第48話コードネームセンスは残念で

ハームと合流してハームに透明な壁を砕いてもらってルナちゃんがいるであろう精神世界へと行く。裂け目を超えた先には閑静な住宅街だった。


「ルナちゃんはこのあたりにいるのね」

「そうだと思うが」

「手分けして探すぞ。これ貸すから急いで見つけるぞ」

「トランシーバー?」

「研究室からパクって来た」


これなら見つけた後の連絡が楽になる。


「ありがとう。じゃあみんな後でね《飛翔》」

「おう。早めに見つかるといいけどな」

「なんだか含みのありそうな言い回しだね」

「いや、なんだかな。嫌な気がする」


離兎は飛び去って行く咲の後ろ姿を見ながらそうつぶやく。


「根拠的なのはあるのかい?」

「あるわけないだろ。でも、変な感じだ。…ハーム、俺たちは住宅街じゃなくてあっちのマンションがたくさんあるほうに行こう」

「そっちを咲に任せた方がよかったのでは?」

「いいから。多分ルナ自体はこの住宅街の中に住んでいると思うよ。でもあいつも俺たちを探してうろついてたらどうする。だから向こうに行くんだ」

「まあ、そうかもしれないな。行こう」


俺とハームはマンションが立ち並ぶ方向に向かって走り始める。途中分かれて散策だそっちの方がさすがに効率がいい。


『もしもし。こちらコードネーム…コードネーム……S!ターゲットルナを確認!くりかえす!ターゲッ「了解。位置情報を求むどうぞ」…むぅ!位置情報は、金色と銀色の独特な屋根をした建物の向かい』


怒らしてしまっただろうか。急いでいたとはいえ人が遊んでいるのを邪魔するのはよくないよな。次からは気をつけねば。


それにしても向こうからルナの声は聞こえなかった。窓からのぞいて発見して家の前で待機でもしているのか?それとも…やはり嫌な予感というものは的中するものなのだろうか。余裕はないかもしれない。


俺はトランシーバーのボタンを押して確認すべきことを聞く。


「咲、ルナの状況は?」

『…この精神世界の住民みたい。でも私たちの事を視認している』

『それは、もしかしたら別の人格にでもなっているのかもな。ルナは恐らく多重人格だ。記憶を共有しないタイプの』

「なんだそりゃ俺は医療関係は知らないけど記憶は主として表に出てない方は主の記憶が分かるとかよく聞くけど」

『それは物語の中ではだよ。お互いに記憶を共有していない場合は少なくない』

「だがなんでルナは別人格になったんだ?しかもこの精神世界の住民みたいになったって」

『とりあえず集まりましょ。急いで』


俺は金と銀の色の屋根を探してその向かいにたどりつく。家の前で咲は待っていた。ハームはまだ来れていないようだ。

少し遅れてハームも到着した。


「ここがルナの家なのかい?」

「ええ、さっき少し会話したわ。私を見ても離兎、ハームの名前を出しても「知らない」だそうよ。なにか主人格を引き出す方法はないかしら」

「ルナの苦手なものをみせたり嫌なことをする?」

「ルナの苦手なものわかるのかい?」

「「知らない」」

「僕もだ。さて、どうするかな」


そこから苦闘が始まったその日やったことはルナちゃんに思い出を話しまくってなんとか記憶が目覚めないかというものだ。結果は苦闘と言っているから分かるだろう。失敗だ。いつもの元気で活発なルナちゃんは見れず清楚で大人しいルナちゃんのままだった。

一晩中語り明かそうみたいなことを離兎が言っていたためしようとしら謎の結界に阻まれてルナちゃんの部屋に入れなかった。結界を壊すにしてもルナちゃんの精神にダメージが入ってしまうという可能性もあるため壊すに壊せず。扉に耳を当てて聞き耳を立てると誰かと話しているように感じた。配信でもしているのだろうか。


「…離兎の言ったことが本当になってしまったね」

「いやなことに対する予感って本当によく当たるんだな」

「予感、というよりフラグを立てたんじゃないかしら」

「そうかもな。そんなことより作戦建てだ」

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