【元は人間、いま骸骨。好きなタイプは鎖骨美人】〜見守り対象の公爵令嬢が、棲み家の極悪ダンジョンに追放されてきたので、レベルアップさせてから復讐ざまぁを手伝いたいと思います〜
第31話 夜勤の作戦(アリシアLv899)
第31話 夜勤の作戦(アリシアLv899)
ヴィルヘルミナからアリシアへと魔素が流れ込む。
魔素の流入が終わると、ヴィルヘルミナの体はそのまま前のめりに倒れこんだ。
『決着っ!! 決着です! な、な、なんと! 無敗のチャンピオンが敗れました!』
勝利を告げるアナウンスと共に割れんばかりの大歓声とヤジが飛ぶ。
『勝っちまったぞ!!』
『俺の金がっ!!』
喧騒の中、意識を失ったアリシアを抱き抱える。
今回は限界を超えていたからすぐに眠ったな。
「ごふっぅ……ず、ずるいぞ、夜勤殿」
五メートルほど離れたところに転がっていたヴィルヘルミナの頭から俺へとクレームが届く。
「実力差を考えてくれよ。それに本気になられたらアリシアが死んじまう」
アリシアを先に地下十一階へと転送しながらそう答える。
「にしても、す、す、姿を出すのは反則だ……」
「別にそんなルールはねぇからなぁ」
「た、確かに、そ、そうだが……まあ、いいブツも拝めたし、こ、このま、ま、塵になるのも、わ、悪くない……」
待て待て待て待て、何を拝んで満足してやがる。けっこうな距離があったから気にしてなかったけど、どこを凝視してくれやがんだ、この生首。
「イビルヒール! イビルヒール! イビルヒール!」
昇天なんかさせねえぞ。さっさと治れ。
穴があき、ズタボロだったヴィルヘルミナの体は俺のイビルヒールで回復していく。
「あっ、あっ、あ」
歓声がデカくて良かったわ、ほんと。
良くない声色で悶えとる。イビルヒールにそんな性質ねえし、どっちかというと痛みが出るんだけどな……。
ほんとこの人、癖が強すぎる。
しばらくすると、ヴィルヘルミナの体は立ち上がり、頭のもとへと歩き出した。
体が頭を掴む。掲げられた頭が首の断面に息を吹きかけ、断面についた砂を吹き飛ばすと、喋りかけてきた。
「恥ずかしがり屋さんめ」
「いや、そうじゃない。アンタがおかしい」
片目でウィンクしてくんなって。
「楽しめたよ、ありがとう」
「そりゃどうも」
「次はハジャ殿に?」
「あー、まあそうだな。ハジャだな……」
「くくくっ。夜勤殿は相変わらずイカれておる。アレをどうやって人間が倒せるのか、想像がつかんよ」
実は俺も自信はないから裏技攻略のつもりなんだけど。今は黙っとこう。
「おっ、そうだ貴賓室のモニターに中継してやろうか?」
「それは是非!」
「わかった、A氏にいっとく。じゃあ、また」
「ああ、また」
ヴィルヘルミナに見送られながら転移魔法で地下十一階へと移動する。
◆
「ただいまー」
「ぢゅあ」
(おう、アリシア嬢はもう、治癒槽につけといたぜ)
「あんがとよ」
隣の区画には、治癒槽に浸かりすやすやと眠るアリシアがいた。
……そろそろ服が持たなくなってきたから、装備を更新しないとダメだな。
あの武闘家の服はけっこう丈夫だけど、レベル500を超える戦いだと紙クズと同じだ。
でも、いい防具ってなかなかないんだよなー。高レベル共通の悩みでもある。
俺なんか、レベルに合う装備がないから、ここ二百年ずっと裸だもんよ。
……うーん。今すぐに準備は無理だし、とりあえずは武闘家の服か。あと一着だけ少しデザインが違うのがあった。
よし。アリシアのステータスチェックを開始しよう。
【アリシア・ウォーカー】
【種族】:普人族(女)
【生体レベル】:899
【天職】:勇者(−−)
【適正職】:死凶(セット中)
【技能スキル一覧】
「真・天魔活殺」「告死突」「告死脚」「瞑想」
「紙一重」「身体強化(極大)」「王者の風格」
「予知」「指弾」「天賦」「見取り」
「瞬身法(空)」「核撃(大)」「復讐心(中)」「武心(極)」「常時回復「極」」「魔皇闘気」「慈愛(小)」「レベル可変制御」
「契約:死亡時蘇生保険」
【状態】:安定 魔素ストック(中)
【称号】:
スキルの大きな変化はない……「天魔活殺」に真がついたのは単にグレードアップだな。
それより天職がおかしい。以前はレベル不足とだけ表示されていたのに、今は何も書かれていない。
かといって勇者になったわけでもない。勇者になれば必ず覚える神の祝福による【聖光闘気】も生えていないし。
どういうことだ?
アリシアに変わったところはない。相変わらず美しい鎖骨だし。少し心配している魔人化の気配もない。
……考えても仕方がないか。神のクソ野郎が何かできたとしてもアリシアにはもう、手は出してこないはずだ。
プライドだけは神らしく、お高いものをお持ちのアホだからな。
魔物に穢されたものを、おいそれと手元に戻すこともメンツからしてできないはずだ。
とりあえずこの件は保留だな。
今はそれよりハジャ戦に向けて抜けがないか確認しないと。
ここまではレベルが合う、もしくは合わせてくれる相手ばかりを選んできたが、ハジャだけは簡単じゃない。
それでも、シャルロットと地下六階のアホよりかは、まだハジャの方がましなのがなんともいえないが。
一応、最後に確認してみよう。
シャルロットは……やっぱりダメだ。絶対殺しにくる。蘇生保険で復活しても、すぐに殺しにくるイメージしか出てこない。
地下六階のアホは……いや、もうアリシアの姿なんか絶対に見せたくない。リアに似ているから絶対に口説きにくる。
うん……やっぱりハジャだな。
さて、方針が完璧に固まったところで、まずはアリシアの技術だ。
これは向上著しい。手加減はあったとはいえ、ヴィルヘルミナとあれだけやりあえるのは全力で褒めてあげたい。
レベルに技術が追いついたといえるだろう。
次はちょっと特殊だが、アリシアの準備は整った。
そして、次の作戦の要であるジャーキーの備蓄。例の最高級品が十キロ。
それと古くなってきてはいるが、巷では高値のものを別に八百キロ揃えた。
量はおそらく足りるだろう。というか、足りてくれ。小遣いがもたん。
「ぢゅーあ、ぢゅぢゅぢゅー」
(おーい夜勤、言われたとおり八階の隔離終わったぜー)
「おお、あんがとよA氏」
段取りを頭の中でこねていたら、A氏が頼んでいたことを終えたと報告をくれた。
「ぢゅ。ぢゅー」
(次は何をするつもりだ。というか隔離するってことは、どう考えてもドンパチかますつもりなのはわかるけどよ)
「下手うって他の階にまで影響があったらまずいからな。万が一の隔離というやつだ。」
「ぢゅー……」
(地下八階はロンド皇国ぐらいの広さがあるのに、他の階に影響……)
「そうなんだよ、なんせハジャだしな!」
「ぢゅー……」
(いや、それを考えるおまえがな……)
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