第13話 夜勤の閃き(アリシアLv399)


「よっこいせと」


  ベル君に刺さり込んだ頭骨を取り外し、体へ付け直した。


「イビルヒール」


 そして、ベコベコにひしゃげたベル君へとイビルヒール放ち、倒れているアリシアを拾い上げ肩に担ぐ。


 羞恥心とは凄いもんだな。これからはノーリスクのビキニに、積極的に頼る方針を俺は強く押すぞ。


『ふぅ。助かりました夜勤殿。やはりアリシア嬢は勇者の血筋ですな』


「やっぱわかるか?」


『そうですな。外見といい、攻撃の質といい、リア・ウォーカーを思い出しますな』


「だけど、生まれ変わりとかじゃねえんだ」


 リアじゃないのは間違いない。リアは勇者の力を使いすぎたせいで魂が摩耗し消えていった。


 俺はそれを見届けている。


『そうですか……さて。通常の業務に戻りましょう』


「おお、じゃあな、あんがとよ、龍木でお礼させてもらうわ」


『それは楽しみですな、ああそうだ、挑戦者を怖がらせるとこちらに来なくて暇なので、巡回はほどほどにされ——』


 転移魔法の発動はベル君が言い終えるよりも早かった。





「ぢゅー」

(早かったじゃねぇか)


「A氏。ただいま。時代はビキニだぜ?」


「ぢゅあ」

(訳わかんねぇことばっかりいいやがって。いつになったらお前は死ぬんだろうな)


 あっ、床に唾はいた。ジャーキー足りてねぇな。ほら、どうぞ。


「ぢゅー」

(俺にレベル限界がなけりゃこんなところで、くそがっ)


 荒々しくムシャムシャと熊肉ジャーキーをほおばるA氏。これで、日々のストレスが少しでも軽減してくれることを俺は願ってるぜ。


 さて。今回も段取り良くA氏が準備してくれた治癒槽へと、アリシアをダイナミックにドボ漬け。


上昇した彼女のステータスチェックだ。

 


【アリシア・ウォーカー】

【種族】:普人族(女)

【生体レベル】:399

【天職】:勇者(レベル不足)

【適正職】:戦鬼(セット中)

【技能スキル一覧】

「連閃撃」「死突」「死脚」「瞑想」「見切り」

「身体強化(極大)」

「核撃(極小)」「復讐心(中)」「武心(小)」「常時回復「小」」「魔闘気」

「慈愛(極小)」「契約:死亡時蘇生保険」

【状態】:安定 魔素ストック(極大)

【称号】:「神の尖兵(二番人気)」



「……殺意えぐいなおい。確殺スキルばっかり」


 そして、慈愛(極小)は一旦諦めよう。

 

 武心が生えてきたことだし。相殺できずに多少はダメージあるかもだが。


 とりあえずキノコもこれで……おい、待てや。


「なんで人気上がってんだよぉー、めんどいってっマジでぇー」


 キノコやめたのになんでなんだよ、クソボケ神どもがよぉ。クソがぁ、次で絶対に尖兵を消してやる。


 ……でも、どう消そう?


 キノコ無邪気で上がる、ビキニ羞恥心で上がるじゃ、手の打ちようがないぞ?


 前の時はどうしたっけか。思い出せ、俺。


 うーん、……たしかリア前回は、神の尖兵が発動した時に戦士のアホが無理やりキスして(死ねくそが)、神人気が急落して尖兵が解除されたっけ。


 ……嫌な記憶だから思い出すのに時間がかかったぜ。


 それにしても、清らかなる乙女にしか興味ないとか罪深い神だな。一神教なんだから性癖抑えろよ、信者達が泣くぞ?


 ……今回はどうしたもんかなー。思いつかねぇなぁ。アリシアの純潔を汚すとか、考えただけで脳が壊れるし、有り得んわ。


 脳みそないけど。


 ……スケルトンジョークもいまいち決まんねえ。こういう時は巡回して気分でも変えるか。


「今日は地下一階からいってみっかな」





 テラーキャッスル地下一階


 さて、アイデアの種を求めてやってきました地下一階。


 すこーし面白そうな場面に遭遇したので、岩陰に隠れて観察中。魔力が漏れて騒がれないよう、いつもより強めに骨を引き締めてのイベント見学中だ。


「リーダー、いくら探しても見つからないし、もう帰らないか?」


「だめだ、布切れでもいいから探し出すんだ。おーい! そっちはどうだ」


「紋章入りの武器をみつけたぞっ! おそらく移送役のものだ」


「本当かっ? よくやった! これなら最低限の金はもらえるぞ」


 テラーキャッスルの地下一階、入り口のすぐ近くでなにやら探し物をしているのは、冒険者チーム【貴族の誇り】のメンツだ。


 会話の内容から察するに、ロンド皇国よりアリシアの生死確認を依頼されたと推測できる。


 移送役はあの時、逃げて皇国に帰ってから、アリシアは死んだと報告したが、確証が欲しくてあいつらを雇い、追加調査といったところか。


 だが、少し証拠が弱いな。これじゃもう一人の移送役が生きている可能性を消しきれないし、アリシアが死んだ証明もできない。


 証明……うーん。なんか閃きそう。


 証拠……遺留品……おっ? アイテムボックスに確か——あった。


 ちょうどいいのあるじゃん、物持ちいいなぁ俺。


 よし。これをこうして……。


 転移魔法であいつらの死角に転送!


 そしてお次は小石だ。これまた魔法で同じ場所の少しばかり中空へ。


 転送は成功。当然のように地面に落下する小石ちゃん。


 耳をすまさないと聞こえない、小さな小さな音が鳴った。


「なんだっ!」


「どうしたリーダーっ!」


「後ろで音がしたんだ、確かめる」


 さすがは【貴族の誇り】を率いるリーダー。地下三階で宝箱漁りする実力を持ち、英雄手前のレベルに片足突っ込んいるだけあって、あんな小さな音でも反応しやがる。


 その調子で見つけてくれよー?


 そうそう、そっち。あともう少し、そこの岩蔭だぜぇ。


「おいっ! 見つけたぞっ!」


「マジかよっ! やったな!」


 【貴族の誇り】が、ボロボロの貫頭衣の周りに集まり、喜びの声をあげた。


「移送役の報告通りオーガに襲われたのは間違いないな。服だけあるのは苗床として連れ去られたか」


「どっちにしろ、女は長くはない。死んだ証拠としては十分だな」


 素晴らしい名推理に俺、感激。


 いやぁうまくいったわ。今アリシアが生きていること疑われてロンド皇国の奴らが調査に来たりするとちょっとマズイからな。


 なんかの拍子でアリシアの目に入ったりしたら、復讐心(極大)が早くも確定しちまう。


「引き上げるぞ!」


 意気揚々と帰っていく【貴族の誇り】たち。


 見事なフェイクを掴んでくれて、ありがと……ん? おう、フェイク。おうおうおう? これをこうすれば、おおん? おおっ! 勘違いしちゃうな。


 ほんでからのー? ………………きた。


 きてしまったぞ、神め。俺、思いついちゃった。


 今すぐ戻らねばっ!


 



 

 

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