練習もしないと。


 「あ、職業を外しても魔法を使えるのか確かめないとな」


 やり方は分かってるしなんとかなると思うんだけど。出来るなら違う役に立ちそうな職に就きたい。

 まぁ、今は魔物を探して戦う事だけを考えよう。あれこれ考えても、俺の体は一つで子供ですし。一気に出来る事は限られている。



 匂いに我慢して歩く事5分。

 初の魔物を発見した。


 「おお? これがスライム? なんかもっとぽよんぽよんしてる可愛らしい感じかと思った」


 ドラク○とか、ラノベ主人公が従魔にするデフォルメされた感じの。

 現実はそう甘くなくて、アメーバみたいな奴だ。


 ☆★☆★☆★


 『名 前』 無し

 『年 齢』 4

 『種 族』 スライム

 『レベル』 6/20


 『体 力』 E/E

 『魔 力』 E/D

 『攻撃力』 F/E

 『防御力』 D/D

 『素早さ』 G/F

 『知 力』 G/F

 『器 用』 G/F


 『恩 恵』 無し

 『職 業』 掃除人

 『属 性』 無 水


 ☆★☆★☆★


 「ふむ。魔物と人間で見え方は一緒と」


 分かりやすくて助かるね。問題は魔物とGと人間のGは同じぐらいなのかという事だけど。

 その検証はもっと余裕がある時にしよう。

 今は初の魔物戦だし、自分で実験したいとは思わない。


 「ダークボール」


 近接戦なんて武器も持ってないから、出来る気はしない。スライムって触ると溶かされるイメージあるし。

 魔法が使えるなら使うよねって話。


 魔力の無駄遣いを出来るだけ避けるために、人間の男に使った時よりは小さく作った。

 その黒い玉をスライム目掛けて飛ばす。


 スライムと黒い玉は衝突して、弾けるようにして消えた。


 「死んだ…のかな?」


 レベルに変化無し。スライムが居た所を鑑定してみるけどステータスは表示されない。


 「スライム一体倒したぐらいでレベルが上がったら苦労しないわな」


 もっと探してどんどん倒そう。出来ればネズミも見つけたいね。これで戦闘経験が積めてるのかは疑問だけど、細かい事は気にしない。とりあえずレベルを上げたい。


 「小さく作ったからか、魔法はまだまだ撃てそうだな。帰りの事も計算に入れておかないと」


 それから、俺は3時間ほど時間をかけて、スライムを合計で50匹ぐらい倒したと思う。

 で、ネズミは1匹だけ。ステータスはスライムと似たような感じだけど、素早さの能力値だけ上限のCだった。


 「全然魔法当たらん。ネズミが小さくて速すぎる」


 無駄に何回も魔法を撃って、本当ならもっと魔物狩りを出来たのに魔力が残り少なくなってしまった。


 「で、これだけ倒してレベルは一つしか上がらなかったんだよな。能力値も変化無し。強くなるには先が長そう」


 後、ドロップ品? いや、ネズミは死体が残ってたから解体しないといけないんだろうけど。

 スライムを倒すと小さい石みたいなのがあった。

 鑑定すると魔石らしい。魔道具のエネルギーとか武器を作る時に使う。

 ラノベの設定そのままだな。分かりやすくて良いけど。変に捻られる方が困る。俺は比較的オーソドックスなラノベしか読んでないのだ。


 「ネズミは解体すべきなのかね」


 とりあえず食べるという選択肢はない。どんな菌を持ってるか分かったもんじゃないし。

 持ってるであろう、魔石だけでも回収したい。

 いつか換金出来る時の為に取っておかないと。


 「うへぇ。気持ち悪いなぁ」


 人を殺したとはいえ、解体が出来る訳でもなく。

 俺は薄目でなるべく見ないようにしながら、殺した男から奪った短剣でグリグリと死体を抉り、魔石を探す。


 「よし。回収」


 帰るぞ帰るぞ。魔力量も怪しいし、鼻が曲がりそうだし。いつか麻痺するだろうと思ってたのに、なんか段々鋭くなってきた気がする。勘弁してくれ。

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